第3話 魔法ソード少女と一服

「アレは弱い? つよい? 弱い? ふつう? めちゃよわ? まりょくゼロ、あ──飲むの忘れてた」


データゾーンクリア後の一服。

耳に入ってきた急遽の救援任務をこなし、きょうはじっしつ、二服しなければならない。

マリティーブランのホットミルクを忘れていた。

大したルーティンではないが、欠かせないおまじないであり……少女はそれを気持ちわるく思い。


数刻前よくきいたオペレーターの声をおもいだしたブランは、仕方なくついでに任務を続行することにした。





▼カフェマリティーデモネ▼にて




注文の品は、


くるみクリームのロールケーキとホットミルク。


くるみクリームのロールケーキとコーヒー。



店内でベージュの制服と向かい合わせに座り、香ばしい胡桃をロールケーキの輪の上にちょこんと添えられたソレを少女は黙々と食して、ホットミルクで流し込んでいく。


2人の静けさとは対照的に、皿をうつフォークの音やまわりの少女や大人たちのたのしげなしゃべり声がきこえてくる。


マリティー本部イージスのオペレーター長山透は薄く笑みを浮かべながら帰ってきたら提供すると約束していた甘い食事をマリティーブランと今、ともにしている。


食事をともにする了承を得たものの、魔法ソード少女である彼女に一介のオペレーターが課せられたルールはなるべく黙っていること。


しかし、観察するのはただ。

オペレーターの長山透はチラチラとまだ黒セーラーのカッチュー姿のマリティーブランのことを見ていた。


そして長山はあることに気付いた。そこそこの難易度の間違い探しをするように、


「アレ、それ? 任務中以外にもつけてましたっけ?」


「……」


ちいさな白い羽のヘアピン。彼女の黒髪の左に一点留めている。任務終わりにはいつも彼女はそれを外していた気がしたからだ。


しばし黙して……薄い印象のまぬけ顔で問う正面のショートカットの女を睨みつけた──少女は、


「あっ!?ぼくのケーキ!? ブランさん!?」


「細かいところまで干渉しないで、裏方ならケーキも魔法ソード少女のもの。──わたしはちがうけど、はむ」


伸ばしたフォークはりふじんにもロールケーキの右端を削り取り、勝手に他人のテリトリーに干渉した。


少女は笑わず真顔でやってのけ、そのままビンを手持ち天を仰ぎ飲み干した。

そしてゆっくりと席を立ち、奢りだときいていた黒髪セミロングはオペレーターの女と一目合わせて──そのまま静かに去っていった。



「な、──ははは。ほんとに……おもしろいこがおおいなここは」


呆気に取られながらも、長山透は少女のみせた態度にわらった。


「ん? の、残されたケーキがあぁぁる。いや待て落ち着けナガヤマ。これはだれのケーキだ……まちがえたら…いや報告の必要は!」



イージスとは盾を意味する。つまりそこに所属する彼らは実質魔法ソード少女マリティーたちの盾である。

遠くはなれた身の危険の及ばないオペレーターがイージス、盾はそれこそ矛盾しておかしいと呼ぶものもいる、しかしかっこいいと心に思うものもいる。


マリティー本部イージスのオペレーター長山透は2人ぶんの会計を済ませた。








▼よるの神戸港▼にて




ぽちゃり────釣り糸は頼りない灯りに照らされた夜の水面に垂らされた。


無事危機から帰還し本部から現世へともどったマリティーポップはいつものラムネ色の水色とピンクのパーカージャケットで夜風をしのぎ、黄色いビールケースの上に腰をかけた。



(学生時代このままでいいのかなーなんて考えてたけど、グレる前に魔法ソード少女になっていた。魔法ソード少女のことはお母さんには良いバイトと言っている。きょうだいを育てるには長女の私がバイトしないといけない。頭の出来のいい効率のいい方に金をかけるのは当たり前。妹も弟もぜんぜんきらいじゃない)


(でも魔法ソード少女はいい)


