第438話 異世界に産声を上げる阪神巧者。
遅くなりました。
ここ暫くは重た目の展開になっていた反動か、少しハッチャケてしまいました。反省していまーす(´_ゝ`)
多分な。
======================================
ハーゲンの作るラン麺を味わった日より一週間(十日)。当初の目的を果たしたラーメン狂いの男は、本来はそのまま帰る予定だったのだが、クリンに改良点を聞き出せたお陰で直ぐにでもそれを試してみたくなってしまい、そのままマクエルの宿に泊まり厨房を借りて試作を作る日々を送っていた。
前回は数人分のラン麺を作るだけだったので宿でスープを仕込んでも直ぐに匂いが拡散したが、こう何日も続けて試作してしまえば流石に匂いがきつい。
そこでマクエルがダンジョンに食材を獲りに行くのに合わせて一緒に街を出て、ダンジョンを少し行った所でスープを炊き、戻って来たマクエルと一緒に街に戻り、宿ではそのスープを使ったラン麺を宿の料理として供出する事となった。
「折角街の外に出て仕込むっすから、チマチマした量を仕込むなんて勿体無いっす! 有難い事に班長、いえマクエル店長の宿『門番屋・二号店』は泊り客も食事だけの客も多いっす! 試作品の反応を見るには最適っす!」
と言う事で例の涎と鼻水を飛ばしまくるロバを伴ってスープを作り、試作と言う事で原価回収が出来ればいい程度の安値で宿で振舞っていた。
尚「門番屋・二号店」と言うのは、カルロによって看板に書かれた意味が理解出来たマクエルの愛する家族による大顰蹙を受け、改名が決定事項となってしまっていた。
しかし、改名するにしてもこの男に任せてしまえば結局奥さんや娘の名前を付けようとする始末であり、辟易した彼の愛する妻から、
「もう、面倒だから『門番二号の宿屋』でいいじゃない!」
と言う一声に、彼の娘達も賛同してしまい――流石にその名前はもう自警団で門番もしないのに嫌だ、と今度はマクエルがゴネた。
だが結局他に良い名前となると家族の名前がついてしまうので、なら自分の名前にしろ、と言われてしまい、流石のマクエルも折れてそのままでは流石に気が引けたので、少し変えてこの店名に落ち着いたのである。
しかしその際、
「一号店は何処なんだよっ!?」
と言うカルロのツッコミが入ったのだが――経緯を知る彼の家族とハーゲンが「マクエルらしい」と賛同した為に一号店よりも先に二号店の屋号が付く奇妙な宿が爆誕する事となった訳である。
その際。幻の一号店を探し求めてブロランスの街を旅立った冒険者がチラホラ居たとか居なかったとかしたという。
…………閑話休題。
そうして宿でラン麺を作って振舞い、客の反応を見ては微調整をして改良を加えて行くハーゲン。流石に代用醤油は手間とコストがかかるのでクリン達以外には使わずに塩味主体のラン麺だったが、それでも味は日に日に向上していく。
その様はほぼ毎日カルロの様子を見に行くクリンの眼にも当然映る。
「向上心のなせる業ですね。もう一端のラーメン職人ですね」
そう言ってハーゲンの作業を褒める。だが――そう言うクリンの表情はやや優れない。ここに来て、辛うじて作っていた親しい人向けの料理すら作る気力が無くなっていたのだ。
楽しそうに改良を重ねて行くハーゲンを「羨ましい」と思う自分が居る事に、もうクリンも気が付いている。だが、自分で作ろうとすると、
「マクエルさんもハーゲンさんも、僕が教えた事をもう自分の物にして独自改良まで出来ています。そしてあの味が出せるのならもう僕が作らなくても良いんじゃないか」
そう考えてしまう自分が居る事も、クリンは自覚してしまっている。我ながら良くない傾向だと思う。
自分から物作りを取ったら何も残らないだろうに、自分よりも良い物を他人が作れるのなら、じゃぁ自分で作る必要は無いんじゃないか。
そう己の根幹を崩す様な思いがどうしても拭えないのであった。
そんなクリンの内心を他所に、ハーゲンのラン麺の改良は留まらない。何も作る気力が起きない少年に、時間が有る事をそれとなく感じ取ったのか元自警団員の男は、
「折角だからガラを煮込む所を見て貰って、何かアドバイスいただけたら嬉しいっす!」
と言い、カルロの診察以外はほぼ暇であるクリンを連れて街の外でガラスープを作りに行くようになっていた。
最初こそ拒もうと思ったが、その行動は――
「バロロロロロロロロロン!」
「ぶあっ!? わ、解りました! 付き合う! 付き合うから涎を飛ばさないでくれませんかねぇ、怪獣ダランダラン!!」
「バロ! バロ! バロ! バロロン!!」
「……また名前が変わったっす」
何故かハーゲンの相棒であるロバに気に入られた様で、クリンが渋るとこうやって鼻水と涎を撒き散らしてクリンにぶちまけ、クリンが諦めて付いてくるまで迷惑行為を止めようとしなかった。
二次被害を嫌がってか、このロバが居る間はレッド・アイ達も近づこうとせず、椿ですらクリンのフードの中から彼らの頭の上に避難している始末だ。
まさかマクエルの宿にずっと置いて行く訳にも行かず、仕方なく付き合うしかないクリンであったのだ。
