4.ドンペリピンク

「ドン!ドン!ドン!」と鈍い音が部屋に響き渡る。

飲もうとしていたドンペリピンクをテーブルに戻し、あたりを見まわすがそのような音がするものは何も見当たらない。

再びグラスを手に取り口を近づけると、またもや「ドン!ドン!ドン!」という音。

今度はグラスを手に持ったまま部屋を見回すがどこから音がしているのか見当がつかない。

とりあえずドンペリピンクを味わってから音の原因を探そうと思いグラスを傾ける。

が、何故かグラスにあったはずの高級シャンパンが跡形もなく消えてしまっている。

「えー!」と思いグラスを透かし見ると更に大きな音で「ドン!ドン!ドン!」という音。急にあたりがまぶしくなる。

気がつくと、どこか見覚えのない部屋のベットに俺は横たわっている。

ふと我に返り、ここは空母ジョージ・ワシントンの一室だったのを薄々思い出す。

「ドン!ドン!ドン!」という音がまだ部屋に響き渡っている。どうやら誰かが部屋の外からドアを叩いているようだ。

半分寝た頭のままベットから起き上がりドアを開ける。

「たいちょー、いつまで寝ているんですか!早く決闘に行きましょうよ!」と朝からデカイ声でシズコ。

どうやら決闘とはバージルと勝負する事を言っているらしい。

既にフライトスーツや装備を身に付けシズコは一人で張りきっている。

俺は夢の中でドンペリピンクを飲み損ねたので腹が立ち

「お前のおかげで高級シャンパンを飲み損ねたぞ!どうしてくれる!」とシズコを叱り飛ばす。

シズコは何の事だかさっぱりわからずキョトンとした顔をして俺を見ている。

あたりまえだが…

シズコにせかされ仕方なく顔を洗って歯を磨き、身支度を整え始める。

ジーンズとTシャツ姿に着替えて洗面所から出てくると

「たいちょー!何でそんな格好してるんですか!決闘ですよ!早く装備に着替えてください!」とシズコは朝からやたらうるさい。

昨夜遅くまでジャックやナタリーと一緒に飲んでいたので、少し二日酔い気味の頭にシズコの声がガンガン響く。

俺は頭をさすりながら

「おいちょっと静かにしてくれないか。それより腹が減ったから朝飯食ってからにしようぜ」

とシズコに言いながらそのままの格好で部屋の外へ出る。

「えー、朝ごはんなんかいらないよー」とグズグズ言うシズコを連れて、昨夜ナタリーに書いてもらった地図を頼りに食堂へと向かう。

複雑に入り組んだ通路を迷いそうになりながら先へ進み、なんとか食堂に到着。扉を開ける。

ムッとした熱気と食欲をそそる匂いがあたり一面にたちこめ、まるでショッピングモールのフードコートが満員で大盛況といった感じだ。

ここの食堂は自分の好きなものを好きなだけ食べられるビュッフェスタイルだと昨夜ナタリーから聞いていたので早速俺はトレーを手に取りボイルしたソーセージやスクランブルエッグ、カリカリに焼いたベーコンや大盛りのサラダなどを次々とトレーに乗せていく。

