第44話 ダイナミックソード・えんど
「なるほど君たちはいつもの仲良しグループではないようかその場で共闘なんてしちゃって偉いナァ目の前にいる悪の大きさを理解できてるじゃないかハハハハナラ──ちゃんとした悪善のレクチャーしてあげるよ全員ていねいにィィ魔法ソード少女さァァんっ」
「ハンッ、悪役ならボコられる覚悟できてんでしょーーねーー!」
「覚悟や策ってのは劣ってる勇者側が手厚くするものだろ?あははははは善と悪の逆転したァァ悪善の王がヤルのは悠然たる悪!悪♡アーーーーックおおたのしいなあああ寄ってたかって殺しに来るヤツらをこうして
悪に向けて寄ってたかる激しいカラフルな魔法ビームの弾幕────
悪はその中を風を壊すような速度で踊りながら狂気の鎌を振り回し笑う、まるでそれが当たり前であるかのように悪は善を惹きつけその悪のチカラを堂々と披露しつづける。
そんな悪に──噛み付いた。
後ろに結んでいた銀色の長髪とカッチューの尾っぽは同じ様に切れてしまい……傷付き野生味を増したマリティーコアが入り乱れる弾幕の中を駆け抜けてインファイトを仕掛ける。
臆することなく歯を剥き出しにチカラを込めて、その折れずにいた確かな名剣で斬りかかる。
「ノーセンス、また君か」
「フッ…下手な演説は誰も真面目に聞かない、お前みたいないきすぎた馬鹿の相手なんて誰もしない、勝手に眼ぇ噛んで死ね!!!」
「ははは、開き直ったどうぶつは面白いことをいうな! 君が優れているのはそのお金がかかってそうな剣だぁーーーけっ♡勇者にもなれない、装備を剥がされてお役御免っ♡かわいそうなペットだね?」
「チカラを持つヤツはどいつも傲慢になる、いくらチカラを持っていてもお前みたいな自己中なヤツは死んでしまえばいいんだ、雨風がくるとも知らずふざけている内にずっと情けなく!」
「俺が自己中で傲慢? 死んでしまえだと? ハハハハハハハハさいっこうの褒め言葉だァァァァ!!! 俺って最悪だから♡そんざい♡」
必死の形相をつくり、剣劇に火花を爆ぜさせ、向かい纏わりついていたマリティーコアはそれでも──敵わず。
その悪のチカラは最悪、誇れる剣を握り締めるも重い重いまりょくに武装された鎌に薙ぎ払われた。
あしらうように笑いながら魔法ソード少女を1人叩き落とし、悪は次のチャレンジャーを待つ──間もなく。
仲間の魔法ソード少女が奮闘する間に冷静に練り上げられていた黒いまりょくは解放された。黒い円盤から虹色に発光し、黒く出力したレーザー。
1人の銀髪を遊び弾き飛ばした瞬間に、不意に遠方から照らされた──女の形をした悪は、太く迫った黒い熱線をその身に浴び染め上げられていく。
「えらくどうぶつが人の言葉を喋ると思えばやはりそっちが本命ね。ふっ、チカラ勝負ってさ──嫌いなんだよね、本気だしちゃうと俺がエラく勝っちゃうから!!! さぁ、これはそのドラヤキで返せるかな優等生の勇者!」
持てうる時間で練りに練り上げた出力のまりょくビームでさえ──鎌女が対抗して間際に発した黒い龍がスピードを上げ……ただの黒を噛み殺すようにより濃い邪悪な黒にし飲み込んでゆく。
「くっ、……これは────」
瞬く間に遠方から狙撃したブランの視界へと迫った、示現した黒龍の魔法を……押し負けていることは明らか──返せはしない。ブランは追尾する龍の魔法を寸前で判断し、独立浮遊する追加カッチューの黒い円盤へと誘導して身を捩りやりすごし避けるが、そのしなった魔法龍の尾に弾かれてしまい地へと激しく叩きつけられた。
