第43話 『秘密のデータを取り返せ!』
参上! 怪盗イタッチ
第43話
『秘密のデータを取り返せ!』
今度は猫にバッグを取られて、アンはバッグを取り返すために必死に猫を追いかける。
「待ってくださーい!! 猫さーん!!」
しかし、アンよりも身体は小さいのに、野生の猫の方が動きが早い。
「はぁはぁ、猫さん早すぎです……いや、私も猫なんですけど…………」
アンが息を切らして足を止める中、猫は道路を進んでいく。しかし、交差点で車が飛び出してくると、猫は車に驚いて咥えていたバッグを落としてしまう。
そしてバッグを置いて、塀の中へと隠れて姿を消した。
「はぁはぁ、やっと取り戻せそうです……」
バッグまでの距離は30メートル。しかし、もうこれで猫が持っていくこともないため、アンはゆっくりと歩いてバッグの元へと向かう。
「これでバッグは……」
今度こそ取り返せると思ったが、アンが10メートル進んだところで、交差点を曲がって二足歩行の狐の女性が現れる。その女性は落ちているバッグを見つけると拾い上げた。
「あれ落とし物っすかね? 交番に届けておくっすか」
アンはその狐の女性を見て、咄嗟に電柱柱に身体を隠した。
その狐の女性は──
「天月 コン刑事!? なんでこんなところに」
イタッチを追う警官であるフクロウ警部の部下、コン刑事だ。しかし、今の服装は水色のワンピースを着ている。
どうやら休みで出かけているようだ。
だが、アンの姿を見られれば、バレる可能性もある。他の人ならば、声をかけてバッグを返してもらうが、コン刑事だと正体がバレる危険がある。
「こうなったら……交番に届けられる前に…………盗むしかないですね」
アンは目をキランと光らせる。普段からイタッチやダッチと仕事を見ているアン。
基本はパソコンでの援護が中心であり、現地で任務を行うことはほとんどない。だからこそ、少し憧れていた。
アンは自身が怪盗衣装に身を包み、お宝を盗み取る姿を妄想する。
「ふふふ、私は怪盗アン! このお宝は頂いたァァァァァ、ワァァッハハハ!!」
テンションの上がってしまったアンは自身の世界に入り込む。しかし、すぐに我に帰った。
「おっと、今はパソコンを取り戻すのが優先ですね……」
アンはコン刑事に目線を戻す。
コン刑事はバッグを肩にかけて、駅の方へと向かっていた。アンはパソコンを取り戻すチャンスを探すため、コン刑事を尾行することにする。
「必ずチャンスはあるはずです。絶対にバッグを取り戻してみせます。怪盗アンの名にかけて……」
⭐︎⭐︎⭐︎
アンはコン刑事を尾行して、バッグを取り戻す機会を探る。コン刑事は住宅街を抜け、最寄りの駅に着いた。
駅の前にはバスターミナルがあり、そのバスターミナルを中心に店が立ち並び栄えいる。多くの人々が行き交う中、駅の前に立つ二人の女性がコン刑事を見つけて手を振る。
「あー! 来た来た、コンちゃん!」
「こっちこっち〜!!」
オシャレをしたヤチネズミと蝶々のユリシスがコン刑事を待っていた。彼女達はコン刑事の学生時代の友人達だ。
コン刑事も二人に手を振って合流する。
「久しぶりっすね。二人とも!」
合流したコン刑事は二人とハイタッチをする。
「コンちゃん、久しぶりね。警官頑張ってみたいじゃない! この前テレビに映ってたよ!」
「え!? ほんとっすか!? 知らなかったっすよ……。なんの番組っすか?」
「イタッチの特集よ」
ヤチネズミとユリシスは手を前にして祈るようなポーズを取る。
「「あぁ、イタッチ様〜、カッコいい〜」」
「アタシの前で犯人を褒めるのはやめてほしいっすけどね……。それでどこ行くっすか?」
コン刑事が尋ねると、ヤチネズミが一枚のチラシをコン刑事に見せる。
「今話題になってるパンケーキ屋さんがあるのよ! コンちゃんにもすすめたくって!」
「へぇ〜、パンケーキすか。たまには良いっすね!!」
コン刑事はヤチネズミとユリシスと共にパンケーキ屋を目指して歩き出した。アンはその三人を尾行する。バレないように電柱や建物の影に身を潜める。
周りから見たら変に見えるかもしれないが、アンはそんなことは気にしない。しかし、注目はされるが、遊んでいる子供として見られているだけであり、問題はなかった。
「パンケーキ屋ですか……。こうなったら先回りを…………」
コン刑事達の行き先を聞いていたアンは、行き先を調べて先回りしようとする。しかし、バッグからパソコンを取り出そうとしたが、バッグがないことを思い出す。
「……っは!? バッグを取り戻そうとしてるんでした!? …………しかし、パソコンがないと不便です…………」
アンは調べるのを諦めて、コン刑事達の尾行に戻る。
コン刑事達はバスターミナルから離れて、交通の多い道路を進んでいく。交差点を3個渡った後、左に曲がり、美容院を右に曲がったところに目的地があった。
「へぇ〜、こんなところにパンケーキ屋が……」
店自体は小さいが、外装はまるでお城のような見た目をしており、その店の姿に三人と一人は心を躍らせた。
「ね! オシャレでしょ! 早く入ろ!」
「うん!」
コン刑事は二人と共に入店する。店内も白い壁に木造の柱、植物の装飾がある。
店に入って行った三人を追いかけようとするが、アンは財布がバッグの中にあることを思い出す。
「どうしましょうか……」
アンはポケットの中を探してみる。すると、さっき自販機でジュースを買った時のお釣りで出てきた小銭を発見する。
「ギリギリ……安いものなら買えそうですね」
アンもコン刑事達を追いかけて、店に入ったのであった。
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