結局マールスハーゲンとマクエルと共に一旦北門を出て、クリンにとっては久しぶりのダンジョン街道に出る。
正直あまり来たくない方向であるのだが、何となくその素振りを見せるのが癪だったので平然とした顔で付いて行く。
街道を少し行った所でマクエルとは別れる。彼はこのままダンジョンの浅い所で今日の夜と明日の朝に使う為の獲物を取りに行く予定だ。
ハーゲンの方は、既に一週間(十日)かけて、街道から少し逸れた場所に簡易竈を構築しており、そこに持ち込んだ鍋を設置して宿の厨で処理済みの骨ガラを煮込んでいる。
道具や材料、そして水はハーゲンのロバが牽く荷車に積んである。その道具や食材を獲り出そうとハーゲンが荷車に近づく。が――
その荷車を引いて来たロバは、ハーゲンが荷物を降ろそうとする少し手前でビタリッ! と動きを止め、そのまま動かなくなってしまう。
「うん……? どうかしたんですか、ハーゲンさん?」
「いや……何か急に動か無くなったっす。こんな事一度も無かったんすけど……」
前に進む様に足を踏み出した、そのままの姿勢で微動だにしなくなったロバの様子に、クリンは元よりハーゲンも初めての事らしく困惑して首を傾げる。
因みに、他にも護衛と言う事を忘れていないレッド・アイとミスト・ウィンドも着いてきているが、涎を撒き散らされるのを警戒してか、クリンからは大分距離を開けている。勿論椿も姿を消してレッド・アイの尻尾に隠れている。
それの何処が護衛だよ、と思わなくもないがクリンは取り敢えず放置し、ハーゲンと一緒にロバの様子を観察すること暫し。
やがて唐突に首をクリンの方にグリンッと向けて「ニカッ」とばかりに唇を引き上げ、
「バロ!」
まるで「どう? 恰好よかったべ?」と言いたげに、一声鳴いて見せて来る。どうやら自分の雄姿をクリン達に見せつけたかった様だ。
「……ゴルシか、お前は……」
思わずクリンがそう呟くと、
「バロ!?」
「ゴルシ……? なんすかそれ?」
その言葉を聞いたロバとハーゲンが興味を惹かれたのか聞き返して来る。
「ええと……かつてボッター村には『白い悪魔』と呼ばれた、超気まぐれで性格のネジくれ曲がった馬が居たんですよ。足がとても速くて競馬……競争では何度も優勝した名馬……の筈なのですが性格に問題がありすぎた事でも有名です。正式にはゴールドシップって名前なんですが、皆愛称でゴルシって呼んでいたんですよ」
「へぇ、そんな馬が坊ちゃんの村には居たんですか……ゴルシ……何か良い響きっす!」
「バロ! バロ! バロッ!」
「うん……? もしかして、気に入ったっすかゴルシ?」
「バロロロロロロロロロン!」
「そっすか……じゃ、今日からお前の名前はゴルシにするっす!」
「ちょっと待ったぁっ! 何その軽いノリ!? え、今までの名前はっ!?」
「無いっすよ。コイツ、どんな名前を付けても気に入らないみたいで、名前つけてもガン無視して来たんで、普通にロバって呼んでいたっす」
「バロ!」
「ほら、コイツも気に入った見たいっすし、ゴルシで決定っす!」
「バロバロバロバロッ!」
「ええ……マジで決まっちゃったのぉ!?」
何気なく名前を出しただけで、まさかその場で命名されるとは思っていなかったクリンは盛大にドン引きしている。
何にしても。コレが異世界であるこの世界に、「白い悪魔」では無く「涎の悪魔」のロバが爆誕した瞬間であった。
「……え、コレももしかして僕がやらかした事になるの!?」
と、困惑した少年の声が、長閑なダンジョン街道の横で響いたとか響かなかったとかしたらしいが――それは今回どうでもよい事である。
======================================
やぁ良い子の皆!
元気にしていたかな!
久しぶりのトーマスお兄さんだ!
ゴルシなんてネタ入れた以上は解説せねばなるまいという事で、僕の出番だっ!
それでは早速行ってみよう!
ゴルシ、正式な名前はゴールドシップ。
ジャパンの競馬場で活躍した名馬だ。かなり癖の強い馬で逸話が沢山ある事でも有名な競走馬だそうだっ!
劇中に出てくる「白い悪魔」の異名は、有名なジャパニメーションの「ガ〇ダム」では無く、このゴルシの親である馬が、かつて「黒い悪魔」と呼ばれた、ゴルシに負けず劣らずの気性が荒くて性格に難のある馬だった事から、白い毛並みのゴルシはそれに因んで「白い悪魔」と呼ばれたんだっ!
そして、このゴルシはサービス精神も多くシャッターチャンスを作る為に急に立ち止まったりして被写体タイムを作ったりするので「マ〇ケル・ジャ〇ソン」とか呼ばれる事も有ったそうだっ!
……うん? ホースガールで出て来るので知っている?
ハッハッハッ! すまんな、トーマスお兄さんは余りjapanese cartoonには詳しくないんだ、悪いなっ!
と、言う訳で今回の僕の解説はココまでだっ!
……コレは一体何の参考になるんだろうな?
まぁいい!
では良い子の皆!
次に会う時まで元気でなっ!!
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます