第7話 『優波離様の秘密の手記』の続き 殺しの条件づけ

 翌日、バイトの金を出して、前回と同じラブホにしけこんだ。

 休憩2750円。

 バイトの金が減る。

『ピカソ』という名前の部屋。

「新宿の目」の様なアメーバーの様なオブジェが壁にあって、そこが間接照明に

なっている。

 オレはリエラとベッドに寝そべると、いきなり脱がせたりしないで、スマホを

取り出した。

「お前は、ユーミンを好きになるべきだよ」

 とオレは言った。

「なんで」

「お前の聞いているV系っていうのは、とげとげしていて、強迫性障害みたいな

感じだよ。

 ちょうど、うん〇が気になって、必死に手を洗っている感じ。

 自分じゃあ、自分の禁止は厭離穢土だ、とか言っているけれども。

 そんなのは、清潔な空間にいるからだよ。

 実際、シリコンっぽい教室で発作を起こしたんだろう?

 しかし、キャンプとか、野グソもやむを得ない状況に置かれれば、出す事に

主眼がおかれて、手につくかどうかなんてどうでもいい事になるよ。

 つまり、食うか死ぬかという給食おじさん的なものが禁止の理由になってくる。

 つまり、禁止が悩みを変える。

 だから、ユーミンというのはキャンプで歌っていそうだから、ユーミンを聞けば、

ハツやミノだけじゃなくてロースやカルビも食いたくなるよ」

「そーんなの戸塚ヨットスクールの理論だわ」

 オレは喋りながらスマホをいじくっていて、LINEを開くとリエラの名前に

タッチした。

「『守ってあげたい』をプレゼントするよ。

 今送るから。

 はい、送信」

「私、誕生日が近いんだよ」

「じゃあ誕生日プレゼントも用意しておくよ。

 もう曲、行ったんじゃない?」

 ぽろりんと、リエラのスマホが鳴った。

「あー、来た来た」

 スマホをいじくりながらリエラが言った。

「聞いてみな。

 案外いいものだよ」

 リエラはポーチからコードレスイヤフォンを取り出すと耳に突っ込んで再生する。

 曲に合わせて首を振っている。

「じゃあ、そろそろ行きますか」

 言うと、スカートやブラウスを脱がせた。

 胸元に梵字タトゥー。

 腕輪タトゥー、へそピー。

 パンティーも脱がすとマンピーが光った。

「今日は腰が痛いから女性上位でやってくれない? 聞こえている? 女性上位でー」

 リエラは曲をききながら、ふがふがと頷いた。

 前戯もそこそこにいきなり騎乗位にまたがってくると、ぬるっと入った。

 こっちの臍のあたりに、心臓マッサージでもするみたいに手をつくと、

♪you don't have to worryのメロディに合わせて腰を動かす。

 空気が入る角度でブチュウ~ブリッ ブリッ ブリッとチナラ(マンペ)の音がする。

 1曲終わらない内に果ててしまった。

 それでも膣液でビシャビシャである。

 リエラはバスルームに行くと股間を中心にザーッとシャワーを浴びた。

 戻ってくるとバスタオルを巻いただけの格好でベッドに腰掛けて、「紅茶花伝」

を飲みながらリラックスした。

「ドリンクだってなんでもいいって訳じゃないのよぉ。

 ダライ・ラマ法王が飲んでいたから、もしかしてスジャータに関係あるのかと

思って飲んでいるのよ」

 と能書きをたれるリエラの背中のタトゥーを見つつ、

 ベッドに寝ていたオレは、スマホを出すと、『守ってあげたい』を再生した。

 果たして今のセックスで条件付けは出来たであろうか。

 じーっとリエラの背中を見つめる。

 しかし、ピクリとも反応しなかった。

 これは、スマホのスピーカーだと音質が悪くてダメなのか。

 それとも、やっぱり一回セックスしたぐらいじゃあ条件付け出来ないのか…。


 オレは家に帰ってくると、さっそく、スマホで、梵天に報告した。

優波離:上手くいかなかったよ

全然効果がなかった

梵天:ただ、こすっただけじゃあ、条件付けなんて出来ないよ

優波離:そうなの?

梵天:そうだよ

 パブロフの犬だって、ベルが鳴ってから肉が出るというのを繰り返すとベルが

鳴っただけでヨダレが出る、という訳でもないんだよ

 ベルがなって肉が出るというのにビックリして、ビックリするとシナプスの形状が

変わるから、それで記憶になるんだよ

 これをシナプスの可塑性というが

 シナプスの形状が変わって、それで流れる脳内化学物質の質と量が変わる、

それが記憶の正体だよ

 だから、シナプスの形状を変化させないと

 それにはビックリする事が大切だから、ビックリしやすい状態、つまりシナプスが

変形しやすい状態にしておかないと

 それは、脳内化学物質が潤沢に分泌されている様な状態だから、何かドーパミンの

出るものを与えておくと条件付けしやすいんだがなあ

 ニコチンとかカフェインとか

 ニコチンとカフェインを大量に与えて、シナプスの先っぽに脳内化学物質が大量に

分泌されている状態で条件付けをすれば、ユーミンと潮吹きは結びつくかも知れない

のだがねえ

優波離:じゃあやってみる

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る