四.同年 霜始降②
次の夜、雲雀寺の一角より火の手が上がった。
野分の季節も過ぎ、このところ雨が少なかったものだから空気も木々もすっかり乾いていて、炎は一晩中燃え盛り、寺の大部分を焼き尽くした。
幸い僧たちの避難は早く、境内の損害ほど死人は出なかったものの、その少ない死者の中に、幽閉されていた前国主の名があった。ただ骸はどれも黒焦げで損傷が激しく、身許の判別は不可能であり、死亡者と生存者の数が合わないという話まで出てきた。出火の原因、火元も、結局不明のままだ。
弟君の治世は比較的堅実なものであったが、彼は生涯、兄の幻影に怯え続けることになる。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録(無料)
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます