第2話 標語

 子どもの頃は母方の祖父の家に入り浸っていたのですが母の弟である叔父さんに懐いていてよく車に乗せてもらっていました。


 何処へという決まった目的はなく近場をドライブするだけですがそれが楽しかったのを覚えています。


 田舎ですが道は整備されており周りに家は少なく田畑が広がって見通しのいい道路が続きます。


 車窓から景色を眺めていると道端にある看板が目に留まりました。


 どうやら交通安全の標語が書かれているようです。


 私は声に出して読みました。


「若者よ お金落とすな スピード落とせ」


「違うやろ、お金じゃなくて命やろ」と叔父さんは言いました。


「いや、お金って書いとったよ、命に『お』付けるの変やんか」と私。


「えっ、嘘や」と言って叔父さんはUターンして戻りました。


「ほんまや、お金って書いとる」と言って笑ってました。


 私はおもろい事を考える人がいるなーと感心したのですが


「さすが貯蓄率のランキング上位県は違うわ、命よりお金やで」と叔父さんは苦笑いをしていました。


 そうなんです、保守的で有名な我がふるさとはとても堅実で質素倹約が美徳なのです。


 私からすると頭硬くてケチ、ゲフゲフ


 なんでもありません。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る