(賢さは近所の高校レベルで頭打ちの私だけど、強くなることは誰にも叱られないのだから)





「今日は叱られたけどぬぇ!? かかった!?」


「ちょと、これどすんの!??」




釣りは初心者の素人の女の子。

多趣味のマリティーポップはなんでも雰囲気と格好から入りがちである。

彼女は引っ張られる水面に慌て顔をニッと笑わせ──無駄遣いの新品の釣竿をとりあえず思いっきり引っ張ってみた。







⬜︎かんさいデータゾーンひがいほうこく


かわにしデータゾーンひがい0




さかいデータゾーンひがい1




くさつデータゾーンひがい2


──────

────


⬜︎





青いインナーカラーがちらりとみえる──おかっぱ風の黒髪をしたデスネは、今日の魔法ソード少女たちの報告書をすらすらと上から順に読み上げていった。



▼デモネの私室5▼にて



密室に2人、秘書とお偉い主人は机越しに、かたい雰囲気と柔らかな雰囲気で向かい合った。


「今日はひがいゼロではなかったのですね。しかし甚大な被害もありません、ひょっとしてほったらかしの魔法ソード少女のレベルが落ちているのですね」


「落ちていないといえば嘘になるわね。でもね、仕方ないことじゃないストローはこれでもだいぶ昔より大人しくなったのだから」


「はい、えっと伝説のマリティーですね?」


「そうよ、伝説のマリティーの活躍、データラインを殲滅した伝説のSM、マリティーの絶対的ナンバーワン!」


「はいしかし不思議ですね、データラインのこともその伝説のことも全然活躍したとされる凄まじいスコアしか記録には残ってないですね?」


「それはそうよ消させたのよ」


「消させたのですね?」


物腰の柔らかさが一変──冷たい感じで主人のデモネはチェアーに座りながら言い放った。秘書のデスネは顔色を変えず、おうむ返しで疑問を呈した。


「そうよ、伝説はいつまでも伝説であるべきでしょ?」


「そうですね」


「でもね、ふるい伝説と現役のナンバーツー、どっちが魔法ソード少女として上かわかる?」


「それははい、ふるい伝説ですね。報告されているスコアがダンチです、データで比較するとナンバーツーはかのじょの空いた背中ぐらいしか守れません」


「ふふふふふ…正解よ。デスネあなたは全然間違えないからおもしろくないわ、──お紅茶タイムにしましょ」


「いえ、わたし伝説に背を向けていたので失礼します──ですね」



淡々としゃべりあげ、一礼してそそくさと去っていく黒青髪。もっともらしい理由をつけ上司の提案したありがたいお紅茶タイムを回避した。



結局お紅茶タイムはひとりで、



沸かした湯はティーバッグが置かれた暗黒色のカップに注がれた。ミルクは注いでも混ぜない。


ただしぜんと混ざりゆくさまを、

まつ毛のカールした金色の瞳を見開き──とろんと細めとじていき、カップに近づけた鼻先で嗅いだ。


(この香り、おもいだすわ、あなたのせなか…ふふ)


白いチェアーに深くしずみ、デモネは見上げる。


一枚そこに飾られている。埃かぶる今はなき伝説のマリティーに見つめられ──ふわり抱かれながら。




第4話 ▼さかいデータゾーン16▼




▽さんかく公園▽にて



ご当地猫図鑑なるものを知っているか。

人は誰もそれをきっと知らない。


なぜならば、


「ぁ、みかけない黒猫! みかねこ!」


彼女が作っているオリジナルの図鑑だから。


てづくりのてづくり、折り目のついた手帳を片手に、みつけたベンチに座る猫ちゃんをデフォルメしねこ絵を描いていく。


もはや小慣れたものだ、彼女はもう何年もこの道のプロである。


ふらり、たちよった、さんかく公園でラッキーにもみつけた黒猫。

休日のお昼間にお散歩をしていた彼女はターゲットの前で腰をかがめた。


ほどよいながさの黒髪、キラキラのダークガーネットの赤目はじーっと。

黒猫もじーっと。


おこなわれている……目の高さを合わせた、初対面こう着状態のコミュニケーション。


「やっぱり見かけない? 黒猫? ……みかねこ?」



首をこてっとかしげる、かのじょの名は真田ふれい。

これがかのじょの恥じらいのない日常。

ご当地猫図鑑はこれで4代目、かのじょ自らの手でまたあらたな猫ちゃんページを創世していくことが……今を生きるかのじょにとって、ほどほどに充実する何気ないしあわせなのだ。







