第9話 【愛の・ぼむえんど】
魔法ソード少女どうしのまりょく補給•譲渡方法は
❶握手
❷ハグ
❸特殊な魔法や武器などを用いた遠隔供給
いずれも一瞬で補給されることはない。
まりょくの質や相性により変換効率の違いもあることだろう。
過去には発熱や体調を崩す事例も見受けられる。
初対面の仲良くもなんともないマリティーポップと真田ふれいは当然❶の握手を選択した。
汗ばんだ手とおなじ手が
ぎゅっと、逃がさないように…握り合うこと1分と45秒。
じわり順調にあたたまってきた、繋いだふたりのまりょくが循環している。
ふれいはもういいかな? と戦況を熱く見守っていた水色の魔法ソード少女のラムネパーカーをちょいちょいと引っ張った。
「何よ? おわっ──ってあんた私のまりょく奪ったああああはああああ!??」
「??」
「はてなはてなじゃないわよ! こんなときにナニやってんのよ!」
「……!」
なんと──ふれいは脅された通りにマリティーポップにまりょくを供給していたつもりが繋いだその手で逆に奪い取っていた。
異変に気付いたときにはもはや遅く、マリティーポップの内在まりょくはすっからかんであった。
すぐさま離した手を繋ぎ直したが……対面する魔法ソード少女は要領を得ないこまり顔をしている。
しかしマリティーポップは知っているこれはそうとうなポンコツの顔だと……。
「はぁもうこの程度の基礎もできないって前代未聞じゃないのっ! あぁもうッちょっと責任とってきなさいあんた! 大魔法で片付けなさい! あんたもあのスカした魔法ソード少女の好きにやらせたくないでしょ!」
「???」
「はぁ…あんたほんとにMS0のぺーぺーの素人なのね! あるでしょ大魔法! 私はあのストローをめっためったにした泡、あんたのいう泡猫よ名付けて【バブルポップ】! あんたは!? あるでしょ! イカした名前が! まさか…恥ずかしいわけ?」
「んー? あーーだいひょう曲…………ある! 【ソぴーず】の曲…さっき名付けた!」
「あるならソレをやるの!!!! ってさっきって!!! え【ソぴーず】!? ちょっ何言って…って誰がわたしの曲名よ!!! だ・い・ま・ほうッってったでしょ!!! なんでソぴーずの代表曲になるのよ……ありすぎて困るんだけど…」
「んー、ちがったかぁ?」
「もうそれでいいからさっさといってかましてきなさーい!!!(ソぴーずの代表曲…【ダイナミックソード】か【ソ・ファンタズム】よね? 個人的には頭からっぽにたのしくなれる【愛のぼむ・えんど】だけど? ってわたしはナニを言ってるの…!? もはや頭がソ・ファンタズムなんだけど…)」
ソぴーずの代表曲の話ほど時間を取られることはない、いやそれどころではない。大魔法をかましてこいという話から明らかに脱線しすぎた。
マリティーポップはどこかぬけている真田ふれいの背にむりやり喝を入れ送り出した。
バチンと背を叩かれ、送り出された真田ふれいはよろけた頼りない背を立て直しながら──走った。
しっかりと持たされた剣を両手に、
(青いぶくぶく代表曲【ばぶるぽっぷん】と
【みさいるぱっくんろっく】黒いばくだん。)
(ぶくぶくふくらむばくだ……んっ! お母さんが好きでわたしの好きな──ヤツ)
握る柄に──込め、熱帯びる手のひらに熱帯びるままに任せる。
「──斬るよ!」
聞いたことのない魔法ソード少女の声に、大型の金ピカカエルを独り、相手にしていたマリティーブランはチラっと振り返った。
「なんであな──」
その勇ましい顔を見て、魔法ソード少女は正面に向き直る。
マリティーブランは相手していた金ピカにサマーソルトしながら蹴りつけた、ローファーコンベアⅡの足裏の出力を上げ勢いよく顎を砕き──そのまま後退しつつ抜刀したMT2のまりょくビームを連射。
出力を上げた特殊なカッチュー装備の手痛い蹴りを貰いおおきくノックバックするオオガエルは、ビーム連射に直撃した黒い小爆発に彩られていく。
これ以上のお膳立てアシストはない、そんな意思が垣間見えるブランの攻勢に、
駆けていく。
その両手に刀身に膨らんだ期待感はトメラレナイ。
垂れ流れる黒いビームを背景に、真田ふれいはだいけい公園を走りゆく!
倒すべきターゲットに接近、両腕のMT4はかますだけ、
そして──
「ってただの斬りーーーだと思ったバカーーーにっにげなさい!!!」
「いや……! 高まるまりょく……水色はなれなさい! にげるのはあなたよ!!!」
「え!? ま・さ・か…愛の──」
ポンコツを送り出してしまった責任感からか剣を手に取り助けにいこうとしたマリティーポップにブランはきつい語気で命令した。
あわてて蜻蛉返り、マリティーポップはぞわり…そういえば吸い込まれるような公園の微風にあらがい走った。
イチはやく自分の技を察した黒セーラーは、木陰で呑気している銀色のドレスをそそくさとかかえ木々緑を抜けて行った。
体を反るほどかかげた巨大な蛙の手を叩きつける、
チカラ任せの斬撃でこのボディに傷をつけてくれた相手に強烈なカウンターを浴びせる、
メタルバイオで構成されたストローは思考するそして選んだそのコマンド。
既に斬られていることを知らずに、選んでしまった。
巡るまりょくはそれよりも速く──
熱せられる紅色のナナメ真っ直ぐな切り口に、ぶくぶくと膨らんでゆく期待感はトメラレナイ。
「【ふれいぼむ・】」
金ピカオオガエル、銀色お玉杓子、今更遊びにきた犬型、
そしてギラつく赤目は見開かれ──左の口角をひきつり上げ、キラっと苦笑った。
「【えんど】!!!」
▼さかいデータゾーン8だいけい公園▼は赤い巨大ドームに包まれ……スベテ呑み込まれた。
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