第22話 vs象人間❻

覚悟と最後だけを決められた作戦は開始された。


マリティーブランと象人間はさっそく衝突し剣と拳を交わし合い、


「【バブルポップ】!!」

「【バブルポップ・るん】」


1番つよい魔法ソード少女を単騎で敵にあたらせて、左右から隙をつき示し合わせたような援護射撃を開始。


マリティーブランの仕掛けたタイミングに合わせて泡粒群が左右から発射され青くアオく豪快ポップにダメージを与えていく。


しかし、おかしい。


マリティーポップが分身したかのような攻勢、なにかアイデンティティが損なわれた気がする光景に、


敵越しに向かい合ったメイド服にラムネ色のパーカーは声を張り上げた。


「私の大魔法なんだけどおおお」

「すみません気に入りました。あわあわ淡い美少女デスネにピッタリ大魔法、ドーーーーーーンなアレより断然ぐるこさりません、えぇサイコー。おそうじおそうじるんるんるん【バブルポップ・るん】」

「ふざけんなあああ偽者おおお!!! パクリいいいい!!!」

「はい、たしかにパクリは事実ですが客観的にみた私の方がまりょくの質が高いと思われます。ですのでこの場合、私が新たに【バブルポップ・るん】の本物になりますねですね、質──あわの質アップグレード」

「はぁ??? ってその・るんっての辞めなさい!!」

「本家よりつよい──るんるんですね、はいあわわわー」

「あつかまああああ!!! 本家の【バブルポップ】!!!」

「デスネの【バブルポップ・るん】」


まさかのコピー、真似られパクられてしまったマリティーポップの大魔法にしてマリティーポップがマリティーポップたるゆえんの【バブルポップ】。


競い合うように、怒り、るんるんと…剣先から発射された泡泡は囲い込んだ象人間に向けられて、マリティーブランをタイミングよく援護していく。




「そのるんるんを止めるのはどうやるのですか? 私るんるんしかまだ教えてもらってません、種明かしタイムを所望します」


「本番の殴り合いでええ他人の技のコマンド学ぼうとしてんじゃないわよ! って避け──」


「わっと? ざんしんなエスコート──」


ぐいとあり得ないほど伸びた象鼻にメイド服の腰を巻き取られ──デスネはそのまま掴まれた左地点から右後ろへと一気に投げ飛ばされた。


とても勢いよく緑の野を疾走しながらデスネの姿はひとり遠くなっていく。


しかし味方がやられたその隙でさえ魔法ソード少女は逃さない。


マリティーブランがローファーコンベアⅡのパワーを上げ滑るように急接近し、怒涛の攻めで斬りつける。


(やっぱり色々試して体をまりょくで纏っても、限界点が溶けるような感覚はでない……いやそれよりこのまま押し斬る!)


その剣を止めない、刃を連続で斬りつけ、


描いた虹色の剣傷が次々とまりょく爆発していく。


黒く染め上げられながら体が爆発し思うように動かなく吹き飛んでいく象人間はやがて──


置きバブルポップ、事前に敷かれていた大量の泡のクッションに到達した。


「本家はちがうのよ!!!」


マリティーブランはただ隙をついて攻めただけではなくよく周りを見ていた、そして邪魔にならないそれを利用した。


重なり合う黒と水色のまりょく爆発が引き起こり、辺りの視界はとてつもなく濁っていく。


4人はこれを利用した。


濁った煙幕の中を縦横無尽に攻めていく。


「プラン通り──ですね」


「どこがよっ! ッッぁあああ!!」


魔法ソード少女たちは次々と攻め手をやめない、まりょくを宿した剣で象人間に対して考える隙も与えないほどの怒涛のインファイトを仕掛けていく。


しかし象人間のチカラは強大強固、左右から挟み込んだ青い刃もその石腕で受け止め、両拳に込めた黄金のまりょくを爆発させ威勢と仲のいいデスネとポップを弾き飛ばした。


しかしやはりマリティーブランはまたもや攻撃と攻撃の間に数の理を活かして隙をつく。


ローファーコンベアで急加速急襲した黒い刃はその空いた背を見事貫き、勝負ありと思われるイチゲキが入った。


後はこれをまりょく爆発させれば硬い象人間とてただでは済まない、そんな一刺に。


ブランが見上げた象顔はニヤリとイヤに笑った。


内部から練り上げられる膨大な黄金のまりょくは自身の身を貫いたMT2規格の刃を熱し燃やしながら──ぐにゃり…へし折った。


燃え尽きていく刃──柄を放し、すぐさま蹴りをお見舞い。


だがそれは一歩遅れた苦し紛れの判断、抵抗、はげしくまりょくは流れ、火花を散らし削るが離れぬ石の手に受け止められたローファーコンベア。そのまま鞭のようにしなる象鼻はフラストレーションを爆発させるようにマリティーブランを打った。


