第181話 小人族との対話。


お待たせして申し訳ございません。m(__)m

正直この回は難産でして、説明チックすぎて何度も書き直しています。

ですがこれ以上書き直しても余り変わる気がないので公開に踏み切りました。

お楽しみいただければ幸いです。



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「で、そのトゥムトゥム族のランティム・トムティム・ホロイスラー・ポチャムン・キラムン・バンタリア・トゥムトゥムさんの言うお話とは何でしょう。御覧の通りに僕はまだ子供なので大した事は出来ないと思うのですが」

「……覚えられないと言いつつキッチリ覚えていますな。お見事です」


「今の内だけです。流石に後十分もしたら忘れてしまうと思います。で、お話とは?」


 人間ではない相手でもつい生前の習慣で丁寧に対応してしまうクリン。因みに、スキル化する前に自力でHTWの膨大なレシピデータを丸暗記すると言う変態技を披露している少年である。たかだか長いだけの名前を覚えられない道理は無い。


 従って本来なら最初の村の拾い親である村長や村の名前も次の村の名前や村長の名前も覚えられていておかしく無いのだが、クリンの物覚えの良さは記憶術による所が大きく、最初に聞いた時だけなら瞬時に覚えられるのだが「それをそのまま記憶しよう」と意識していないと、アッサリと十分もあれば記憶が薄れてしまう。


 コレは技術で記憶力を高めた人間にはあるあるで、本人が覚えようと言う意思が無ければ長く記憶出来ない性質がある。


 だからこそゲーム内情報を丸暗記などと言う事が出来る訳でもある。記憶領域を本人が必要だと思う物で埋め、必要無い物はあっという間に消し去る。


 これがクリンが興味がない村の名や人名を覚えていない大きな理由だ。特に人名や地名は覚えても記憶の画像と名前を合致させて覚える必要が在るので、合致しなければあっという間に忘れてしまう。


「はい。話と言うのは……もし可能でしたら、貴方様のこの祭事が終わりましたら、我々にもその神殿での参拝をさせてもらえないでしょうか」

「……は?」


 全く予想していなかった申し出に、クリンは再度目を瞬かせる。


「神殿とは、この社の事ですかね? 別に構いませんが……と言うか、それだけなら別に僕に断る必要もなく、僕が知らない時に勝手に参拝されればよかったのでは……? 一応この後も一日はこのままにしておくつもりでしたし」


 クリンがそう言うと、すかさず初老の小人族の長が、「それです!」と大きい声を出す。


「うわびっくりしたっ! それってどれよ?」

「コレはお願いになってしまうのですが、貴方様の行うその不可思議にて異形な時空神を祀る為の儀式と様式。それも我らにお教え願えないでしょうか」


「え、ええ? いや、確かにコレはこの世界の祭事には無い物でしょうが……と言うか別にこれはセルヴァン様専用の儀式と言う訳でも無いですし、何ならかなり適当にでっち上げた方法で褒められた物では無いと……」

「確かに後半は簡易的な文言でしたが、最初の……賛歌でしょうか。意味は不明でしたがお見事でした。お若いのに儀典に精通されている事は十分わかります」


「は、はぁ……まぁ確かにあれはMZSの変態共がキッチリと再現した祝詞なので、様式は正確に踏襲していますが……それ以外は意外と適当ですよ?」

「またまたご謙遜を。確かに貴方様の『古き盟約の儀典』は少々独特でしたが……基礎はちゃんと踏襲されております。そして、あの聞いた事の無い賛歌。恐らく異国の様式なのでしょう。それをきちんと学ばれている貴方様に、是非とも異国のそれを教えて頂きたく思い、我ら一同姿を現した次第です」


「え? あ、いや、僕が覚えたのは単に建築土木の分野の式典を好んでぶち込んで来るHTWのお陰な所が多いので、神主みたく神職学校で学んだ訳では……って、『古き盟約の儀典』ってなんです? そんなのは知りませんが」


 クリンにその言葉の意味が全く分からなかったので、そう聞き返すと小人の長はキョトンとした顔で見返して来る。


「……まさかご存じない? 遥かな昔、我らの先祖と人族の王との間に取り決められた古よりの約定なのですが……本当に存じませんか? ええ……全くの偶然であったのならそれはそれで凄いですが……」

「お恥ずかしながら、サッパリと覚えがありません。それはいったいどういう約定なんでしょうか?」


「本当に知らないのですか? 遥かな昔、我々小人……と言うよりも妖精族と人族は争っていたのですよ。人族に比べれば我らは数が少なく、また人には使えぬ魔法も幾つか持っています。その為物珍しさから愛玩動物の様な扱いを受けたそうです。それに反発した妖精族と人族との間で戦争が起きたのですよ」


