第16話 ギャルとサラリーマン(前編)
社会人は働かねばならぬ、たとえそれが
「いや、さすがにそれはない」
ついノリで口に出してみたものの、正月から仕事をする筋合いなんてない。
世の中には神職や郵便局員など、年末年始を
「とはいえ……少し、ダラダラし過ぎているか?」
自室でコタツにみかんという、フル装備で
部屋の大掃除はすでに終えた。
なにせクリスマスの連休に徹底的に清掃を済ませていたものだから、いざ年末になると、掃除は簡単なもので終わってしまったのである。おかげで年越し
あとは蕎麦を
「けどなぁ……最近のテレビ番組なんて知らないしなぁ」
テレビをつけて本日の番組表を確認してみても、どの局も何かしらの看板番組──そのスペシャル特番しかやっていない。興味をそそられはするものの、元の番組を知らないからには最大限に楽しめる気がしないのである。
「結局……恒例の歌番組を見るしかなくなるわけか……」
チャンネルを変えると、ちょうど『今、SNSで評判の』という肩書きがついた、俺がまったく知らない音楽グループが歌っている。良い曲だとは思うものの聞き
そんな時間を過ごしていた。
「いかん、時間が
人間、とことんすることがないと、こんな気分になるらしい。
「しかし……やることがないからこそテレビを見ているわけで……他にできることと言えば──」
そうして、ふと思いつく。
「
それは『大晦日といえば?』という着想から思いついた案。今から向かえばきっと、年越し直後にお参りができることだろう。やってみてもいいかもしれないが──
「さすがに一人じゃなぁ」
結局のところ、全てはそこにつきる。何をするにしても、一人だと張り合いが出ないと思うのは仕方のないことだろう。ああ無情だ。
すると唐突に、インターホンが鳴る。
ピンポンと間延びする音が聞こえてきて、戸惑った。
──え、こんな時間に誰?
さすがに夜も遅い時間だ。
宅配便が届けられるにしても不自然である。
──これはもしや……出ると厄介な
そんな危機感を覚える。
しかし今日は大晦日なのだ。
営業セールスだろうと宗教勧誘だろうと、お休みしていて然るべき日である。
そうなると心当たりがとんと思い浮かばない。
俺がそのように困惑の海に沈んでいると、またもやピンポンと甲高い音がなる。
──仕方ない。
俺は覚悟を決めて玄関へと
すると──
「あ、こんばんわっ、お兄さん!」
「こ、こんばんは」
ギャルだ。
ギャルがいる。
目の前には、やけにファッショナブルな服装に身を包んだ女性がいる。冬なのに生足を出すという意味の分からない生態を持つ彼女はまさしくギャルであり、そして──
クリスマスイブの日に出会った彼女──妻夫木ちよがそこにいるのだ。
「……どうしたの突然?」
俺としては、そう尋ねるしかない。
彼女は確か、冬休みを利用して実家に帰省しているはずだった。
それがどうして今日、俺の自宅を訪ねてくることになるのか。
その理由が分からなかった。
するとそんな俺の疑問を察してか、彼女は苦笑しながらも口を開く。
「いやさ……実は、クリスマスにお兄さんと別れた後のことなんだけど──」
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