第64話束の間の休息

 そしてしばしの安息が与えられた。そう、ゴールデンウィークに入ったのである。ゴールデンウィークに入れば、祝日が多いので、その分学校に行かなくて済む日も増える。4月29日の天皇誕生日・5月3日の憲法記念日・5月5日の子供の日。飛び石ではあったが、学校に行かなくて済む日は心がほっとした。私が家にいると星田と永井と箭内が一緒に遊びに来た。

「外に出て遊ぼうぜ」

と言うのである。家の中にいたって、ろくなことしか考えられなくなっていた私は、4人で遊ぶことにした。外に出てふだん嫌なこともすべて忘れようとしているかのように、遊ぶことに注力していた。久しぶりに星田たちと体を動かして、いい汗かいて少しは心が軽くなったような気がした。4人でしたのはサッカーやキャッチボールなどの少人数でもできる運動が中心であったが、思いっきり体を動かして、思いっきり心の底から笑って、久しぶりに笑顔を取り戻せた瞬間であった。そして、日が暮れるまで遊んで、心地のいい疲れの中で夜を迎えた。目いっぱい体を動かしたからであろうか、その日は久しぶりに熟睡できた。このころの私は常に精神的に緊張状態が続いていて、家に帰ってもリラックスできずにいて、夜のなっても寝付けない日が続いていて、心身ともに疲労が蓄積していて、それが下痢の原因の一つにもなっていたのであるが、久しぶりに熟睡できて、少し疲れもとれて、いくらか気分のいい朝を迎えることができた。4月30日は学校に行く日であり、いつもならズシーンと重い心を引きずって学校に行っていたが、その日はいつもより心も軽かった。学校に行くとランドセルを置いてすぐに外に出て運動場に出て遊んでいた。いくらなんでも大勢の子供がいる中で、増井や渡部たちも私を攻撃することはなかったため、外に出られる間は運動場に出て、体を動かしていることが増えていった私であるもともと運動することは嫌いではなかったので、外に出て体を動かせば自分の体も心も鍛えられるし、増井や渡部たちの激しい罵声や罵倒を聞かなくて済むし、気に食わないことがあったからと言って私が殴ら足り蹴られたりすることもないので、なるべく休憩時間は外に出て、一人でもできる運動をしていた私である。ただ、それは雨が降っていないときに使える方法であり、雨が降って運動場に出られない日をどうやって過ごそうか考えていた。学校の図書室に逃げ込むということもできたのであるが、決められた時間以外は入れないため、雨の日に図書館に入れる昼休み時間以外の休憩時間をどう過ごすかが、私にとって重要なテーマであった。

 雨の降る日はとにかく休憩時間は教室にいるとやられることがはっきりしていたので、できる限り教室の中にはいないようにしていたのであるが、それも限界があり、なるべく一人にならないようにしていた。星田や永井達と一緒に過ごすことが多かった。どうにかこうやって、少しでも私に対する攻撃が少なくなるようにしていたのであるが、いつもみんなと一緒と言うわけにもいかず、私が一人になると決まって、罵声を浴びせ、罵倒し、暴力も振るわれていた。中でも一番私が堪えたのが

「死ね」

という言葉。身体的な暴力も確かに苦痛で会えるが、言葉による暴力は、確実に私の心を蝕んでいったのである。心の中を目の粗いやすりで削られているような、そんな感じであった。

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