第20話 vs象人間❹

何が降りそそいだというのか、象人間は分からない。

天罰、ミサイル、兵器…いやちがう、


紅い赤い爆炎の半円球の中現れたのは、


たしかに豪快に斬られた背のかんかくに振り返った──


灼かれた赤目の象人間は同じく赤いそのダークガーネットの瞳を覗き込んだ。


勇ましくトマルこの燃え盛る魔法の正体、その見たことのない赤備えの魔法ソード少女を────貰ったダメージよりもバケモノは紅く熱い背のものに興味が勝った……180度回転した顔首、伸ばされた象鼻は先ずはその突っ立つ少女の黒髪をくんくんと嗅いだ。



「このまりょく爆発、そうなると思ったわ」


「鼻伸ばしてんじゃないわよ、これでも食らってなさいエロ象!!!」



その伸ばされた象鼻の鼻先が硬直した少女に纏わりつく前に、


灼けたアスファルトすれすれを滑空した黒い円盤はそこに逆さまに立つ黒セーラーの両手を伸ばし硬直少女を引き上げかっぱらった。


さらに相乗りしていた水色髪は、泡粒の置き土産をばら撒きカラフル爆破。並々ならぬ炎魔法をその身に浴びた象人間に追撃した。



紅い巨大ドームの威力が明けたころを見計らい、思った通りに硬直していた少女を連れ去り脱した。


3人を乗せたマリティーブランの追加カッチュー、ガトリングサークルスイッチは熱風をきり空を舞いながら一旦敵の元から離脱、離れていく。


「イキナリ久しぶりじゃない背伸びた? ってあんたその赤いの…カッチュー? はぁ?めっちゃ豪華で気合い入ってない…? はぁーなんでMS0がそんな高待遇なのよー、うらや馬子にも衣装ねー」


「んーー、──!」


「いつものサムズアップね、はいはい便利な魔法ねーははは」


「あなたはなんで来たの。あなたは民間人のはずよ、なぜここに?」


「んーー? ぁあーー。ソぴーずの代表曲、やっぱり【愛のぼむ・えんど】! アタマ電撃──!」


「…………(あたま電撃…)」


「ハッハッハ、あははははなぁるほどね。ミルクより母乳、母乳より魂が刻まれて憶えてんのよラヴ&ロック!! あんたのおせっかい負けだわおスカしさん! そしてわたしのおかげねハッハッハ」


(そのなにかの音楽をきいて思いだしたというの、こんなにもはやく……そして魔法ソード少女として……)


似たような話を聞いたことがある……マリティーブランは強風にはためく黒髪の左にとめたちいさな白羽にかるく触れた。


「はぁ、わかったわ。それで誰に言われて来たのかしら、──真田ふれいさん」


「へぇー、あんたさなだでふれいって言うのね。割とイメージどおりだわはは」


「んー。おもしろそうなノイズだから行けって? ぺーぺー、わたし?」


「はぁ!? おもしろそうだからって、いきなり通信不能ゾーンに現れて片道切符であんな意味不明なのに爆撃したわけあんた!? ってそのクソオペレーターどいつよぺーぺーってあのドス効かせた声の鬼じゃないでしょうね!」


「……──!」


「イエスってぇ、あんた運ないわねーハッハッハ」


「そんな理由で……真田ふれいさん魔法ソード少女はそん──」


「ってとんでるーーーースカし後ろおおおおお!! 鼠よ鼠! 鼠に乗ったエレファント!!!」


「なに!? どういう……本当ね」


大鼠に乗ったエレファント。

先頭で風を切るマリティーブランは、チラリと振り返り、後ろについて来ていたのはまさに言われたままのその光景であった。


大鼠は灼けた象人間を乗せて空を走っている。黒い円盤で飛ぶよりもバカげた光景だ。


そして今、象鼻からクシャミされ放たれた黄金の弾丸が拡散され3人を乗せた黒い円盤に襲いかかった。


迫る殺気に対しひらりひらりとマリティーブランはまりょくを流し円盤は操縦されるが、荷物を2人乗せたこんな状況は想定外……100のパフォーマンスとはいかず、


「こんの【バブルポップ】!! ウシロ取って調子乗ってんじゃないわよ!!」


手助けするように相乗りしたマリティーポップは切先を後ろに向け反撃を開始した。

戦闘機のフレアのように散布お見舞いされた泡は、見事に空飛ぶ象と鼠の意表をつき直撃。


水色に視界を汚した。


だが、鼠と象はまだ止まらない。


汚された視界を切り黄金のビームが一層激しくなる。


恐るべき執着についに──ひらりひらりと酔うほどの運転をしていた円盤は被弾。


敵のまりょくが混ざり制御が乱れてしまい────


「っておちるううううう」

「ッ──捕まってなさい!」

「言うのが遅いってのおおおおあんたああえああ」

「んーー……おちてるっ!」

「あったぼーにおちてんのよーーーー!」



黄色い煙を上げながら青空から地の方へと落ちてゆく3人を乗せた円盤に、


容赦なくスピードを上げ走り迫る鼠に乗った象人間。

今度は確実に撃ち落とせる距離まで近づき、口から大きく息を吸い頬を膨らませ、一気にチャージしたソレを噴出しようと────



MT11規格──焦燥と執着の風の攻防に現れたとてつもなく骨太な大剣が鼠の乗り物の横腹に刺さった。



「【デスネぼむ・えんど】! ──あ、デキました」



剣を突き刺された青い空は、青く、碧く、紺碧あおく──深く染められ爆発した。



訳の分からないデッドヒートにみなが墜落していく。



黒い円盤は変哲ない緑の野原に鋭くえぐり突き刺さり地をすっぱりと潜っていく、それよりも早く制御不能な乗り物から脱した3人は野原を仲良くものものしく転がっていく。



そしてドガッ────ものすごく大きな音を立てて舞い降りた1人。

埋まる地から片手を伸ばし、そのまま腕の力で自力で引き上がった。


クラシックなメイド衣装についた土埃を払いながら。


「これが魔法ソード少女の魔法ですか、思ったよりカラダ関節節々がすごく痛いのですね……。一週間は骨身にひびくやつです。これではかよわい少女のカラダが持ちません。今すぐに、ぐるこさミンッを10錠お電話と温泉慰安旅行蟹付きを要求申請します──ですね─ぱっぺっぺっ──」


はじめての魔法を行使したもののそれはそれは大自爆の大失敗。

黒と青の乱れ髪をクシでデフォルトにととのえて、秘書デスネは口から少々の嘆き節と土砂と草っぱを吐き出した。

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