第19話 vs象人間❸

数の上では2対1、後手後手には回らずインファイトで象人間に仕掛けたマリティーブラン。


まだまだ動き剣筋のキレ味鋭く、まりょくを纏わせたMT2規格の剣で迎え打つ石拳と競り合う。


ひとりでも強靭、高い戦闘能力を誇るオールラウンダーであるマリティーブランが象人間を相手どるうちに、


「【バブルポップ】!!」


マリティーポップが狙い澄ました横殴りの泡粒群の魔法が的確にダメージを与える。



水色の爆発に呑まれた象人間はまだ荒ぶる戦意沈まず……今度はマリティーポップをターゲットにし走った。


そしてまた【バブルポップ】の泡を自身の前方に敷き待機させ防御を固めた。寄る敵にはこれが有効、マリティーブランに頼らずともまりょくがつづく限りの防御を固める。


「フッ、象頭石頭ね。私の大魔法は小技もカンペ…ってそのまま突っ込んできたああああ!!?」


その身を爆破されようがものともせず、象人間はそのままスピードを殺さずマリティーポップ目掛けて迫る。まるで痛みに恐怖心のない人間のように──


生意気な小技を泡へとかえし台無しにするタフすぎる象ボディ、マリティーポップの敷いた誤算に対応が迫られる。


(くっ、準備運動なしの大魔法の連続急速消費はよぶんにカロリーいるのよッ…!! どうせおスカしお叱りされるんだからここは手堅くッ)


握る剣に水色のまりょくが込められ──


そのとき黒い剣は連射された。

横からはげしく突き刺さる魔法の黒剣は、ガード体制を取った右半身の右拳に溜めていたまりょくと混ざり合いバグを引き起こす。


マリティーポップを砕かんと迫っていた右拳の並々ならぬまりょくは暴発、黄金に爆破され象人間はその身に思わぬ自爆をしてしまった。


「防御を敷いて安心しきってはダメ、邪魔よ!(ガトリングサークルスイッチやりのこしていたモノは成功、単純なまりょくビームじゃないビームソードならば突き刺されば象人間だろうとまりょくコントロールできる…よし)」


「あ、あったぼーよ! でほんっとこいつなんなのおおお! ってあんたなにそれ!?」


迫る選択肢は己の脳ひとつではなく、マリティーブランの隠していた薄い円盤状の追加カッチューであるガトリングサークルスイッチの威力に救われた。

マリティーポップはまたすぐ狙われないように抜け目なく後ろへと一度さがった。


「ストローと言いたいところだけど…敵にはちがいないわ、魔法ソード少女の!」


「そうねっ! あんたも貧乏くじばかりこれに懲りたらもう慈善活動なんてやめたらァ」


「私は魔法ソード少女、マリティーを正すためにここにいる」


「はぁ? 学校の先生みたいねぇ!」


「ちがう、私はあなたの学校の先生じゃない?」


「知ってるわよ! ってそんな小ボケよりどうやったらこのバカ硬いエレファントマンに勝てるか教えなさいよ」


「魔法ソード少女なら勝てる」


「あんたまじでそれしか言わ──」


「下がりなさい!」



作戦を立てる暇もなく、リアルタイムに長鼻から呼吸をする敵は、嫌な予感をくしゃみした。


くしゃみし放たれた黄金の弾丸景色に急ぎ、

マリティーブランは前方へと配置した黒円に専用の特殊形状の剣をぶっ刺し魔法を行使した。


「──【アグニ】」


「【ガトリングサークルスイッチ】はああ!」


象鼻から放たれる黄金の連続弾を相殺するように円盤から連射される黒い剣。


赤目の象はワラい、黒髪の美少女は食いしばる。


黒と黄金はせめぎ合い、異なるまりょくとまりょくは相殺し合い小爆発をいくつも引き起こしていく。


赤目の象顔はさらにその嫌な目を細め、やらしい鼻を目一杯前方へと突き伸ばした。

動作に呼応するように、パワーを上げた黄金の炎はやがて1束となり──連射されせめぎ合っていた黒が熱い黄金にかき消されていく。



たたかいの分水嶺とはこのこと。

マリティーブランと象人間の真っ向勝負の行く末を見守っていたのは背中を見ているマリティーポップだけではなく。


「おい、ペネロペ! ここだ! やってきた勝負時だ!(使い道のない私のまりょくはさっきペネロペに補給したから一度は激励がイケるはずだ)」

「無茶、まだ喉が本調子戻らない…っぺー。んんん…んっ」

「ぬえええちくしょう! まじかよ!」

「あ、風邪か? 飴ちゃんいる?」

「いる。ぐれーぷ味?」

「いんや、黄金飴」

「えーばばくさいっぺー」

「はは、どちかというとじじい?」

「ってお前持ってるなら最初から! ってはやく舐めろペネロペ! 何味でもいいだろうが! じじい味でもばばぁ味でも!」

「あー、悪ぃツルハシ──見入ってた」

「見入ってたで済む……イヤ、そもそも頼まれてもいないか」

「黄金のじじいあじ舐めるっぺ」


オーデオの魔法ソード少女が観戦しながらひそかに練っていたひみつの作戦は、間に合わず。


妙に口数少なく…カタナはその凝らした両目に激しい黒光とひとりの魔法ソード少女を見つめる。にぎる右手に力を込めながら。



そして迎えた──限界点間際。



「【アグニ】【アグニ】【ァァァァグニぃぃぃぃ】アッチャーーーーー!!!」


対抗する黒の魔法は喉元まで押され、さらなるダメ押し。呪文を唱えながら奇声を上げる象頭は一切の手加減もなく黄金の炎を垂れ流すことをやめない。



「くっ、なめないで……魔法ソード少女を! マリティいいいいいいいい!!!!」



限界、本物の魔法ソード少女にはそんなモノはない。

少女は信じて疑わない




〝魔法ソード少女、マリティーを〟




迎えた限界点は────溶かされ


彼女のスレンダーなシルエットに纏う虹色の光は、後光のようにさしこんで限界を超えたチカラを魅せる。


呼応しガトリングサークルスイッチから放出された黒い1束は、喉元まで迫った黄金の熱炎を溶かし、



スベテ一直線上を黒く塗り潰した。


突き刺した切先の果ての果て、黒い閃光は魔法ソード少女の敵を貫いていった。





勝負というものは、


勝負というものは、一瞬の競り合いではない。

決着がつくまでの総合力。


たしかに魔法ソード少女は黄金を振り払い、限界までを土壇場で溶かし敵を己の魔法で見事貫いた。


しかし──



虹色の後光が失せ…肩で息をするほどに疲れているのは誰であるか。



黄金の後光を発し、肩でワラっているのはダレであるか。



緊迫のベールを剥がすように暗雲の黒が明け────バケモノが嘲笑うようにニィっと笑ったら。




鼻を伸ばす象頭の上に爆炎が降り注いだ────


勝ち誇る黄金の後光を塗り潰し、熱く熱く紅く染め上げる天から投下された爆剣はその笑うために反った勝ち背に浴びせられた。



『アッアッあああああちゃいいいいいいい!!!!!!』



その熱さ、絶叫級──


突如目の前に現れぶくぶくと膨らんでいく巨大な紅のドームに、


象人間はもがき苦しみ、


オーデオの三人衆はバケモノ相手の最終手段でミサイルでも落とされたのかと疑い、



「ハァっ…ハァ……これは…炎…あかい…なぜ」


「ハッハッ、なんか見たことあるわねぇー!!! 愛のぼむえええんハッハッハ!!!」


2人はしっていた。この紅い熱さを、

  • Twitterで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る