打つ、


打つ、


鞭打つ。


鞭打つ度に爆発する黄金に弾き飛ばされていく、決死の剣撃も象人間の堅牢さにあと一歩及ばず……だが──はじめからマリティーブランは〝よく働いた〟だけであった。


目指すところはひとつ、期待と信頼。


自身の信ずる魔法ソード少女への期待と信頼。



地面から急襲した地下深くに眠り生きていたガトリングサークルスイッチは、象人間を下から襲った。


縦向きに高速回転し、象の皮膚を抉っていく。


並々ならぬ火花は散り、両手で白刃取りするように黒く荒ぶる円盤を挟み込む象人間はあわてて抵抗した。


押さえ込む、


おさえこむ、


象人間の凄まじいりょりょくに回転がやがて緩やかに────


再び空いたその背に、その刃がとどくのは十分であった。


「【ふれいぼむ・】」


「えんど!!!」


作戦は成った。


ここにいる全ての魔法ソード少女たちがその一太刀に向けて懸命に動いていた。



「ペネロペ!」


「もうやってるっぺ」


喉を癒したッペーネロッペーはその声をノセて赤備えの目立つ彼女を激励する。

手持つマイクソードから届いた歌声が耳に、赤熱するMT4規格の刃に届き、真田ふれいの込めたまりょくは倍に膨らんだ。



勝手に支援、勝手に援護、オーデオの魔法ソード少女たちからも赤備えの少女に託されていく。



必死にお膳立てされたあたためられていた少女の刃は届いた、


しかし含み笑う、ソレを鼻で笑うヤツがいる。


象鼻は尖り、石色の剣となり、あり得ない可動範囲で真後ろを振り返った象人間は少女の刃を受け止めた。


そして──爆発する紅と金色。


混じり合うようにされど反発するように、


この並々ならぬ馬鹿げた爆炎のドームの支配権を競い奪い合っている。



「んーー…!!!」


「僥倖、怠惰、憤怒…!!! 我アグニ炎神にかわりその愚かで未熟な貴様の火を消す、敵わぬと知れ身に余るものを着飾る偶像アッチャーーーー!!!」


象鼻剣と魔剣は鍔迫り合い、

狂気を孕みワラう象赤眼は、いっぱいいっぱい食いしばる贋作の赤目に容赦をしない。

何かを宣ったと思えば今までより勢い狂気熱量を増し黄金にかがやく象鼻剣は対抗するMT4規格の剣をへし砕いた。


鼻を振り上げて勢いよく少女の剣を砕き、黄金の熱に煌めく象人間は全てを込めた剣を失った赤備えの少女を見下した。



黄金と紅の混ざり合いじりじりと膨らみ続ける、熱い炎のドームの中で何が行われているのか。


目を凝らし、汗と剣を握り、見守る魔法ソード少女たちには────




腰に携えた鞘の中をカタカタと震えだした刀は、いつもとは違う。

膨大な炎のまりょくにアテられたのか、吹くカゼに震えたのか。


オーデオの魔法ソード少女であるカタナは、震える緑の鞘からソイツを出してあげた。


「おい、ツルハシ。お前ってなんでも一瞬で運べるんだよな。こいつをあの炎のドームライブの中にいっちょ運べ、魂が呼んでやがるぜ」


「はぁ? なんでもは運べねぇよ、こんな時に急に無茶を言うなよそんなの燃えておしま……おっ。わかった! お前の言う通りにやってやるカタナ! ソレかせ」


「あぁ、ロックで頼むぜ!」


「意味わかんねぇよ……でも、なんか良い石持ってんじゃねぇか、(くくりつけて…いやもうブッ刺せ)いくぞ【バーンルビー】──」


何かの存在に気付き目標を指定し、ツルハシの宝石魔法は強引にアレンジし唱えられた。



新調された赤いカッチュー一体型のウエストポーチの元へと、──届けモノはとどいた。


珍妙な宝のある場所へと宝は一瞬にて運ばれる。


砕け散るMT4の刃。握られた柄は役立たず、欠けた希望と驚く少女の眼に、


ルビーの宝石は砕け、突き刺された剣はあつらえられたように真田ふれいの目の前に顕現した。



『アンコール、魂漏らしてけ!!! っぺ byカタナ&ッペー』



どこからか聴こえてきたお茶目な声に、リクエストされ──硬直したふれいは役立たずの柄を投げ捨てた、




「ん! ふれいぼむ・えんど──」


「・あんこおおおおおおお!!!」




一瞬の間にバトンタッチし、手にしていた剣は秘刀名刀緑蜜、名のある剣のチカラを借り、もう一閃。


空と地、鍔迫り合っていた刃は入れ替わり、


空から振り下ろされた絶命の輝きを放つ象鼻剣に、


地から振り上げられたもう一つの刃。



大魔法の紅、二閃。



豪快に裂かれた象人間の腹に、孕んでいくまりょく量は極大膨大──




「【・えんど】!!!」




硬直する身を動かす魂のアンコール&えんど!!!



黄金と紅の混ざり合う大きなドームは、マグマのように粘り、また一気に膨らみ広がっていった。


紅くあかく全てを呑み込んだ。邪に燃える黄金さえも────

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る