第98話人間不信
誰も知った人間が身近にいないという環境下でスタートした中学校生活。この時点で私が心に決めていたのは、
「誰も信用しない」
ということであった。小学校の時のいじめでも、5年生の時は、増井のタックルなどの嫌がらせなどはあったが、女子との関係は良好であった。6年生に進級したときでも、クラス替えがなかったため、
「皆とうまくやっていける」
という思いを抱いていたが、信用していたクラスメイトにいじめという形で裏切られ、人生を滅茶苦茶にされて、誰も信用することが出来なくなっていたのである。私が大阪出身で、時折混じる大阪弁を面白がって、私の身の周りはクラスの男子を中心に何人か仲良くなった者もいたが、心の奥底では
「こいつもいつ裏切るかわからない」
という疑いの目で接していた。
「あまり深くかかわることは避けよう」
常にその思いが私の中にはあった。
そうこうしているうちに、同窓会の返事などを迫る期限が近づいてきた。私は参加する意思もなかったし、参加できる状態でもなかったので、返信用にはがきに
「俺はお前らを恨んでる。どうせ参加したって誰も喜ばんのやから、参加する意思はない」
という文言を添えて返信した。どうせ行ったって、辛く苦しい思いだけが頭の中によみがえってくるだけである。私がどれだけ恨みや憎しみを抱えながら大阪から離れていったかを思い知ってほしかった。この当時の私の頭の中には
「どうやって仕返しをしてやろう」
「どうやって恨みを晴らしてやろう」
そういう思いが強く、復讐することばかり考えていた。そして私が参加しないという知らせは、元6年4組の皆にも知らされたようで、後日星田が電話してきた。
「やっぱりお前は来んのか」
「俺が参加したって、ほとんどの奴らは喜ばんやろうし、今更仲間って言われても、あいつのことを仲間とは思わへん」
「まぁそうやろうなぁ…。あれだけのことをされてきたんやからなぁ…。」
そして話はお互いの近況となった。
「まだ中学校生活になれてなくて、覚えることもたくさんあって大変」
「こっちもや。山口に引越しして、誰も知ってる奴がおらん上に、学校も今までとは全然違うからなぁ…」
「まぁお互いしんどいこともあると思うけど、頑張ろうや」
そう言って電話を切った。半月ぶりに聞く星田の声。大阪の友人や親せきなどと話すときは、やはり懐かしい大阪弁が口に出てくる。星田の声はどことなく懐かしさを連れてきたような気がした。星田の話では、私が参加しないことを伝えたことで、いじめ加害者の責任論が巻き起こったらしい。私をかばってくれていた星田や今田、永井達が
「リンダが来られんのはお前らのせいや」
と厳しく詰め寄ったらしいのである。星田たちは私の気持ちが変わって、一度は参加を固辞したけど、参加の意思表明をするのではないかと思っていたらしい。それが返信はがきに
「お前らを恨んでいる」
とはっきり書かれたうえで参加を拒否すると書かれてあったものであるから、どう責任を取るのか、これから先、ずっと同窓会に私が参加しなかったら、それは渡部や増井・浜山や久保と言った、いじめ加害者の責任だと詰め寄ったものだから、いじめ加害行為をやった側は涙を流して
「申し訳なかったと思っている」
と話したようである。しかし、直接私や家族に対する謝罪はなかった。
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