「よく朝からそんなに食べられますねえ」とあきれた顔でシズコ。

シズコのトレーを見ると小さなサラダがひとつとロールパンが1個のみである。

「それだけで決闘に勝てるのか?」とシズコに言いながらテーブルに着き、まずはサラダをほお張り始める。

俺は二日酔いだろうが睡眠不足だろうがそんな事は関係なしに、朝から腹いっぱい飯を食わないと気が済まない。昔からの習慣だ。

スクランブルエッグを口に運んでいると「おはよう」と言う声。

声のした方を見るとハワード艦長が食べ終わったトレーを持ち、笑いながら立っている。

俺はあわてて口に含んだスクランブルエッグを水で流し込み

「おっ、おはようございます」と立ちあがる。

何も俺は海軍の軍人でもなければ艦長の部下でもないのでそこまであわてる事もないのだが、自然と体がそうなってしまった。

ハワード艦長は俺に向かって席に座るよう諭しながら

「今日、バージル達と対戦訓練をやるそうじゃないか?お手並みを拝見させてもらうよ」と言いながら俺の肩をたたき

「それじゃあ、ごゆっくり」と軽く手を上げ、出口の方に歩いていった。

「バージル達って言ってたけど決闘は1対1なんじゃないの?」とロールパンをかじりながらシズコ。

俺は「さあな」と言って肩をすくめる。


腹がいっぱいになったので食堂を後にし、一度タカシと連絡をとるため電話ボックスに向かう。

「どうだ、太平洋でのバカンスの気分は?」と思ったより元気な声でタカシ。

俺は何か変わった事はなかったかと尋ねたが、今のところ出動要請はゼロとの事でひと安心する。

事件らしい事といえばゴキが店内を走っている時、床が濡れている所で滑って転倒し、お客さんの目の前で見事なスライディングを披露した事ぐらいだと笑いながらタカシ。

俺は転んだゴキの事なんか気にも止めず、青果サブチーフのカズアキの様子や青果の売上状況、

そして気になるヨシミツや基地の様子など、電話の向こうのタカシにいろいろ聞いてみる。

「まあそんなに心配せずにゆっくりしてこいよ」と受話器の向こうでタカシ。

俺は「じゃあ、お言葉に甘えてよろしく頼むよ」とタカシに言いそのまま受話器を置く。


部屋へ戻ろうとしたが、機体の事が気になるので格納庫の方に足を向ける。

すれ違う乗組員に何度も聞き、シズコと二人で「あっちだ!こっちだ!」と騒ぎながらなんとか甲板下の格納庫に到着。

自分たちの機体を捜す。

「たいちょー、ありましたよ!こっち!こっち!」とシズコが奥の方で俺を手招きする。

オバQ号とキティーちゃん号は格納庫の奥で兵装を全てはずされ、ワイヤーによって床に固定されていた。

「よお。早いじゃないか」と言う声に振り向く。

見ると提督のバカ息子バージルが手下と見られる5人のパイロットを引き連れてこちらに向かって歩いてくる。

「勝負に来た割りには随分ラフな格好だな」とジーンズとTシャツ姿の俺を見てバージル。

「すぐにやりたいのなら速攻で準備してやるぜ!それより何だ?後ろにいる手下どもは?

全員で俺たち二人にかかってくるつもりか?」と軽蔑したような笑いをバージルに返す。

「そのとおりだよ。よくわかったな」と相変わらず無表情な顔でバージル。

シズコは「何よ!卑怯じゃない!勝負は普通1対1でやるもんでしょ!」と声を荒げる。

「確かに普通の勝負はな。だが今回は賭けてる物の価値が違いすぎる。

ジャンボジェット機と安物ライターじゃハンデがあって当然だろ?

こちらは6人だが複座のF/A-18Fで飛ぶから3機だ。

100対2でもいいくらいなのを3対2にまけてやったんだ。

ありがたく思いな」とバージルは薄笑いを浮かべる。

後ろにいる手下どももヘラヘラと声を立てて笑っている。

「たいちょーがあんな変な物賭けるからこちらが不利になっちゃったじゃないですかー」とふくれっ面をしてシズコ。

「あんな変なものとは何事だ!俺にとっては大事なライターなんだぞ!」とシズコをにらみ返す。

「じゃあ2時間後に勝負開始とするか?逃げるんじゃないぞ」と言い残しバージルは手下とともに格納庫の出口の方へ歩いていった。


「たいちょー、何か作戦を考えないとヤバイですよー」と俺の部屋の冷蔵庫から勝手にジュ−スを取り出しながらシズコ。

お菓子をボリボリ食べながらすっかり俺の部屋でくつろいでいる。

俺はテレビで昔懐かしいサンダーバードを見ながら

「3対2なんて今までの実戦でも何度かあっただろ?いつもどおり戦えばいいのさ」とシズコの持っている袋からポテトチップスを2−3枚つまんで口に放り込む。

「でも今回はバルカン砲しか使えないんですよ!ミサイルが使えなかったら圧倒的にこっちが不利です!」

とシズコは俺の部屋のジュースでポテトチップスを流し込んでいる。

シズコの言うとおり今回の対戦訓練はペイント弾を使って勝敗を決める事になっている。

ペイント弾とはバルカン砲の実弾の代わりに装填する弾の事で、当たると弾の中に入ったペンキみたいな塗料が機体にベッタリとついて勝負が一目瞭然わかるというものだ。防犯に使うカラーボールのような物と思えばいいだろう。