次々と仕掛ける魔法ソード少女たちを次々とあしらうのは、悠然たる悪────ここにいる魔法ソード少女たちが今まで戦ってきたドレよりも強い、ドレよりも奇怪な悪に、それでも死ぬ気で示し合わせて繋ぎ合わせて残していった魔法の意図をよくもわからずよく理解して、──とめどなく仕掛けつづける。
灰色の馬が駆けてゆく、赤い鎧を身に纏い黒鞘から抜いた新しい剣を輝かせる──馬に化けたマリティーネアは妹ではなく真田ふれいをその背に乗せて。
「ははは馬で突っ込んで来たか赤い馬鹿っぽいの、いいよソレはおもしろい! 馬鹿だけど!」
おそろしい鎌を振るい切った風とともに赤と黒のまりょく斬撃が、走る灰馬へと向けて連射されてゆく。
馬は懸命に荒れ道を駆けて跳ねて、縦横無尽に飛んできた課せられた鋭いハードルを避けるように励むがやがてつかまり──しかしダメージを受けながらも不屈、その鳴らす蹄は乱れても止まらない、前を向く。
目立つ灰馬と赤備えの少女、その珍しいがおぼつかない……捨て身のようにみえる人馬のコンビの一騎がけに。
どういう感情か、笑い熱を上げていたのは鎌女。
「この天才に何度も余所見してくれちゃってええええ!!! 無限【バブルポップ】ラストぉぉ!!!」
健在であったビルの窓という窓から泡粒が吹き出る、隠れていた魚のように一斉に。
目を惹く一騎がけは見せかけ、潜ませ射られた水色の矢。
これで最後のまりょく量──多量の泡粒は集い、惜しみなく余所見をしていた悪のいる地へと降り注いだ。
「!?──── お馬さんが派手に登場したのはァァ視線誘導のデコイで水色が本命…ということを言いたい? まだこれだけの激しさで撃てるか計算違い、やはり
降り注ぎ止まない水色に煙る景色のナカを、
飛び跳ねた馬から猫へと姿を変えて
異なる灰色のまりょくを纏う両手は、──金色を打つ。
「ネアトイ合体魔法、【猫にシンバル】!!!」
とてつもなく響く黄金のシンバルが大気をとどろかせた。
水色を踊り避ける悪の耳元でうるさく、大きな灰猫は毛を逆立たせ、ヘナっとさげ閉じていた耳から赤を吹き出しながす。
その悪の嘲笑う踊りを止めるほどに、マリティーネアとマリティートイ2人は魔法の玩具のシンバルを通して、観戦しながらも研ぎ澄ませていた秘蔵の合体魔法を披露した。
(戦いは何も馬鹿正直な相手のカラダを打つダメージだけが全てじゃないの、耳ついてるならみんな聴くんでしょー! この残りスベテのまりょくを込めた一回が限度ッ。気分最悪で最高、鼓膜がイカれた……知らないわよっ、自分も壊れる程じゃないと頭のおかしいのには効かない)
「──ッ完璧な姉は──楽器の扱いもバッチリぃ!!!」
「んぐっ!? 魔法じゃなくて音ォ!?──」
鳴り響いたシンバルはカタチを保てずやがて崩れ落ち、至近距離でくらったとてつもない轟音に耳のイカれさっきまでの笑い顔を顰めた鎌女と牙をニヤリと見せた灰色の猫が向かい合う。
たとえ強大な敵であれたとえ当たらなくても耳があるものは塞がねば逃れられない捨て身の自爆音、止まった両者の足の間を────魔法ソード少女はスイッチを切り替え躍動する。
「でやぁあああ!!!」
横殴りに吹いた虹色纏う黒い風が突っ立つ悪を瞬く間に掻っ攫っていった。
二刀怒涛のラッシュ、使い慣れたMT2と貸されたエレガントソード。
雄叫びをあげるブランの連続剣が動きの鈍くなり反応の遅れた鎌女にささる。
怒涛の二刀まりょく剣のラッシュは対応する鎌捌きを──凌駕した。
「クソっ可笑しな猫騙し、上がったこのスピード…出てたか? ──限界値をッ隠していたわけか。ハハハハしかしこの程度なら俺は俺の身体をコントロールされはしない、悠然たる悪には浴びる剣のキレ味も心地よさしかないものだ!!!」
