第11話:死闘
『よかろう。そなたらの気が気が済むまで相手してやる』
闇がだんだんと人の姿に近づき、闇色の四肢があるのが見えた。身長は3メートルほどか。オレの二倍くらいある。
「頼むストークラッ!」
「仕方ねぇな!」
思いが通じたのだろう、一瞬で視界が切り替わると、目の前には「闇」の顔面が――のっぺらぼうで表情はない――目の前にあった。
力強く握った剣でそれを斬ろうと思い切り振りかぶる。
しかし、すんでのところで剣を止められてしまった。
[うえええ!?片手で剣止めてない!?]
[なにあれ怖い……]
[ここのボスが倒れてたのはあいつのせいだろうな]
[本当に何者なんだよ!!]
[皆逃げて!!!]
驚いて刀身を見ると、なんとその手で剣を握っていたのだ。
出血しているようには見えない。痛がる声も様子もないことから、ダメージもないのだと考えていいだろう。
「ちっ!」
ダメージがない以上、他の場所を攻撃したい。だが強い力で握られていて手から剣が離れない。
くそっ……こんなときに魔法が使えでもしたら高火力が期待できるのに!
「〈フロストノヴァ〉!」
「〈バーンアウト〉!」
左から聞こえた二つの声。
次の瞬間、闇が一瞬にして氷に包まれた。その反動でオレと剣が吹っ飛ばされる。
闇は氷の牢獄に閉じ込められているが、完全には動きを封じれなかったようだ。ゆっくりともがき、着実に氷を壊している。
パリパリ……とひびが入り、割れるかと思えた刹那。次は地面から炎が吹きあがった。それは氷を完全に溶かし、闇までも溶かしつくそうとしている。
数秒後、だんだんと勢いを失った炎が完全に消え去った。
闇は白煙を上げながらぐったりとした様子で呆然と立っている。
「ふふん! 私の魔法はどんなもんよ!」
「妾もじゃ! 思い知ったか!」
健気に胸を張る姿は可愛らしく見える。だがオレは安堵することができなかった。こいつがこんなもので死ぬはずがない、と心のどこかで確信してしまっていたのだろう。
その予想は、見事に的中することとなる。
『ククク……クハハハ! いやはや、息がしずらくて苦しかったなぁ!』
嘲笑。その言葉がしっくりくる笑い声だった。「お前らの攻撃は意味がない」と暗に言っているのだと、すぐに分かったくらいには。
「うそっ、効いてない!?」
「ぐぬぬ……妾の炎が……」
さすがに焦るアルマとケーナ。
そのとき、景色が切り替わるとオレ含め三人一緒にブレストの前にいた。
「どこか怪我してない? 気分が悪かったりは? 〈エンジェリックヒール〉」
どうやらまとめて回復してくれたようだ。
「「「あ、ありがとうございます……!」」」
「うふふっ、礼には及ばないわよ」
「ちょうどいい、私が代わろう! 〈フューネラルダンス〉!」
助太刀として、オレたちと位置を交換するかのようにキンドラーが魔法を放つ。
そして無数に現れたのは光り輝く槍。
距離が離れているのにも関わらず神聖さを感じるその槍は、闇を包囲しているかのように広がっている。
「さぁ、踊り狂え!」
突然ストークラが言った。何が起こるのだろうと感じていたのは束の間。数千はあろうかという白槍が、数本ずつ消えていくのが見えた。
それらの行方を探すと――見つけた。数メートルの距離を、転移によって闇のいる場所へと送っているのだ。常人であれば――大抵の魔物もそうだろうが――回避どころか知覚すら不可能な攻撃を、闇は優雅にダンスを踊るようにして回避していた。
[はぁ!??!?]
[マジでダンスじゃん……]
[そういう意味じゃないだろおい……w]
[初期勢だけどこれで死ななかった魔物いないんだが]
[威力高いから避けたんかな]
[これ勝てるのかよ……]
あの足運びや動きの遅さで避けている、という事実に驚きを隠せない。これは間違いなく人間の理解できる範疇にいない。そう確信するのも無理はないはずだ。
恐らく、この場の全員のみならず、視聴者にも「勝てるのか?」という疑問と不安の種を植え付けただろう。
オレも正直不安だ。ただ、オレの場合はスキルでどうとでもなりそうな気がしてしまう。……油断は禁物、だな。
「くそっ、弾切れか……!」
悔しそうなキンドラーの声。見れば、さっきまであんなにあった槍が一本残らずなくなっている。
『さてと。そろそろ反撃してもいいよねぇ?』
背筋に悪寒が走る。そんな声だった。
『〈闇より出でよ、我が傀儡〉』
刹那、空中に妖しく光る隕石が無数に現れた。次の瞬間にはもう動き出しており、こっちへと迫っている。
「〈フロストウォール〉!!」
アルマが氷の壁を出現させ、
「〈アイソレイト〉!」
ストークラが灰色の結界を張り、
「〈ゲートキーパー〉!」
キンドラーが巨大な鎧人形を作りだし、
「〈サンクチュアリ〉!」
ブレストが金色の結界を何十にも張り巡らせる。
『そんなちっぽけな防御でどうにかなると思ってるんだね? 可哀そうに』
隕石がぶつかる――雨のように降るそれは、氷の壁を崩し、結界を破り、抵抗する鎧を打ち砕き、張り巡らされた結界を粉々にしてみせた。
それらが壊れる音は、妙に耳の中で反響していた。もしかしたら、誰かの心が折れる音だったのかもしれない。
ただ一つ分かるのは。
これ以上抵抗できる気がしないということだけだった。
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あと3話くらいで完結予定です。
そこからはカクヨム甲子園のために動き出します!
乞うご期待!
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