「何かいい作戦ないですか?たいちょー!」とシズコはさっきからずいぶんうるさい。

俺はテレビのサンダーバードが今、一番いいところなのでシズコにかまってる余裕はない。

と急にテレビがプツンと消えた。

「あー!!」と言いながらシズコを見ると怒った顔をしてリモコンを握りしめている。

「おい!バカ!今、一番いいところなんだぞ!」と言いながらリモコンを取り上げようとするがシズコは

「たいちょーは決闘とサンダーバードとどっちが大事なんですか!?」と随分機嫌が悪い。

俺は「今はサンダーバードの方が大事だ!」と叫びながらシズコからリモコンを取り返し電源を入れる。

が、肝心のサンダーバードはもうエンディングの映像になっていた。


2時間後、フライトスーツと装備を身につけ格納庫に降りていく。だがバ−ジルと手下どもはまだ来ていない。

機体の点検をしていると10分程してのんびりとバージルたちがやって来た。

俺はテレビの一番いいところを見損ねたので腹いせに

「お前ら遅いぞ!何のんびりしてやがる!早く準備しろ!」とつい怒鳴ってしまった。

バージルたちは俺の迫力に圧倒されたのか少し後ずさりし、何も言わずに自分たちの機体の準備を始めた。

甲板に上がるエレベーターでペイント弾が装填された機体と共にデッキへと上がる。

バージルたちは既に機体に乗り込みカタパルトに向かってタキシングを始めている。

コクピットに収まろうとしていると「よお!」と言う声。

見るとジャックが少し離れた場所から手を振っている。

「テツヤ!お前の力をあのバカどもに見せつけてやってくれ!」とデカイ声でジャック。

「おい!デカイ声でそんな事言って大丈夫なのかよ」と俺はジャックを心配する。

「大丈夫だよ。今日であいつらも自分たちのバカさ加減にやっと気づくだろうさ。

バージルからいただいたジャンボジェット機で今度の休暇はラスベガスにでも行ってパーッとやろうぜ!」とジャックは歯をむき出しにして笑っている。

俺はジャックのやたらうれしそうな顔を見て思わず吹き出してしまう。

「じゃあ、お前はカジノの軍資金を用意しておいてくれよ!」と言い残し、ヘルメットと酸素マスクを装着してカタパルトに向かって機体を移動し始める。

バージルたちのF/A-18Fが次々と発艦していく。俺とシズコもマーシャラーの指示に従い発艦位置に機体を移動し停止させる。

クルーたちが機体にカタパルトを装着する音がコクピットに響く。

ふと横を見ると昨日一緒に騒いだサミーが俺に向かって笑いながら手を振っている。

俺はサンシールドとマスクを付けている為、表情がサミーに伝わらないと思い、両手でVサインを作ってサミーに返す。

発艦準備完了の合図。サミーが片手をグルグルと回し、エンジンの出力を上げろと俺に指示をする。

スラストレバーを徐々に倒しエンジンの出力を上げていく。轟音が響きわたり機体が前に飛び出しそうな勢いになる。

エンジン出力が全開になったのを確認し、右手の親指を立ててサミーに準備完了の合図を送る。

間髪を入れず機体は猛烈な勢いでカタパルトに引っ張られていく。瞬く間に速度は時速240Kmに到達。

操縦桿を手前に引き込み機首を上げる。

無事、発艦完了。ランディングギアを格納し目標高度に向かって上昇を始める。

シズコも無事発艦し、俺の後を追いかけるように上昇している。

程なく訓練空域に到達。バージルたちは旋回をしながら俺たちの到着を待っていたようだ。

「じゃあそろそろ始めるとするか」とバージルの声が無線機を通じて耳に入る。

何故か今はもう、バージルの声を聞いただけでムカついてくるようになってしまった。

初めて会ったときから気に入らないヤツだと思ってはいたが、今はもう声を聞いただけで猛烈に腹がたってくる。

本当にイヤなヤツと言うのはこういうヤツの事なんだと改めて実感した。

「30秒後に対戦開始としよう。異議はないか?」とバージル。

「よし、わかった」と俺。時計を確認する。

シズコと事前に打ち合わせしたとおり奴らから少し離れ、上下のフォーメーションを組む。

「10秒前…、5秒前…、3、2、1、GO!」

急旋回して奴らの正面に回る。上に俺、その真下にシズコという編隊でまずは正面から突っ込みをかける。

バルカン砲の射程距離に入る寸前、俺は機体をひるがえし急降下に入る。それとは逆にシズコは急上昇をかける。

「うわ!危ねえ!」と奴らの一人が叫ぶ。俺とシズコがぶつかるとでも思ったのだろう。いきなりバージルたちの動きがバラバラになる。

「よし、シズコ!3番機を狙え!俺が援護する!」と指示を出し、シズコの右ななめ後ろに付く。

バージルたちはフォーメーションがバラバラになり3番機だけが取り残されてしまった。

「奴らが戻ってくる前にうまく仕留めろよ!」と俺。

「まかせて、たいちょー!」とあまり緊張感のない声でシズコ。

3番機は右、左、上、下と懸命にシズコをかわそうとする。が、シズコは余裕で相手のケツに食らいついている。

タイミングを見計らってシズコがペイント弾を発射!

