第9話 『優波離様の秘密の手記』の続き

 翌日、又又誘い出すと例のラブホに行った。

『ネスト』という名前の部屋で、壁全体にビーバーの巣の様に木が積んであって、ベッドも木目調だった。

 ベッドにごろりとなって肩など抱きながらオレは言った。

「今日、バイクでツーリングしようか」

「嫌だぁ。又酔っちゃうから」

「だから今の内に酔い止めを飲んでおけよ」

 アネロンを取り出すと通常1回1カプセルのところを3カプセルも飲ませる。

「じゃあ、折角、ビデオもある事だから映画でも見てみるか」

 壁面には50インチ程度の大画面テレビが備え付けられていた。

 リモコンでVODを選択して映画を選ぶ。

「何を見るかなぁ。ユーミンづくしで『守ってあげたい』を見るか。薬師丸ひろ子の」

「何時の映画?」

「わからん」

「そんなに古いのあるの?」

「『守ってあげたい』はないなあ。原田知世の『時をかける少女』ならあるけど。

 まあ似た様なものだからこっちでもいいか。

 『守ってあげたい』はツタヤで借りてきて君んちのテレビで見よう」

 オレらは『時をかける少女』をしばし観賞。

「なんでこの映画、さっきから同じシーンが繰り返し流れるの?」

 とリエラ。

「何をボケた事言っているんだよ。

 時をかけているんじゃないか」

「あー、そうなの。

 あー、なんか退屈。

 ふあぁ~~」

 と大きなあくびをした。

 そろそろ薬が効いてきたか。

 それに退屈だったらそろそろいいか、と思って、オレは脱がせにかかった。

 ぺろーんと脱がすと、おなじみの梵字に腕輪タトゥー、へそピーにマンピーが現れた。

 梵字の間からつーんと突き立った乳首を指の根っこにはさみつつ揉む。

 さあ、やろうか、と、背中に手を回して、体を持ち上げて女性上位の体勢に移行しようか、と思った。

 が、その前に、

「そうだ、ユーミンを聞かないと。

 イヤフォンを出して『守ってあげたい』を再生して」

「なんで何時もあの曲を再生しないといけない訳?」

「そりゃあ、好きにならなくちゃ。八王子市民なんだから」

「私なんて豊田で日野市民なんだけれどもなぁ。まあいいけど」

 リエラはイヤフォンを出すと耳に突っ込んで再生した。

 そしていつものようにずるっと挿入すると、騎乗して、グラインド開始。

「はい、はい、♪you don't have to worry worry~」

 最初の内はこっちも腰を使ってリードしてやる。

 何時もはぺたんこ座りで騎乗位になっていたのを、両踵をこっちの肋骨のあたりに

乗っけて、両手をついて腰をグラインドさせてきた。


♪you don't have to worry   worry

 ブリッ  ブリッ  ブリッ  ブリッ

 くーふー いーしき しきそく ぜーくう


 mamo   tte    age    tai

 ブリッ  ブリッ  ブリッ   ブリッ

 くーそく ぜーしき じゅーそー ぎょーしき


♪you don't have to worry   worry

 ブリッ  ブリッ  ブリッ  ブリッ

 やくぶー にょぜー しゃりー しーぜー 


 mamo   tte    age    tai

 ブリッ  ブリッ  ブリッ   ブリッ

 しょほー くーそー ふーしょー ふーめつ


 セックスは7、8分で終了。

 コイタスの後、例によってシャワーを浴びに行く。

 バスタオルを巻いて戻ってくると、ベッドに横になった。

 まだあくびを噛み殺していた。

 オレは、じろりと横目で観察しながら、スマホでユーミンを再生した。

「♪you don't have to worry worry まもってあげたい~」

「う、」

 とリエラが尻を浮かせた。

「やばい、何故か漏れてくる」

「本当かよ」

「やばい、やばい、まだ感じているのかなあ」

 オレは内心ガッツポーズで、スマホを掴んだ。


 ホテルから出てくるとオレは言った。

「じゃあ、折角酔い止めも飲んだことだし、天気もいいので、ひとっぱしりして

くるか」

 バイクに跨るがると、いざ出発。

 ブゥーーーン。

 ホテルのある中町から16号線に出る。

 万町のマックの角を右折して、八王子実践高校を通り過ぎるとすぐに富士森公園が見えてきた。

「あそこで一休みしよう」

 富士森公園の駐輪場に止めると、二人は陸上競技場に入っていった。

 芝生の観客席に座り込むと、後ろ手に手をついた。

 都立高校の生徒が陸上競技をやっている。

 屋外用ポール式太陽電池時計を見ると、1時59分。

 十数秒後、2時になった。

 例の放送が、マイクが近いせいで、大音響で響いてくる。

「♪you don't have to worry worry」のメロディが木琴で流れる。

「あれ? 芝生が湿っていない?」

 言うとリエラは尻をうかして芝生と自分の尻を触る。

「違う。自分が湿ってきたんだー。なんで~?」

(キターーーーーー!!)

 オレは心の中で正拳三段突きをする。


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