「悪は悪、何をいっても何であれ揺らぎなくとても嫌なもの──ハッ!」
火花を散らす速度を上げた剣劇のさいごは、地を一気に滑り宙に三日月を描くように放った虹色のローファーが悪の腹を蹴り上げた。
「!?グギッ──足癖の悪い優等生がッッ!!」
火を灯し合うように────魔法ソード少女たちは躍動する。
剣はなくても盾はある、傲慢さはいらない役割の中で怒り全力を。
ひび割れた獅子の盾は、存分に呼吸をし唸る。
「まりょくゼンブッ【ウインドコア】情けなく死んじまえっ!!!」
予期せぬ渦巻く突風が、宙で引き攣り笑う悪へと真下から吹き上げた。
「ンギャっ!??」
傲慢な悪にこれ以上考える間も笑う間も、マリティーコアは許さない。
情けなく激しく天へと昇るありったけの魔法の風に巻かれている最中に、同じくその吹き荒れるナカにやってきた。
「これは魔法ソード少女を舐めた罰、ふれブラ合体魔法──」
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
『合体魔法? マリティーネアそれは、なに?』
『正しくは役割分担、わたしたちネアとトイにはできるのよ。時間がないわ簡潔に、魔法ソード少女の握手と原理は一緒って言えばわかる? わたしたちは遠隔で出来るけど一朝一夕、マリティーブランあなたは無理、だから握手よ、今握ったこれが設計図でヒント──それだけ安全は保証しないけど威力だけは保証済みね』
『たしかにコレは……できなくもないと思う。やったことはないけど──私がコレをコントロールしてサークルスイッチのように元あった近いイメージに完成させる。あとは真田ふれい、あなたが出会ったときより手を貸してくれればだけど、──魔法ソード少女として』
『…わかったマリティーブラン! 魔法……ショード少女として──!』
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎
⬛︎
(直前まで手を繋ぎまりょくを一体化ではなくそれぞれに交換貸与させて、──クロス!! 真田ふれい…ふれい、できているからそのまま私に任せて)
(マリティーブラン…ぶらん! ん、まかせる──!!!)
ブランの右手は赤く、ふれいの左手は黒く。魔法ソード少女と魔法ソード少女は手と手を繋ぎ合わせ、下から伸び吹く突風の後押しを得て、螺旋しながら混ざり合い上りゆく。
ついに──目指す悪へと追いついた。
「下からふたりでかァァァァ【黒雷】!!! そんなに会いた──」
「【ダイナミック】っ、」
「【ソおおおおおおど】っ、」
悪も惜しげもなく、魔法ソード少女も惜しげもなく。
全力のまりょくとまりょくは出会った風の彼方で、ぶつかり合う。
しかし、向かう方向は正反対────
邪悪なる黒雷を纏う鎌に、二つの刃が交差し向かう。
ひとつで夢見る強烈な光を求め描いても、
ひとつで燻るチカラの振るい方がわからなくても、
「「【・えんど】!!!」」
二つ合わせて、悪を斬り裂き爆発する。
黒雷を斬り裂き、後押す風にしたがいノリ、立ちはだかる悪の鎌を突き抜けた。
黒い剣と赤い剣は混じり合い勇ましい虹色と化ける。
天空にまるく爆発した虹色の光景に──親指をたてて魔法ソード少女たちは高まる鼓動で祝福する。
〝ふれブラ合体魔法ダイナミックソード・えんど〟
悪善の王を黙らせたその剣は、ただひとつの為に振るわれた────────
魔法ソード少女として
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