見事、命中!3番機のエンジン部分がペイントで真っ赤に染まる。

「よーし、一丁上がり!次にいくぞ!」と俺。

「なんか手応えないわね。拍子抜けしちゃった!」とシズコ。

機体をひるがえし軽く旋回する。

バージルと2番機が戻ってきた。俺とシズコの後ろにピッタリと付く。

「シズコ!フォーメーション103でいくぞ」と後ろを確認しながら俺。

「了解!」と平然とした声でシズコ。

俺たちは急旋回し左右に分かれる。

俺の後ろには2番機が付いてきた。シズコの後ろにはバージルが張り付いている。

2番機が俺に向かって執拗にペイント弾を浴びせかけてくる。

だが照準が定まっていないのでまるで当たらない。

よけなくてもいいくらいだが、軽く機体を左右に振ってかわすフリをしてやる。

上昇しながら旋回し、シズコの方に機首を向ける。シズコも旋回し、俺の方に向かってくる。

スピードを上げ、シズコに向かって正面からつっこむ。

「3…、2…、1…、GO!」

合図と共にお互い機体を90度傾け、距離数メートルのところでギリギリにすれ違う。

とその時、2番機の撃ったペイント弾が俺を通り越し、シズコを追いかけていたバージルの機体を直撃した。

「ガン!ガスン!ボン!」と鈍い音。

俺とすれ違いざまにエンジンから黒煙を噴き出し始める。

「メーデー!メーデー!エンジンがペイント弾を吸い込んだ!コクピットにも直撃!コントロール不能!」とバージルの絶叫に近い声が無線を通して聞こえてくる。

見るとバージルの機体の左エンジンが黒煙を噴き出している。

また風防にはペイント弾直撃のため、真っ赤な塗料がベッタリと付き、視界をほとんどふさいでいる。

「もうダメだ!脱出する!」とバージル。だが脱出する気配がない。

「どうした!バージル!」と無線で問いかける。

バージルの機体は急激に高度を落とし始めている。

「脱出不能だ!助けてくれー!」とバージルの叫び声。

「落ち着けバージル!もう一度やってみろ!」と俺。高度を落としていくバージルにピッタリとついていく。

「やっぱり駄目だ!射出装置が作動しない!もう終わりだ!」とバージルはほとんど泣き声になっている。

おそらくペイント弾がコクピットを直撃したため座席の射出装置が故障したのだろう。

「あきらめるなバカ!俺がなんとかしてやるから言うとおりにしろ!」とバージルを叱りとばす。

「早く機首を上げろ!…上げるんだ!海につっこむぞ!」と俺。計器にちらりと目をやる。

高度計がすごい勢いでゼロに近づいていく。海面も急激に迫ってきた。

「早くしろ!テメエ死にたいのか!早く機首を引き上げるんだ!ボケ!」とバージルに向かって叫ぶ。

「ボケ!」という言葉が効いたのかバージルの機首が上がり始める。

「もっと操縦桿を強く引け!海面まで間に合わないぞ!」と俺。

「ダメだ!これ以上引けない!」と半泣きでバージル。

俺はだんだん腹がたってきて

「甘ったれてんじゃねえぞ!もっと強く引くんだ!」とバージルに向かって激怒する。

するとどうしたことかバージルの機体は更に機首を上げ、何とか海面すれすれの所で上昇に転じ墜落は免れた。

海面がバージルの機体の衝撃波で水しぶきを上げているのが見える。

どうやら激怒するのがバージルには効くらしい。

「よし!何とか体勢は立て直したな。じゃあ今度はジョージ・ワシントンに無事着艦作戦とでもいくか?」と俺。

バージルにコクピットの視野はどれくらいあるのか尋ねる。

「前方と左側サイドが全く見えません。右側サイドが若干見える程度です」とバージル。