▼トレーニングゾーン32▼にて



ブランは受付に使用料金を払いマリティー本部にあるトレーニングゾーンを借りていた。



訪れたのは余計なものがなにもない真っ白な空間であった。



使用料金をいくら払っても好きなゾーンを選ぶことはできない。なんのためか完全にランダムであるが、真っ白でなにもないならブランにとっては当たりの方である。



既に汗水を流して修行をしていた。

りょりょくの修行用に買ったMT7規格の比較的重い剣を虚空に振るいながら、いつものセットをこなしていく。


「りょりょくはトレーニングで着実にどうにでもなる。軽視はできないけどまりょくを纏えば大幅にカバーできるのが魔法ソード少女の実情」


「でもまりょく量はやはりネック」


「実戦で尽きたことはまだないけどいくらあってもいい」


「そうおもう場面はしょうじきある。でもアレでアレするとこの前の水色みたいになる」


「──魔法ソード少女は、つよい」


「わたしより」



「ホンモノの魔法ソード少女は。」


「私はしっているから。」




【まりょく量まんたん。出撃要請!】



トレーニングゾーンの白に不意に浮かぶ、

黄色と黒の注意を促す色の上に赤色の字が仰々しく点滅している。


黒いタンクトップ姿の少女はうるさい警告音と警告看板に、重い剣を止めた。


『マリティーブラン、ストローが複数のゾーンに現れました。さかいデータゾーン16に向かってください。今回、この出撃要請は拒否することもできますが現在のマリティーブランのレベルはMS2その場合はペナ──』


MS2。

MS0は入隊したてのもの、

MS1はストローの撃破スコアが30以上のものに、

MS2はスコア90以上に与えられる……まだまだ高いとはいえない魔法ソード少女の活躍度はたらきに応じて冠されるレベルのことである。


「了解しました。MT2の軽量剣と私のカッチューを」


『はいりょうか……ドクターのおすすめセットは? いかがしますか?』


「……それでいいわナガヤマ」


『了解いたしました! では基本セット……? を装備! 準備でき次第転送を開始しま────』



マリティーブランはもちろん拒否しない。

これが彼女の日常であり目的へ向かうことであるのだから。

魔法ソード少女として、ほてるカラダの冷える汗を拭き、いつものように白い羽飾りを黒髪に留め、準備を急いだ。







マリティーブランは聞き慣れてきたオペレーターの指示にしたがい予定通りに出撃した。




▼さかいデータゾーン16▼にて




トレーニングゾーンでそのまま待機から時間通りに転送────チャンネルが切り替わるように見えてきた景色は、高鳴るまっ白から一転、太陽を背にひろがるスカイブルー。


いきなりの強風を全身に浴びていた。



「……いきなり空中? ──ん?」



マリティーはそのまま降下していき────すぐ眼下に見つけた黒い四角を宙で捕まえた。


それがなんであるのか説明はされていないが、イカれた代物であるのは一瞬でよくわかった。


「これを使えってことね」


合流した四角い黒に乗りながら、一体となり手のひらからまりょくを伝わせ操作していく。




眼下の小粒な市街地にはすでにこの目で発見している、堂々と我が物顔で道を闊歩しているストローの群れを。




(操作がめんどくさい……溝? ────空飛ぶ硬い枕って訳じゃない…)



