第6話 ホットケーキ

 ホットケーキが食べたい。


 ふとこう思った僕はすぐさま冷蔵庫の中身を確認して足りない材料をスーパーに買いに行った。今(夜)からホットケーキを食べてもいいのだが、どうせホットケーキを食べるなら休日の朝ごはんに作ることにしてのんびり朝を過ごしたい。幸い明日は日曜日で琴音もずっと家にいるらしいから、明日朝早く起きてホットケーキの準備をすることにしよう。そう決めた僕はホットケーキのためにいつもより早く寝ることにした。




「ふああぁぁ······もう起きる時間か······」


 翌朝、目覚まし時計のアラームでいつもより早く起きた僕はのそのそと布団から這い出て、洗面台で顔を洗って眠気を覚ました。眠気から解放された僕はそのままキッチンに立ち、まずはコーヒーを淹れる。コーヒーメーカーにフィルターをセットしてコーヒーの粉を入れ、必要量水を注いでスイッチをオン。今日の朝ごはんはホットケーキとスクランブルエッグ、ウインナーにしようかな。まずはホットケーキのタネを作るところから始めよう。


「えーっと、必要なのはホットケーキミックスと卵と牛乳······」


 ボウルに卵と牛乳を必要な分だけ投入してかき混ぜ、次はそこにホットケーキミックスを少しずつ加えていく。


「これだけでタネが作れるんだからホットケーキミックスは偉大だよなぁ」


 僕だけしかいないキッチンでポツリとつぶやきながらテキパキと準備を進めていく。次に僕は小さめのフライパンをガスコンロにセットして、少し油を吸わせたキッチンペーパーでフライパンの表面を拭く。そして弱火の火をつけたらフライパンにすぐにタネを流し込み、そのまま弱火でゆっくりと焼く! ホットケーキは準備時間よりも焼いてる時間が圧倒的に長いから、作ること自体は楽だけど単純に時間がかかるからめんどくさいんだよな······。


「お、ちょうどコーヒーが出来上がったしコーヒー飲みながらホットケーキをひっくり返すタイミングまで待っていよう」


 そう言って僕は自分が愛用している水色の水玉模様が描いてある白いカップにコーヒーを注いだ。春先でまだ肌寒いこの時間では、頬を掠めるコーヒーの湯気が心地よく感じる。一口飲んでみればコーヒー特有の苦味が口の中に広がり、残っていた眠気が吹き飛ばされたように思えた。ちなみに妹は水玉模様が桃色のマグカップを使っている。妹曰く「これはペアカップだよお兄ちゃん! 」だそうだ。さすがに高校生になって兄妹でペアカップはどうなのだろうかと思うが、僕が妹からのお願いを断れるはずもなくそのままペアカップになってしまった。

 それからホットケーキを三枚ほど焼いた後、四枚目を焼いている時に誰かが階段を降りてくる音がした。母さんはいつも休日は昼ぐらいまで爆睡しているからおそらく琴音だろう。リビングへの扉が開き、やはり琴音が眠そうに目を擦りながら現れた。


「ふあぁ······おはよう······あれお兄ちゃん······? めずらしいねこんな時間に起きてるなんてぇ······」


「おはよう琴音。とりあえず顔洗ってきたらどうだ? 」


「そうだね······顔洗ってくるぅ······」


 そう言って琴音は洗面台に向かっていった。僕はホットケーキがまだ焼き途中なことを確認した後、紅茶を淹れるためにお湯を電気ケトルで沸かし、ポッドにティーバックを入れて準備した。そうしているうちに顔を洗って目が覚めた様子の琴音が再び戻ってきた。


「なんかすごい甘い匂いがするねお兄ちゃん! これはもしかしてホットケーキ?! 」


「そうだよ。昨日ホットケーキが無性に食べたくなってさ、どうせ食べるなら朝がいいかなって思って今焼いてるところ」


「お兄ちゃんそれはナイスアイデアすぎるよ! 朝からホットケーキってなんかおしゃれって感じする! 」


「たまにはちょっと手間かけた朝ご飯でも食べてのんびり過ごそうよ。今紅茶淹れてるから琴音は座って待っててな」


「はーい」


 沸騰したお湯をポッドにいれて3分ほど放置する。その間に五枚目のホットケーキを焼き始める。タネの残量的にも残り一枚ぐらいしか作れないだろうしそろそろ付け合わせでも作り始めるか。そう思った僕は冷蔵庫から卵と牛乳、ウインナーを取り出して、まずはオリーブオイルをひいたフライパンでウインナーを焼き始める。その間にお椀に卵を割り、塩胡椒を振った後に牛乳を少量入れてかき混ぜておく。


「ほら琴音、紅茶できたよ」


 出来上がった紅茶を琴音のカップに入れて座ってホットケーキを待っている琴音に渡す。この時スティックシュガーも一緒に渡すところがポイントだ。

 六枚目のホットケーキを焼いている間にウインナーが美味しそうな焼き色が付いたので回収して、少しフライパンを冷ましてから薄くオリーブオイルを引き、かき混ぜた卵を入れて今度はスクランブルエッグを作る。


「······お兄ちゃんってほんとに器用だよねぇ······同時並行で違うことできるのほんとにすごいと思うよ? 」


「料理できる人ならこれくらい普通だと思うけどな······? 」


「それじゃあ私は一生料理できるようになれないよ······っ!! 」


「······まぁ慣れかな? たくさん料理してれば琴音もできるようになると思うぞ」


「そうなのかなぁ······がんばってみる」


 琴音と話しているうちに最後のホットケーキが焼き終わったので、ウインナーとスクランブルエッグを盛り付けて、ホットケーキと一緒に琴音が待っている食卓に運ぶ。


「私、フォークとスプーン用意するよ! ついでにはちみつも持ってくるけど、お兄ちゃんは何をつけて食べる? 」


「僕はメープルシロップにしようかな〜」


 そうして琴音が足りないものを持ってきてくれたので僕も席に座る。


「「いただきます!! 」」


 まずは温かいうちにスクランブルエッグを一口······うん、塩胡椒の加減ちょうど良くて美味しいな。ちらっと琴音の方を見ると早速ホットケーキにはちみつをつけて食べようとしてるところだった。


「ん〜! ホットケーキ甘くて美味しい〜〜!! 」


 頬に手を当てて幸せそうな顔でホットケーキを頬張る琴音。ハムスターみたい。


「お兄ちゃん! このスクランブルエッグ美味しいよ!! ホテルのビュッフェで出せるレベルだって! 」


「僕も今日のスクランブルエッグはかなり美味しいと思う。ビュッフェで出せるレベルには程遠いけどな」


「朝からこんなに美味しいご飯が食べれるなんて幸せ······お兄ちゃん早起きしてつくってくれてたんだよね? ほんとにありがとう!! 」


「琴音が幸せそうに食べてくれてるだけで早起きして準備してた甲斐があるってもんよ」


 二人でホットケーキを頬張った後は、のんびりとコーヒーや紅茶を飲みながら日曜日の朝を過ごすことにしよう。明日からはまた学校が始まって忙しくなってしまうからね。


「お兄ちゃん今日は午後って予定ある? なかったら昼過ぎからお買い物一緒に行こ? 」


「今日は僕は一日中暇してるからそうだね、昼までだらだらしたら午後は一緒に出かけようか」


「やったー!! 今日はお兄ちゃんとお出かけだー! 」




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 第六話を読んでいただきありがとうございます!

 今回はのんびり朝ごはん回をお送りしました。時間があるときはこんな朝を送ってみたいですね······。

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 それでは第七話でお会いしましょう!





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