いきなり敬語で返してくるので今度は俺がビックリして海に墜落しそうになる。

「わ、わかった…じゃあまずは高度をもう少し上げてみるかい?」とこっちまで言葉がおかしくなってきた。

気を取り直し、シズコとバージルの手下の2機へ先に着艦するように指示をする。

バージルが空母の甲板で事故をして甲板をふさいだら全員が降りられなくなる。

その事を防ぐためだ。

「たいちょー、大丈夫ですか?」と心配そうにシズコ。

「ああ、大丈夫だ。降りたあと俺の部屋でまた一緒にお菓子でも食べようぜ!」とシズコを諭し、視野がまだ残っているバージルの右側に機体を寄せる。

「おいバージル、俺が見えるか?」

「はい!見えます!」と少しは冷静さを取り戻したかの感じがするバージル。

「よし!じゃあ俺の横にピッタリとくっついていろ。空母の甲板まで誘導してやる」とバージルの機体に目をやりながら俺。

「えー!この状態で着艦するんですかー!」とバージルは驚いたような声を出す。

俺は「あたりまえだろ!着艦するか死ぬかのどちらかなんだぞお前は…

そういえばもう一人後ろに乗っていたからお前らはと言うほうが正しかったかな?」と少し冗談ぽく言ってやる。

「バージルさんお願いしますよー。死にたくないですー」と弱々しい声が無線を通して耳に入る。

バージルの後ろに乗っている相棒らしい。

「ほら、相棒の命もかかってるんだぞ。しっかりしろ!」とバージルを励ます。

「でも前方が全く見えない状態でどうやって着艦するんですかー?」と不安な声でバージル。

「俺の横から離れないようにしっかり付いて俺の言うとおり機体を操作しろ。お前がすることはそれだけだ」と俺。

「じゃあまず右へ旋回するぞ。絶対離れるなよ!」と言いながら俺は機体を軽く傾け旋回に入る。

「高度が少し落ちているぞ。エンジン出力を少し上げろ」とバージルに注意をうながす。

すると「あー!」とバージルの叫び声。

俺はあまりにもデカいバージルの声に思わず飛び上がる。

「おい!いきなりデカい声出すな!ビックリするだろうが!」と風防越しにバージルをにらみつける。

「燃料がほとんどありません!」とまた更にデカい声でバージル。

「何だと!」と今度は俺もデカい声になる。

「お前ら二人いるのにどうして今まで気づかなかったんだよ!ちゃんと燃料入れたのか?」と俺。

「燃料は発艦前に確認しました。どうやら何らかの衝撃で燃料漏れも起こしたみたいです!」と焦った声でバージル。

「艦までは足りそうなのか?」と心配しながら俺。

「何とも言えません!」とバージルはまた半泣き状態になっている。

「よしわかった!艦まで燃料がもつのを祈るしかないな。チャンスは一度きりだ!しっかりついてこいよ!」とバージルに激を飛ばす。

「今度は左へ旋回するぞ。高度を保ったまま方位35度まで旋回しろ」と俺。バージルは旋回を始める。

「よし!いいぞ!あと左へ5度向きを修正しろ。修正したらそのまままっすぐに進め」

と指示しながら俺はバージルの右側にピッタリとつく。

「あとは俺と同じ速度と降下率を保て。そのままいけばキッチリと空母に着艦できるはずだ」と言いながらバージルにランディングギアと着艦フックを降ろすよう指示する。

とその時ジョージ・ワシントンの航空管制から無線が入る。

「大統領を乗せた輸送機がまもなく着艦体勢に入る。アプローチラインにいる2機は直ちに退去せよ」とマニュアル通りの口調。

俺はカチンときて

「何だと!正気かお前は!こっちは二人のパイロットが生きるか死ぬかの瀬戸際なんだ!