 小人の長が言うには、妖精族とは魔素をその体に多くため込む生物の総称であり、小人だけででは無くゴブリンやオークと言った種族も妖精に含まれ、大きさも見た目も多岐に渡る。中でも小人族はそのまんま人を小さくした容姿の種族が多かった為に、特に人間から狙われたそうだ。他にも羽妖精や森妖精(エルフ)なども、人間にとっては容姿に優れた為に狙われたそうだ。


 因みにその中にドワーフ族が入っていないのは、単に人間の作る酒が好きだったので彼らは勝手に人間に近寄って来たのと、女性でも髭が生える種族なので愛玩としての価値は少なく、鍛冶が得意で酒を買うために金銭のやり取りが通じた為に、普通に他種族扱いを受けていたそうな。


「各種族は個体数が少なくても、種族全体となればかなりの数です。人との争いは大規模になり、やがて世界を巻き込む規模になったそうです。その折、人族の世界を平定する王が現れ、我ら妖精族との戦争も和平と言う形で終わらせたそうです」

「へぇ、そんな事があったのですか……因みにそれはどれくらい前の話なんです?」


「さぁ? 我らの中でも殆ど伝承になっている話です。大体三千から五千年は昔の話だと言われています。長寿のエルフ族ならまだ当時を覚えている者もいるやも知れませんが、我らはそこまで長寿では無いので、詳しい年代までは解りません」

「思っていた以上に古い話だった! え、そんな古い時代の条約が今でも有効なの!?」


「ああ、流石に妖精族の全てが守っている訳ではありません。当時の王の国もとっくに無くなっています。長命な種族の中の幾つかが未だに守っている程度です。長命ではないですが我々もその数少ない約定を守っている種族の一つです。最近は人族の方で盟約を覚えている者が減ったのでほぼ無意味になっていますが……それでも時折この盟約を未だに伝えている人族も居ましてな。てっきり貴方様もその一人かと思っていました」


「成程、何千年前もの話じゃ確かに人間で覚えているのなんて滅多にいないでしょうねぇ。で、差し支えなければその儀典とはどういう物か教えていただいてもいいです?」


「ええ、構いません。と言うか貴方様はやっておられますので今更と言う気がしますが。古き盟約の儀典とは、かつての王と妖精族の各種族との間で個別に取り決められた約定です。なので他の種族がどういう取り決めを行ったのかは、我々の中ではもう失われてしまっています。我々が定められた条約は『小人族に貢ぎ物をする代りに悪戯をするな』です」

「……は?」


「より詳しくは『貢物をする相手には悪戯をするな』です。我々は御覧の通り小さい種族です。ですが動きが俊敏であり、種族の特性として姿隠しの魔法と、伝音の魔法と消音の魔法を得意としています。古の人族との戦争ではその特性を生かした陽動と攪乱で活躍していたと聞いています。特に我ら森小人は薬草学にも通じ、毒物の使用も得意であります」

「おお……本気で忍者みたいだ……しかし、それが何で悪戯?」

「それがですな。御覧の通りに我らは小人です。どうやら当時のご先祖達は人族の街に毒を撒いて回ったらしいのですが……我らには致死量の毒でも巨大な人間相手にはあまり効かなかったらしいのです。頭痛やめまい、吐き気や下痢を起こすのが精々だったそうです。しかも無差別に毒を撒いていたそうで、それは人族から見たら迷惑な悪戯程度だったそうなのですよ」


「……お、おぉう……」


「毒以外にも小柄で俊敏な動きを生かして、機密情報や貴重品の奪取も行っていたらしいのですが……人間にとって何が貴重なのか知らなかったので『我ら』にとって貴重だと思う物を盗んでいったらしいのですよ。そして、小柄である為あまり大きなものは運べず。人族からは『失せモノが増えた』程度だったらしいのですな」


「あ、ああ……そういや向う(前世)でも小人は悪戯で下痢とか頭痛とか起こして、どうでもいい様な物を盗んでいく、みたいなお伽話があったなぁ……」

「そんな経緯で、時の王に『小人族に必要な物があれば貢ぐので、それを持って悪戯をするのは止めろ』と言われ、盟約が交わされたそうです」

「戦争の話かと思ったらいきなりファンシーな話になった! いや、当時の人なら切実だったんだろうけど……う~ん……」




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正直まだこれでも完成とは言い難いのですが……

ですが今の限界がコレと言う事で。次回も説明が続くんだよなぁ……

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