第156話 コレもある意味テンプレ展開と言えるのかもしれない。


時間には間に合わなかったけど今日には間に合った!

最近ちょっと忙しいんですよ。

何せオレガンプラのアセンブルを考えるのが大変で……(ォィ



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 ——一体、何がどうしてこうなった?——


 午後の鐘(午後三時)の鐘が鳴り、撤収準備を粗方済ませていたクリンは、大小さまざまなサイズの果実にムチムチと囲まれ、困惑しながら頭の片隅で思う。


 特大サイズのメロンがフカフカと後頭部を包んだかと思えば頬に負けないサイズのスイカが押し付けられる。ピーチサイズの物に手が包まれる事もあれば、レモンサイズのちょっと悲しい物が肩に押し付けられたりもする。


 時々谷間や脇などに仕込んでいると思われる物体がゴリゴリと当たるのはご愛敬。寧ろその痛みがともすれば沸騰しそうな頭を冷静にさせて来る。


「あの、いい加減どいていただけます?」


 一応言って見るがやはり効果は無い。寧ろ、


「きゃーっ、照れてるわ、可愛いっ!」

「あら、意外と淡泊な反応ね。実は慣れているのかしら?」

「いやぁん、ほっぺプニプニ! 髪サラサラ! やっぱショタはいいわぁ!」


 と、余計にむにゅむにゅプリプリと寄って集って押し付けてくる始末。そう、クリン少年は只今絶賛ムチムチわがままボディのお姉様方に囲まれ揉みくちゃにされている所だ。


 どのお姉様も普通の街女の様な服装であるが何故か一様に着崩している為、妙な色気を振りまき日の高い内には表に出てはいけない感じになってしまっている。


 何故そんなお姉様方にひっきりなしに押し付けられ撫でられ揉まれ、ハーレム主人公状態になっているかと言えば。


 話はつい数分前に遡る。クリンが荷物を纏めて背負子に積み込んでいると背後から、


「やっと見つけたぞクソガキっ!!」


 とか言う声が聞こえた気がしたので、顔を上げて背後を見ようとする前に、


「あっ! あの子じゃない?」

「ウチのヤサの一つの前で露店している子供っ! 他にいないし間違いないわきっと!」

「ちょっと、邪魔よアンタっ! 道の真ん中に突っ立てんじゃないわよっ!」

「ゲフッゥ!?」


 などと言う声が聞こえ直後に気が付けば六、七人位の普通の街女の服装なのに何故か夜の商売の人だと思わせる、超セクシーなお姉様方に囲まれていた。


 そのまま、セクシーなお姉様方は少年に向かって口々に、


「かわいい」「本当に子供だった」「本当に生意気そうな顔だけどソコが良い」「髪長すぎ!」「本当にこれで六歳なの!?」


 等と騒ぎ立て、そのまま少年に体をくっつけ出し——そして現在に至る。


「うん、遡ってもサッパリ意味が解らないね。誰なんだろうこの人達?」


 気が付けば抱き上げられ、大小様々なお胸様に包まれている。ちょっとしたハーレムか、いかがわしいお店の出張サービスの様相だ。市場を通って行く客達が羨ましそうな眼を向けて来る。何やらその向こうにどこかで見た様な男が地面に転がっているが誰も気にした様子はない。


 羨まけしからん状況だが正直クリンにとっては余り嬉しい事では無い。喜んで何時でも変わってやる。それが本音だ。


 何せクリンの前世は現代日本人である。しかも病院に長期入院しており最後は寝たきりだ。とても「クリーン」な環境に育った現代っ子だ。


 対してこの世界。文明文化共に水準は中世になりかかった頃の西洋圏に非常に似ている。つまり入浴の習慣が無い。


 川沿いの村とかなら川で水浴び位はするが毎日では無いし、この様な大きな街ともなれば住人全員が水浴びする程の水場も無い。やれて数日おきに濡らした布で体を拭く位だ。


 そして、この地域の住人は西洋圏の白人種に近い。海外生活をした事がある人ならお分かりだと思うが白人種には体臭のキツい人が多い。


 そしてこの世界ではまだアルコールに香りを溶かしたり、油に匂いを溶かしたりしたような香水は生まれていない。


 前世でもそれらが生まれたのは十六世紀頃。この世界ではまだまだそんな技術は生まれそうにもない。


 ではどうするのかと言えば、香木や乾燥ハーブを燃やした煙を浴びたり、服に香料を直接塗り込んだり或いはダイレクトにハーブの搾り汁を塗ったりするだけである。


 従ってこの様に密着されてしまうと少年にとってはかなり匂うのである。しかも体臭と香料が混じった独特の強い匂いで、クリンにはかなりキツイ。


 今のクリンは石鹸で毎日では無いが頻繁に体を洗い、服も石鹸で洗濯している。このような臭いには実は耐性がないのだ。


 前の村の住人やテオドラなどが頻繁に風呂に入れなかった時のクリンを指して臭いと言っていたのも、実はこちらの世界流に香料で体臭を包んでいなかったせいでもある。


 クリンからしてみれば体臭に更に香料の匂いがプラスされたら余計酷い匂いに感じるので使っていないのだが、此方の世界では皆がそれに慣れてしまっているので、香料で誤魔化していない体臭は余計にきつく感じるのだった。


 しかもタチの悪い事に、このお姉様方は単純な夜の商売の女性でも無さそうだった。それぞれがその辺の街女の服装を着崩しているだけで妖艶な色香を纏っているが、どの人物も胸の隙間や脇の下、腰と尻の窪み等に巧妙に何かを仕込んでいる形跡がある。


