第23話 vs…

なかなか決着の明かされない──黄金と紅がマーブル模様に混ざり合う、爆炎ドームを12の目が見つめている。



「ちょっとどうなってんのよこれ…!!! まさかヤラれてんじゃないでしょうね……」


「まんまるキレイですね、たこ焼きとべびーかすてらを所望します」


「──くる……熱いまりょく」



一層膨らみ紅く赤く一色に染まった炎のドームは、勝利を確信させるカラーを────見守る6人の魔法ソード少女たちにこれでもかと、魅せつけた。








▼▼▼▼▼▼▼

▽▽▽▽▽▽▽








やがてスベテが明けていき、



陽炎に揺らぎ、陽光にキラリと輝く秘刀名刀の切先一点。



バケモノとの勇ましい斬り合い勝負が浮かび上がりそうな、その格好で──



円い焼土にぽつりと立つ硬直少女の元へと魔法ソード少女たちは駆けつけた。



「おつかれーーーい、さなだふっれーーーい!!!」


いち早く駆けつけたマリティーポップに、置物の少女はあつい頭をぽんっと叩かれた。

そして曲げられない首と視界前方右すごく近くに現れた、もう随分と硬直少女の見たことのある顔をした水色の元気な人。


「なによその顔、ん──サムズアップも出せないって? あはははあんた相変わらずカラダかったいわねーー」


次々とつぎに、左から覗き込んだ別の深い青の瞳をした、派手に汚れたメイド服。


「あなたはデスネの記憶にない魔法ソード少女ですね、しかし今回しっかりとデスネのこのかわいいお目目に焼き付けました、査定、期待していてください。ふむふむ、動けないと──大丈夫ですか? ドーーーーーーンしてお体、ぐるこさってます? わかりました、追加で100錠お電話しましょう。ご安心、お薬ゼリーでつつむヤツもご用意」


「良い加減その謎のぐるこさから離れなさいよ、(ヘンなの飲まそうとするんじゃないわよ)にしてもキレイに跡形もなくやったわねぇ、あのしつこい象野郎が消し飛んでるじゃないのハッハッハ!! ま、ワタシの小技サポートお膳立てがあってのあんたの馬鹿げた大魔法だけど? そこんとこわかってんでしょうねぇ?? 〝わたしのまりょく〟さんっ?」


「いえやはり客観的な、デスネの視点カメラから見たマリティーポップよりこの赤いカッチューの魔法ソード少女の子の方が今回の仮称エレファントマン討伐に関するスコアは浴びせた一太刀とはいえ〝上〟といえます。この赤カッチューの子はマリティーブランと並び──」


「べらべらうるさいわよ! わかってんのよそんなこと! あははははま、今回はとくべつ美味しいところは譲ってあげたのよ」


「いえきゃっか──」


「もういいっての! あんたは客観的の神様なわけ!」


「ですね」


「ってなんでよ…もういいわただでさえ疲れてんだから勘弁して…。そうね…その客観的の神様とやらでアイツ、象人間! エレファントマンはなんだったのか推測して教えなさいよ」


「えぇ、アレは────わかりません、客観的に」


「はぁ? ってそりゃそうよね、ぐるこさってないワタシも意味不明だしねぇ」


「もういいかしら、真田ふれいさん──ん、まだ反動の硬直で動けないのね? (硬直するほどの威力…アレの炎すら最終的に凌駕した炎魔法……この子は、限界点の超え方を自然と知っているのかしら……いや、それよりこの刀は──)」