大統領なんぞは後回しにしろ!」と管制官に詰め寄る。

「大統領機が優先だ。直ちに退去せよ」と血も涙もない機械的な声の管制官。

「ふざけんじゃねえ!黙ってろ!」と管制官を一喝する。

「何でこんな時に大統領が?俺たちどうすればいいんだ?」と弱々しい声でバージル。

俺は怒りが頂点に達してきたので

「自分の命と大統領とどっちが大事なんだお前らは!死んだら何にもならないんだぞ!」

とバージルたちを叱りとばす。

バージルたちを安心させるため

「俺が命と引き替えても責任をとってやるから着艦に集中しろ。いいな!」と言いながら

空母の方に目をやる。


「バージル、少し高度が下がったぞ。エンジン出力を上げろ」と俺。

「でも燃料が…」と弱々しい声でバージル。

「いいから上げろ!このままでは海に墜落するぞ!早くしろ!」と少し焦りながら俺。

バージルはエンジン出力を少し上げる。高度が上がり機体はアプローチラインに何とか戻った。

「燃料よ何とかもってくれ…」と俺は祈るような気持ちで空母を目指す。

「たいちょー!そろそろ上昇か旋回しないと、たいちょーが空母の艦橋にぶつかりますよ!」とシズコから無線が入る。

シズコは無事に着艦し空母のデッキから俺たちを見ているらしい。

空母の艦橋は航空機の着艦デッキのすぐ右側にある。

バージルのすぐ右側を飛んでいる俺はそのままいけば艦橋にぶつかる事になる。

だがまだバージルの横を離れるわけにはいかない。

「よし!あと500メートルだ!がんばれ!」とバージルに声をかける。

「たいちょー!早く回避しないと!」とシズコ。

「もうすぐギアが接地するぞ!衝撃に備えろ!」とバージルに言いながら前を見る。

艦橋が思ったよりも目前に迫っていてギョッとする。

「ヤバイ!」と思い操縦桿を傾け回避しようとするがスピードが落ちているため機体の反応が遅い。

「ぶつかる!」

艦橋内部の人間が逃げまどう姿がはっきりと見える。

「これまでか!」と思い覚悟を決める。

「………」

1秒…2秒… 衝撃がない。しかもまだ俺は飛んでいる。後ろを振り返る。

ジョージ・ワシントンが俺から離れていく。

「やったー!!生き残ったぜー!!」と俺は思わず我を忘れて叫ぶ。

「たいちょー!大丈夫ですかー!」と言うシズコの声で我に返り空母のデッキに目をやる。

バージルの機体が着艦デッキに停止している。ホッと胸をなでおろす。

大統領を乗せた輸送機も無事着艦した。

「なんで今頃大統領がここへ?日米首脳会談をやってるんじゃなかったのか?」

と思いながら俺も着艦体勢に入る。


俺も無事に着艦し機体から降りる。

何だかあたりは物々しい雰囲気に包まれている。

甲板にいる全員が一人の男に向かって一斉に敬礼している。アメリカ大統領だ。

これ見よがしに軍服でも着ているのかと思ったら以外にもスーツ姿である。

周りの雰囲気に押され俺もついつい背筋を伸ばしてしまう。さすがに敬礼まではしないが…

横を見るとシズコが全く緊張感のない顔で手を口に当ててあくびをしている。

「たいちょー、つまらないから早く部屋に戻ってお菓子食べよ」とシズコ。

俺は「それもそうだな。行こうか?」とシズコと一緒にその場を立ち去ろうとする。

そこへ「おいおい!」とあわてた表情でジャックが俺の所へ飛んでくる。

「大統領がお前の事を呼んでるぜ!」と息を切らしながらジャック。

俺は「えっ?」と思い大統領が何で俺を呼んでいるのか理由を考える。

突然「ハッ!」と思い出し頭の中が真っ白になる。

大統領よりも先に着艦した責任を、命と引き替えてにしてもとってやるとバージルに言ったことで収監されるのではないのだろうか?という思いや、

アメリカ大統領に逆らったため日米の国際問題に発展し、両国民から集中的に非難を浴びて逮捕され、一生刑務所暮らしをしなければならないのか?という思いなどが次々と頭の中を駆けめぐり体中から嫌な感じの冷や汗が吹き出てきて意識が朦朧としてくる。

「タカシやヨシミツ達とも、もうこれで会えなくなるのだろうか?スーパーダイジュのみんなとも…

そして妻のミユキや愛犬ガバチョにも…」

今までの楽しかった思い出が頭の中で走馬燈のようによみがえり、次から次へと浮かんでは消えていく。

何だか目頭が熱くなり涙があふれそうになる。

そこへ「君か?我が国のパイロットを救ってくれたジャパニーズヒーローは?」と言う声。

「ハッ!」として我に返ると俺の目の前にはなんとアメリカの大統領。

ビックリして思わず飛び上がる。

「たいちょー、どうして泣いてるんですかあ?目に涙が溜まってますよー」とシズコ。

俺はあまりにも驚いたのでシズコの言うことなど気にも止めず、大統領から差し出された右手を無意識のうちに握り返していた。

「日本にも君のような勇敢なパイロットがいたとはね。首相にも後で礼を言っておくよ」と大統領は俺の肩をたたきその場を去っていった。

俺は大統領に礼を言われた事よりも収監や終身刑から免れた安堵感の方が先行し、体中の力が抜けていくのが自分でもわかった。


「えっ!たいちょー、そんなこと考えていたんですかあ?バッカみたい」と笑いながらシズコ。

デッキから下の階へ降りて通路を歩いているとき、シズコに先ほどの事をそれとなく話してみた。

「まったく、たいちょーは妙な事で心配して肝心な所はいい加減なんだからー」とシズコはまだケラケラと笑っている。

「でもなあ!あのときは本当に…」と言いかけたところで俺達の前方にこちらを向いて立っている人影に気づく。

「どうもありがとうございました」と俺達に向かってその男。よく見るとバージルである。

表情が以前とは全く違っているので別人かと思ってしまった。

「よくがんばったな。なかなかいい度胸してるじゃないか」と俺。バージルの肩をたたく。

「じゃあまたな」と言いながら通路の先へ進もうとした俺の背中に向かって

「ジャンボジェット機の届け先を教えて下さい」とバージル。

俺はビックリして振り返り「おいおい!勝負の決着はまだついてないだろ?何言ってんだよ!」と思わずあせる。

「いえ、俺達の完敗です。おまけに命まで救ってもらって…」とバージルは以前とはずいぶん態度が違う。

「気にするなよ」と言う俺に向かって

「でも何かお礼を!」とバージル。

俺は仕方なく「それじゃあ今夜俺達と一緒に飲まないか?みんなでパーッとやろうぜ。それでどうだい?」とバージルを誘ってみる。

「でも俺嫌われ者だから…」と言うバージルに向かって

「ジャックにセッティングを頼んでおくから必ず来てくれよ!」と言い残し通路の先へと進む。


「ジャンボジェット機もらえたのに何で断ったんですかあ?もったいないなあ」と俺の部屋でスナック菓子をボリボリ食べながらシズコ。

「あんな物もらったって置き場所に困るしそれに維持費だってすごくかかるんだぞ。税金だって莫大な額とられそうだし…」とチョコボールを5−6個まとめて口に放り込みながら俺。