 抱き付かれてしまえばそれらが時折ゴリゴリと当たって行くのだ。鍛冶仕事が得意なクリンには顔や体に当たる感触からそれらは暗器に分類される武器類だと感じられた。感覚だけで解る辺り、別の意味で変態チックである。


 どれもかなり小型に作られている形跡があり、彼女たちの容姿からすれば護身用に持っている方が安心なのかもしれないが、抱き付かれているクリンからしてみれば、


「コイツ等隠す気あるのか」


 の世界である。迂闊に踏み込んで聞きたくは無いし、かと言ってこのままの状態だと匂い的にかなりキツイ。困り果てていると、


「オラ、テメエら、家の前で騒いでんじゃねーよ! 堅気の皆様の邪魔んなるだろうがっ! お礼参りは家ん中でやんなっ!」


 後からやって来た、輪をかけて豪奢で美しく、だがどこか疲れた感じのする少しだけ歳が行った女性が、クリンを取り囲んでいる女達に声を掛ける。


「あ、姐さん、やほー、見つけたよ、この子で間違いなさそう」

「そうね、姐さんの言うとおりね。皆、場所変えよ」

「はーい」

「そだね」

「行こう行こう」

「君はお姉さんが運んであげるね」


 口々にそう言い合うと、クリンの身体はヒョイと抱え上げられ、ついでに背負子も回収され、あれよあれよという間にすぐ後ろのボロアパートの中へ連れ込まれて行った。


 それを今回は少し離れた場所で露店を開いていた野菜売りのオヤジが眺めており——


「あのボウズ……あの年で商売女をあんなに抱え込んで大人の階段を上るのか……隅に置けないボウズだなぁ……」


 と、心底羨ましそうな顔で呟いていた。このオッサン、クリンが六歳だと言う事を忘れている様子である。






「全く、一体どんな状況なんだよコレ」


 気が付けばボロアパートの一室、一部屋丸々応接間にした様な場所でソファーみたいな椅子に座らさられたクリンが茫然と呟く。


 椅子に直接座っている訳では無く、ピーチのお姉様に抱きかかえられてその膝の上に座らせられ、左右には特大メロンのお姉様と大玉西瓜のお姉様が挟む様に座り、後ろからはレモンとリンゴのお姉様が手を伸ばして頭をなでている。


 どこのクラブの接待だよ、と言いたくなるような羨まけしからんサービスを受けていると、クリンの眼前の椅子に座った疲れた感じの女性が、その様子に溜息を吐く。


「お前等なぁ……気持ちは解るけどそれじゃ話が出来ねぇだろうがよ……ここはワタシが代表で話すっから、お前等は部屋に引っ込んでな!」

「えー、私もお話したいなぁ」「独り占めはずりぃよ姐さん?」「浮気はダメよ姐さん」「あれ、姐さんってショタっ気あったんだ」「二人っきりで何する気なのかな~」


 と、クリンを構い倒しながらそれぞれ言う。姐さんと呼ばれた女性は額に青筋を浮かべながら、


「だぁーっ! 本当に話が進まないだろうがっ!! それにこんなクソ狭ぇ部屋に何人もいたら息苦しいわっ! さっさと失せろ、シッシッシッ!」


 まるで犬を追い払う様に手を振ると、お姉様方は渋々と部屋を出て行った。去り際にそれぞれクリンの頭をなでたり頬を触って行ったりするのを忘れない。


「ったく、久々に快調になったからって小娘みたいにはしゃぎやがって……騒がしくて悪かったねボーズ」


 疲れた感じの女性はクリンに向かってそう言うと、改めて椅子に座り直す——先程までシャンと座っていたのが怠そうに足を放り出したのをそう言っていいのか微妙だが——と少年に向けて、


「一応確認させておくれよ、ボーズ。アンタが最近テオドラの婆さんの弟子になったって言う、クリンとか言う小僧で間違いないね?」

「弟子? 僕がクリンである事に間違いはありませんが、弟子になった覚えは無いですが? 手習い所の生徒では在りますが」


「あ? 何か話が違うじゃねえか……ババァの弟子んなって薬草学を学んでいるんじゃなかったんかい?」

「薬草学『も』学んでいますが別に弟子では無いですね。元々覚えていた事がこの地域とはズレていたのでその修正をさせてもらっています。メインで学んでいるのは読み書き計算の方ですね」


「はぁ……何だか良く解んないねぇ。でもその堅っ苦しい喋り方はバーサンから聞いていた通りだね。アンタがクリンで間違いなさそうだ」

「ええ、他にクリンって名前の人は知りませんので多分僕の事だと思います」


「そうかい。じゃ、自己紹介しないとね。ワタシはこのボロ屋で暮らす女共を纏めているリッテルってモンだ。商売は……ってガキにはなんて説明すりゃいいんだ? エロい事をして……いや、ダメか。ソフトタッチをして……でもないな。ええと、ガッツリタッチしてくんずほぐれつ……夜のパンクラチオンをする……違うねぇ……」


「ああ、はい、説明は結構です。大体分かりましたから。どうやら知らない方が良い商売の方って事にしておきます」


「おお、理解早くて助かるぜボーズ! ワタシはこう言う説明苦手でねぇ! そんな感じのモンだ。ただ、もう少し解りやすく言うなら、テオドラのバーサンからコイツを譲り受けたモンだよ。これの礼がしたくて来てもらったのよ」


 そう言って疲れた感じの女性——リッテルが脇から取り出して机の上に乗せたのは、クリンがテオドラに渡しておいた、素焼きの小さい壷。なんちゃって正露丸を入れておいた容器だった。





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遅くなってスマン!

だがお礼参りがチンピラの方だと書いた覚えはないっ!

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