第40話 炎と氷のジレンマ

マリティーコアと真田ふれいとマリティーポップ。何の縁かまたも出会った3人の魔法ソード少女は手を合わせて謎の白スーツのストローを攻略していった。


先輩魔法ソード少女たちに教えられ少し学習したふれいは敵を釣るような動きを見せる、剣を片手に真っ直ぐ向かったと思えば飛んできた氷の薔薇を上手く横に回避した。


そしてその生じた隙にマリティーコアが白スーツの男へと斬りかかった、しかし男は近接戦も苦にはしない。両手に氷のソードを生成し、膂力で勝り寄ってきたコアを弾き返した。


弾き返したと同時にコアは蠍の尾から紫の針のビームガンを垂れ流しただでは退かない。


男は華麗に氷の上でステップを踏みコアの放った最後っ屁を見透かし避けたがまた剣を構えステップを踏んだ方向の真横から接近してきた赤備え。


「【ミニフリーズ】!!」


勢いよく踏みつけた、必殺の【ジェミニフリーズ】よりも弱い威力の氷柱は隆起し邪魔をする──真田ふれいが自分に斬りかかるのを慣れたように阻止した。


しかし、本命は右でも左でも前後でもない天から降り注いだ。


泡の雨の爆撃が黒髪白スーツの男をズラしたズラした焦らしたここぞのタイミングで襲う。


「上からきたかクソ野郎!! 先にコイツ、──らを片付けたいところだが、赤猫の爆弾がチラチラと視界に邪魔すぎる。クソ、コイツらまさか……」


回避されど2、3発。揺さぶり続け確実に決まったマリティーポップのバブルポップ。


白スーツの男は辛く逃れながらも、チグハグな魔法を使う魔法ソード少女たちのまさかの連携力に勢いを飲まれつつあった。



「あれはイレブンの…たしかマリティーコア、イレブンの中でもどのような戦い方もできるなかなかの実力者(完璧な私ほどじゃないけど)。これで3人、役割的には前衛が2人、万能な壁と壁兼爆弾、後衛にまりょくコントロールの上手い泡の砲手。パズルのピースが無理矢理捩じ込んでハマるように隙が無くなったと言えるわね。私が敵なら……鬱陶しい泡の方をどうにか先に潰しておきたい。でもソレをさせないように分かってか上手く引っ付いてくる芸達者なマリティーコアの相手をしつつ、あの威力…さっきから見ているとまりょくビームも撃たない…ガチガチのインファイト特化? でも一撃でKOもあり得る爆弾娘とやらになお注意を割かないといけなくなる。それに一直線だけじゃなくさっきより動きが良くなったように見える、純情娘が都会のブラフを覚えたなら────大勢は決まったわね、予想以上に連携できている…魔法ソード少女それもイレブン級が3人、舐めてしまったからかしら? ふふふ。私たちほどじゃないけど、初対面それとも仲間? 中々味のある戦いぶりをするわ」


マリティーネアはそのふわふわな猫毛に眠る妹をあたため抱きながら、のんびりと戦況を屋根上から分析しつつ眺めている。



「よーし寿司屋もいい感じよ! やればできるじゃーん!」


「チッ…いい身分のダサパーカー、後で覚えているのね!! 赤太郎はそのままさっき教えた2択を継続しなさい。ヤラなきゃイクラはお預け」


「んーー、まだ2択? うんわかった、こあ!(こぼれるイクラ丼!)」


集まった3人の魔法ソード少女たちはまた荒れた街を散開しながら効果のあった3人での作戦を継続している。


敵の男に動きを読ませないようにコアはふれいにはブラフと本物の2択の魔法を覚えさせ、あとは数の利を活かして片付けるのみであった。


予想外につよい魔法ソード少女たちに徐々に追い込まれつつある白スーツの男はまた氷のネクタイをひき締めながら考える。


(だが分かったぞ。この赤猫は本当に呪われてやがる、俺がこの忌々しいクールなチカラの大技の連打ができないようにおそらくあの馬鹿げた威力の炎魔法を打ったあとは……身動きが取れなくなる類のジレンマ持ちだ。まりょく切れを待ってもみたがブラフだけではなく本物も混ぜてきやがる、省エネでやってる戦法ではねぇってことだ。だがあと4発は撃てる〝準備万端〟の【ジェミニフリーズ】でおそらく相殺は可能──これをあえて受けるあの単純さならぶら下げたチャンスにはブラフを解き突っ込んでくるはずだ、そのあと直ぐに【マザーローズ】×20程のチカラを腕に束ねて【マザーローズソード】にアレンジし串刺しにすればいくら丈夫でも十分ノックダウンは可能だ。他のうるさいガキを先に倒すのはやめたぜ……手痛い1発を食らわせてそろそろ消耗したであろう剣を壊して、他はいらねぇコイツだけでも手土産にする────)


泡と氷と鵺と元気な爆弾、激しい魔法合戦はまた再開され、データゾーンを戦いの色に彩っていく────


「アイツまりょく…? 馬鹿、ミエミエの罠だそれは! 赤太郎突っ込むな!!」



「ぬぇっ? んーー…んっ! 【ふれいぼむ・えんど】!」

「ハハハ…この姿はイヤになっちまうってもんだ──【フル・ジェミニフリーズ】!!!」


敵味方、互いの思惑に誘い誘われて────


己の限界を溶かし真の姿を見せた氷皮の怪物は、全力を撃った。


これまでより桁違いの氷の魔法とつよい炎剣の魔法はせめぎ合い、やがて壊れることなくその赤と青白の色が混ざり合う。


出来上がった大きな大きなまりょくドームにぶつかり合ったふれいと男の2人は呑まれ、コアとポップは眩しい威力の塊であるそれに近寄ることができずにいる。


「魔法と魔法はその威力が相殺するとき、術者同士にダメージはほぼ入らねぇ。つまりここは俺とお前だけの派手に創作した世界、虫除けにさせてもらうぜ。おいオマエそのジレンマは辛いか? 今までの人生を清算したいほどに忌々しいか? ふ──【マザーローズソード】ハハハハハハ!!!」


真田ふれいの剣はさっきの大魔法の撃ち合いでついに限界を迎え壊れた。


不運続きだったはずが何もかもが男の思惑通りにハマり、好転。


そして抜け目なく男は次の魔法をその利き腕に宿した。腕と一体化した美しい氷の薔薇の剣。


不気味な氷の面で男は笑う、



何も発さず折れた剣を構えたまま、ぼんやりと立つ赤備えの少女へと、チェックメイトのイチゲキを────



だが、視界に迫る少女が笑った。さっきの逆のカタチであることを──男は寸前でその目に入った新たな剣に気付けど、その僅か寸秒での判断は間に合わず。


地面から蠍の尻尾がにょろりと出た。

それが魔法であるのかなんであるのか、ただエレガントで豪華な剣をしっかりと巻きつけて。


⬜︎真田ふれいはマリティーコアのエレガントソードをしっかりとその手にした。


ダレの筋書き通りの……新たな剣を手に入れ真田ふれいは硬直のジレンマを解消し、再始動した。


「おかわりいいいいい・」

「ナッん!??」



「イクラ【えんど】!!!」



突き刺し合った、氷の薔薇剣と紅く燃える豪華な名剣の切先は触れ合う。



爆発したイチゲキ────────。

勝負あり。

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