その時、部屋の外からドアをノックする音が聞こえる。

ドアを開けると「よお!日本の英雄さん!」とジャック。

「ジャンボジェット機はどうなった?いつ届くんだ?」と言いながら部屋に入ってくる。

部屋に入るなりシズコを見つけ「よお!シズコちゃん!ジャンボジェット機で一緒にラスベガスに行ってパーッと盛り上がろうぜ!」

とジャックは一人で騒いでいる。

俺がジャンボジェット機の件は断った事を言うとジャックはマジな顔をして悔しがり

「バカかお前は!こんなチャンスもう二度とないぞ!」と真剣に怒っている。

「お詫びにこのライターやるから今夜のパーティーのセッティング頼むよ」とジャックに例のジッポーを手渡す。

ジャックは「おっ!いいのか?これお前の大事な物だろ?」と言いながらも速攻で服のポケットにライターをしまい込んだ。


夕方、部屋で一人テレビを見ながらボーっとしていると、ドアを叩きながら「おーいテツヤ!早く行くぞ!」と言うジャックの声。

テレビを消し部屋を出た瞬間、思わず「うわっ!」と声を出してしまう。

なんとナタリーが背中の大きく開いたイブニングドレスを着て微笑みながら俺の方を見ているではないか。

「何をそんなに驚いているの?パーティー会場までエスコートして下さる?テツヤ」とナタリーは俺の腕に手を回してくる。

「じゃあ俺はシズコちゃんをエスコートさせてもらうよ」とジャック。

今、気がついたのだがシズコも髪の毛を結い上げ、サイドに大きくスリットの入ったチャイナドレスを着ている。

「シズコ!結構似合うじゃないか?」とジャックと共に後ろを歩いているシズコに笑いながら声をかける。

「ちょっとテツヤ!今は私のエスコートしてるんでしょ!よそ見しないで!」とナタリーに叱られる。

後ろからジャックとシズコが「ヒューヒュー!熱いよお二人さん!」と俺達をからかっている。

パーティー会場に到着。一斉に拍手やら口笛などが飛び交う。

「すごくお似合いだよ!お二人さん!」と声をかける者もいるがイブニングドレスのナタリーとは対照的に俺はヨレヨレのTシャツとGパン姿である。似合っているはずがない。

ジャックのエスコートをまねて俺もナタリーを席に誘導する。

テーブルの椅子を引いてナタリーの手をとり座らせる。

自分でやってみて改めて思ったのだが、ほんと日本人というのはこのような仕草が似合わない人種だと思う。

たまにレディーファーストもどきをやっている人を見かけるが、やはり動作が自然体でなく何となくぎこちない。

もう二度とこのような事はやるまいと思った。

ふと急にあたりが水を打ったように静まり返る。不思議に思い周りを見回す。

会場にいる全員の視線が一点に釘付けになっている。その視線の先にはなんと大統領。

「ゲッ!もうとっくに帰ったと思ってたのにまだいたのかよ!」と俺は思わず言ってしまう。

自分では小さな声で言ったつもりなのだが、しんと静まり返った会場には思ったより大きく響いてしまった。

「すまないな、もうすぐ帰るから勘弁してもらえないかね?テツヤ君」と俺の方を見て大統領。

顔から血の気がサーッと引いていくのがわかる。

名前までバレてる。

周りからの冷たい視線も肌で感じる。

そんな空気を悟ったのか「さあさあ!私に遠慮しないでみんな楽しんでくれ!」と大統領。

何故か俺のとなりの席へ座ろうとしている。

びっくりして立ち上がろうとすると大統領は俺の腕をつかみ強引に席に座らせる。

「なにも逃げることはないじゃないかテツヤ君」と言いながら、そこらにあったビールのグラスを手に取り、カチンと俺のグラスに軽く当てたあと一気に飲み干した。

「あの失礼な事を…」と言いかけた俺を気にするなというような仕草で諭し

「今日君が助けてくれたパイロットは私の同級生の息子なんだ。小さい頃からよく知っていてな、少しやんちゃな所があるが本当はいいやつなんだ」と大統領。

「えっ!大統領の同級生ってもしかして海軍提督ですか?」と俺。

大統領は皿の上のカシューナッツをつまみながら

「ヤツとは大学時代にアメフト部で腕を競い合った仲だ。

もう30年以上前の話になるが…あいつにそっくりだよ。バージルは」と目を細める。

「大統領、そろそろお時間です」と言う声に顔を上げる。護衛らしき男達5人がビシッとした姿勢で立っている。

「じゃあバージルの事は今後ともよろしく頼むよ」と何故かバージルの事を大統領から頼まれ

「機会があったらまた会おう」と俺の肩をポンポンと2回たたき席を立つ。

俺も席を立ち大統領を見送る。

周りの拍手に押されながら大統領は部屋から出ていった。

何だか調子が狂ってしまったので景気づけにビールを2杯一気飲みして気分を変える。

ジャックとナタリーそれにシズコとサミーも加わり、昨夜同様くだらない話で盛り上がる。

そこへ「あのー先生」と言う声。

