第21話 出生の秘密

 海里は、思い当たる事があって、竜泉寺には直接帰らないで、自分ちの尼寺に行く。

 自分の部屋に行くと 本棚からアルバムを抜いて、開いた。

(第一幼稚園自体の誕生会の写真は…)

 と呟きながらめくる。

(これだ。

 9人の4歳児が写っている2L版の写真。)

 それをもって、茶の間の母のところへ。

 詰め寄る様に母に迫っていく。

「お母さん、これ見て」

 とアルバムを差し出す。

「このグループってどんな関係なの?

 ただ誕生日が同じなだけ?」

「ああ、この子達はねえ、それだけじゃない。

 あれは折鶴産婦人科だっけっか。

 同じ病室にいて、同じ日にみんな生まれたんだよ。

 満月の晩でねえ。

 みんな産気づいて。

 だのに、島崎君、川上君、小林君はバイクの事故で亡くなっちゃうし。

 リエラちゃんと、妃奈子ちゃんもあんな事に」

「そしてお兄ちゃんもでしょう」

 言うとアルバムをパタンと閉じた。

(これは同期の桜だわ。

 否、胎蔵界曼荼羅の同期だ。

 一緒に咲いたなら一緒に散らないと成仏出来ない。

 先に亡くなった6体が成仏する為には、自分と郁恵、亜蘭が死ななければならない。

 という事は次は、自分か郁恵か亜蘭。

 亜蘭は私を守るって?

 じゃあ私は郁恵を守らないと。)

「竜泉寺に行ってくる」

 言うと、脱兎のごとく走り出た。

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