ホットミルクの瓶をふたつ、手持ち静かに3人の会話に割り込み現れたマリティーブラン。

ほどほどのはなれた距離に、真っ直ぐとふれいと正面に向かい合った。


「ってあんたもナニ飲ませようとしてんのよ! それってまた記憶がトンじゃうヤツでしょ」


「?」


「はてなって? ちがうの?」


キョトンと瓶を手持ち立ったまま、ブランはじぶんを訝しむポップに短いため息をふかせた。


「はぁそんなことするわけないわ、民間人ではない魔法ソード少女に」


いつものわらわないポーカーフェイス、相変わらずの表情をするが放った言葉は嘘ではない。ブランが言った魔法ソード少女というワードに、ポップはすこし目を見開いた。

ブランのいう魔法ソード少女には色々な意味が込められると思われ、この場合────


「魔法ソードしょう…ま、そうよね! でもあいにく、ほんじつのMVPは絶賛カラダがガッチガチに硬いからねぇー、──もーらい、何よその顔? あんたの奢りね」


「デスネも──もーらい、イイカオです、あんたのオゴリネ」


「……」


ポーカーフェイスの手持つあたたかな瓶はふたつ、かっさらわれた。

黙して突っ立っていたマリティーブランは右髪をゆっくりとかきあげた。


「ナガヤマ、追加で──5本。さっきの自販機に転送して」


『りょ了解しました? 本部への転送にはもう──し──ります』


「わかったわ、少しこのデータゾーンを調べておくから急がなくていい、あと丸いのが焼けたわ」


通信は荒れており魔法ソード少女のまりょくを繋いでの本部への転送にはしばし時間がかかる。

いつものルーティン用の瓶を取られてしまったマリティーブランは自動販売機のあるポイントへとローファーコンベアで滑走しながら向かった。





かたまる、ほんじつのMVPの元へと────その歳を感じさせない緑のブレザー学生服、きわどい赤いチャイナ服、フリフリかつシックなシノビアイドル衣装が見えてきた。



「おーいユキムラちゃん、ナイスアンコール&魂! かくれ従姉妹のカタナお姉さんだよ、遊びにきたよ♡」


学生服の金髪お姉さんにいきなりお茶目な手銃とウインクでカラダを撃たれた、真田ふれい。


「だれでだれだよ…似てもいねぇ……。よっ! いきなり馬鹿がふざけてすまねぇな、大丈夫か(ん?どことなく真田の赤備え?)幸村…じゃなくてお前?」


ふざけた金髪を横に押しのけた、そのまた金髪チャイナ服のお姉さん。メガネは戦闘で壊れたので現在は裸眼。それでも変わった得物のツルハシを肩に置き、属性過多である。


比較的しっかり者の赤いチャイナ服に同じく赤のカッチュー姿は簡易なジェスチャーとキラめくその瞳で答えた。


「んー。──!」


「サムズアップっておい…良い笑顔だな。ってお前らはやらなくていいんだよ」


「シャッキーーン! byカタナ」


「しゃきーーんっぺ! byッペー」


「な、なんだ…このくそ長い親指立ては……──って私を囲むなおい!?」


1人ツッコミに夢中なツルハシは、長々と親指を立てるサムズアップのトライアングルに囲まれてしまった。


かんじる謎の連帯感と疎外感と良い笑顔に、囲まれてしまった。





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▼ハル本社▼にて



「ひのデータゾーン10にて、VIPがや、や、ヤラれました……」


暗い室内はざわつく。機器を操作しモニターに映る砂嵐混じりの映像に、声を驚かせながらも男はしっかりと事実を報告をした。


そして男は席からおそるおそる振り返り──顎にてをやり立つ黒スーツの顔をうかがう。


「ふむ、どなたがやられたか」


「この解析不可のまりょくログは……乱入したアグニ様です」


下の男はすぐさま調べ報告する、突っ立つ黒スーツは細めかんがえていた目を見開いた。


「……素晴らしい、素晴らしい、素晴らしい!」


黒スーツは拍手はせず、静かに噛み締めるように同じ言葉を吐き頷いた。


「たしかに素晴らしいことですが、これはいささか早すぎる問題では…数々のVIPの出資でこの大規模なシステムは成り立っていますので、ルーキーの魔法ソード少女たちがVIPの一席であるアグニ様を倒すほどの実力があるとなると」


「ははははは何も問題ではない、アレはセカイを盛り上げるための際どいスパイスに過ぎん。そういうのがお好みの方がいて今まさにひとつ可憐な魔法ソード少女たちのもとに敗れただけだ。忘れたかストローと魔法ソード少女たち、そして我々もおなじデータゾーン──天秤の上にいるということを! 君はいささか…足りてない! 足りてない! 足りてない! 大規模システムのアップグレードだけではない肉の意識改革が」



「私は待っていたのさ正義と悪の…また煮詰まる、燃え盛るデータラインを賭けた新世代のエンターテイんメントを!!!」


黒スーツから目一杯前方に伸びた右手はびしっと指を刺した。


荒くざらつくモニター、


7の群れる個性豊か実力たしかな魔法ソード少女たちを────

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