第110話引っ越し

 翌日、引っ越し業者が来て家の中のタンスや机などをトラックに乗せて運びだしていった。今回はそんなに長距離の引っ越しではないので、両親と姉と妹は車で15分ほどで着いてた。私は家の場所をあらかじめ知っていたので、自転車で新たな引っ越し先40分くらいで着いて、今度は荷物を家の中に運び入れる作業が待っていた。まずはタンスや机などの大きな家具を家の中に運び入れて、次に食器や衣類などを運んで、引っ越し自体は数時間で済んだ。段ボールの中に入れてある食器や衣類はおいおい出すことにして、その日は必要最低限の荷物だけを出して、学校への通学路の確認や、家の周辺にどのようなお店があるのか見て回った。小学校も近くにあったが、中学校までは4キロ以上あり、自転車通学が決定であった。私たちが引っ越しした家の周辺の学校は、自転車に乗るときにヘルメットの着用が義務付けられており、みんなヘルメットをかぶっていた。学校の校則で決まっているということで、近くの自転車店でヘルメットを購入。週明けからこれを着用して学校に通うのである。ヘルメットは頭を守ってくれるのはありがたいが、頭の中が蒸れるし、痒くなったときにはすぐにかけないという難点もあった。まぁ、それでも通学の時はまじめにかぶって通学をしていた私である。

 引っ越しが終わって、週明けの月曜日からは市立K中学校に通うことになった私。マンモス校と言うだけあって、1学年だけで10クラスある。1クラス40人だから、単純に計算しただけで1学年400人在籍していることになる。私は1年8組になった。まずは転入の挨拶をしたうえで先生から指定された席に着く。担任は宗田先生と言う国語の先生であった。ざっとクラスの中を見回してみると、やはりちょっとつっぱってそうな奴や、気のよさそうな奴など、いろいろであった。クラスの中には私たちが済むことになった地区から登校している生徒もいて、いろいろと話を聞くことが出来た。中でも中田と言う男子とは家がすぐ近くだということで、まだ学校の様子がよくわからない私にいろいろと話しかけてくれた。そして、同じクラスには山田と言う男子生徒もいた。この男子生徒とは途中まで帰り道が一緒だったので、よく一緒に帰っていた。山田は水泳部に所属していたのであるが、水泳部は夏が過ぎると半分休部状態になるので、2学期後半からは暇になるみたいである。

 この二人に学校の様子などを聞いては、どこに何があるのか教えてもらっていた。というのも、クラスが多すぎて、学校の敷地面積が広いので、どこに何があるのか覚えるだけで2・3日かかった。クラスの学級委員は海老田が担当しており、そのほかにも交通委員や保健委員など、細かく役割が分担されてた。この各委員は1学期で交代することになっており、私は2学期途中から転入したため、委員に指名されることはなかった。しかし、学級会には私も参加権があるので、引っ越しして間もない私であるが、クラスの一員として参加することが出来た。このときの議題は何だったか忘れたが、クラスの中で問題として取り上げてもらいたい事案を各自が発表して、その事案に対してどうしたらいいのか考えて解決していくというのが基本スタンスであった。

 そのほか、私が転校してすぐに行われたのが文化祭。主に文化部が中心となって普段の活動の成果を発表する場であり、吹奏楽部の演奏や演劇部の発表、パソコン部のシミュレーションの実演などが行われていた。この当時のパソコンは、ブラウン管テレビのようなモニターにフロッピーディスクを差し込んで、データを入力して計算させるというもので、当時の最先端を行くスペックが搭載されたパソコンが用意されていた。理科の新山先生がこれから世界中で見られる日食のシミュレーションを行っているのをじっと見ていた記憶がある。また、1986年に地球に最接近するハレー彗星の現在の位置や、どの方角に見えているのかなどをシミュレーションで見せてくれた。演劇部では私の家のすぐ近くに住んでいる竹山と言う女子が出演しており、同じクラスであったということもあって、観に行ってみたのであるが、さすが演劇部ということで、演技がうまい。喜怒哀楽が絶妙に表現されていて、さすが演劇部と言う感じであった。その後吹奏楽部の発表が行われたのであるが、音痴な私はあまり音楽を演奏するということに興味があまりなくて、聴く方が好きであった。それが3年後、高校生になってからまさか私が吹奏楽部に入ることになるとは、この当時の私には想像すらできなかった。

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