見るとバージルが手下のパイロットを引き連れビール瓶を手に立っている。

「よろしかったらどうぞ」とバージルは俺のグラスにビールを注ぐ。

どこかで日本の接待マナーでも覚えてきたのだろう。

ビールを注いでいるバージルに向かって

「どうでもいいけど先生って呼ぶのだけは勘弁してくれよ。どこかの国の役に立たない政治家みたいだろ!」と俺。

「でも、あなたからいろんな事をしっかり教われって大統領に言われましので…で、どう呼べばいいですか?」とバージル。

俺は「みんなと同じテツヤでいいよ」と言いながら注いでもらったビールを口に運ぶ。

バージルの手下たちからも次々とビールを注がれ、おかげで腹がタプタプになってしまった。

「親父に電話でめちゃくちゃ怒られましたよ。今までお前はそこで何を学んでいたのかって…」とバージル。

ふとジャック達の方に向き直ると

「今まで生意気言ってすいませんでした。自分の実力がどんなものか今回でよくわかりました。

今後、気持ちを入れ換えてがんばりますのでよろしくお願いします」とバージルは頭を下げ涙を流している。

ジャックはあわてて

「おいおい!何も泣くことはないだろ!これから仲良くやっていこうぜ!」とバージルを諭す。

サミーにもやさしい言葉をかけられバージルはその場に泣き崩れてしまった。

「じゃあみんな仲直りしたところで、たいちょーの部屋へ行って飲み直しましょうよ!」とシズコ。

「そうだな!今日はテツヤたちと過ごす最後の夜でもあるしな!」とジャック。

俺は「そうと決まったら早く行こうぜ!」と座り込んでいるバージルを立たせて手下のパイロット共々会場の外へ押し出してやった。


翌日の朝。空は快晴、絶好の飛行日和である。

南国らしく朝から太陽がジリジリと肌を射す。

甲板で出発の準備をしていると

「おたくの首相を乗せた飛行機は午前10時頃この付近を通過するそうだ」とわざわざハワード艦長が報告しに来てくれた。

「日米首脳会談はどうなったんです?確か今日の午前中までやるって言ってたわりには昨日アメリカ大統領がここへ遊びに来てたし…」と俺。

ハワード艦長は「どうやら予定より二日も早く終わってしまったようなんだ。

おたくの首相は昨日は一日中ゴルフを楽しんでいたようだぞ」と苦笑する。

俺は返す言葉が見つからず笑ってその場をごまかし出発の準備を続ける。

太陽がさらに高度を増し空母のデッキも素手で触れないくらい熱くなってきた。

「おい!そろそろ時間だぞ!」とジャックの声。

「OK!わかったよ!」と言いながら機体に乗り込もうとすると「テツヤさん!」という声。

振り向くとバージルが手に何かを持って立っている。

「あのーこれ、せめてものお礼の気持ちです。受け取って下さい」とバージルは俺に細長い箱を差し出す。

シズコがすかさず飛んできて「何?何?たいちょー開けてみよ!」と箱を興味深げにのぞき込んでいる。

俺は箱を丁寧に開け中身をそーっと取り出してみる。

「わあー!これってドンペリのピンクじゃない!」と驚いた声でシズコ。

俺も「おっ!おい!いいのかよ!こんな高い物」と思わずあせる。

「ジャンボジェット機とは比べ物にならないくらい安いですから」と皮肉たっぷりにバージル。

俺は笑いながらバージルの胸に軽くパンチをしてやる。

バージルは少し後ずさりしながら

「また来て下さい。いつでも待ってますから…」と笑顔を返す。

俺が来たときとは全く別人のようなさわやかな笑顔である。

「じゃあ、また会おう!」と握手を交わしコクピットに乗り込む。

夢にまで見たせっかくのドンペリピンクが割れないよう丁寧にTシャツやジーパンにくるんでいると

「途中で飲んで事故るんじゃねえぞ!」とジャック。

周りから笑いが巻き起こる。

俺も照れ隠しに笑いを返し

「ジャック!ライター大事にしろよ!ナタリーも元気で!」

と言い残しコクピットの風防を閉める。

大きく手を振っているジャックやナタリーそしてバージルたちに手を振り返しながらカタパルトへと向かう。

となりでは機体にカタパルトを装着されながらシズコがサミーに向かって手を振っている。

カタパルト装着完了の合図。

俺はエンジンを全開にし発艦準備完了の合図を送る。

マーシャラーの合図と共に瞬時にカタパルトが機体を引っ張り始める。

あっという間に機体はジョージ・ワシントンから打ち出された。

ギアを格納し上昇を始める。

後ろを振り返ってみる。

シズコが後ろからついてくるのが確認できる。

それと同時にジョージ・ワシントンがどんどん俺達から遠ざかっていく。

太陽の光が海面に反射してキラキラとまぶしいくらいに輝いている。

やがてジョージ・ワシントンはその光に包み込まれるかのように海面の中へ静かに溶けていくように消えていった。

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