マリティーブランは真ん中に見つけた小さな溝に、イタズラな顔をした誰かがいるのを確信した。


やがて感覚とセンスで推しきめたポイントに到着し、


四角い浮遊物に手にした特別な剣を勢いよく突き刺した。


おかしな刃にまりょくを十分に込め……

そして突き刺した剣をひねる、左回りに鍵を開くように。



「【ミサイルロックパック…マリティーぃぃい】!!!」



空中から拡散する勇ましい雄叫びは、


拡散するまりょくミサイルへと変わる。


魔法ソード少女を乗せた黒い箱の下腹は今、開かれた。



「まりょくコントロール!!! こうっ!!!」



人馬一体となり彼女を補助する黒い箱を媒介に、


まりょくコントロール。


コントロールされたまりょくミサイルはストローたちをマニュアルロックオン。



真昼間の青空から流れていく場違いな黒い星は、さかいの市街地におかまいなく落ちていく。


直撃し──咲き誇っていく。



『エクセレント!!! 見事なまりょく爆発!!! 予想通りの予想以上だああああはははは相変わらず取説はいらないようでたすかぁぁぁる!!! このバイオメタルを濃加工したミサイルロックパッ──』


「はぁはぁ……馬鹿じゃない。──でもその通りね」


己の右耳をポンと叩き、

マリティーブランは勝手に他人の耳元に割り込んできた頭のおかしな通信を切った。

今は戦闘中、これ以上の裏方のうっとうしい得意げなささやきと取説はいらないのだ。



眼下には黒く着弾し、はっちゃけたダメージ痕がいくつもある。

即興でマルチロックオンし少なくはないストローを葬った感覚があるが、彼女はすこし顔をしかめた。


あまり認めたくはない感情とたしかな成果がそこにあり、板挟みにされた歯痒さが、苛立ちに変わる。



「これは……魔法ソード少女じゃない…!」


魔法ソード少女は剣をぐっと突き刺し握ったまま……四角い構造物に乗りながら降下していく。


しかし違和感を感じたおでこを抑えて途中気付く、操作したことのない数のまりょくミサイルをまりょくコントロールした副作用で、アタマがずきりと痛み熱量がこもっていることに。


風に全開にされたおでこを冷ましていき、吐く息を長く──巡る厄介な思考を捨てて魔法ソード少女として…の冷静さを取り戻していく。


(あの数でこれだけの熱……もっとまりょくコントロールの修行が必要なのかもしれない…)



おすすめ装備を現地空中で装備し派手に足元を爆撃し登場したマリティーブランは、このさかいデータゾーン16の取り逃がした敵ストローの殲滅へと移った。




第5話 金銭?orまりょく?




見つめ合う、猫目、赤目、


かれこれ2分30秒のこう着状態はやぶれる────ぴょんと寝ていたベンチからはねて逃げ出した黒猫をあわてて少女は追いかけていく。





⬜︎

   ⬛︎





整頓された公園の草木かきわけたのしいひっしな追いかけっこ、


黒猫黄色目、黒髪赤目、


並木と茂みの中から明るい方へとまた出てきた。




▼だいけい公園▼にて




あそびばのグラウンド中央に黒い尻尾がふりふりと揺れている、


誘い誘われるようにたのしげな赤目は、


ユラユラゆれているものにそーーっと近づいていった。



しかし、気付かれたのかびーーっと垂直に立たせた尾は、びゅーーーーっとまたたくまに駆けていった。


猫があそばず本気を出せばただの少女にかなう術はない。


少女はしっぱいのため息まじりに、茶色い革のウエストポーチにご当地猫図鑑④をしまった。



「あぁ、みかねこ〜……まだ左後ろの肉球かけてないのにぃ? ねこねこレーダーにかかっちゃった?」



ぬきあしさしあしには自信があったものの、仲良くなれそうな猫を驚かせてしまったことに少女は首を傾げながら悔いた。


しかしあんなに必死夢中であったのが一転、

気持ちがきれたからかこれ以上用のなくなった公園から出ようと──



公園の入り口、ちいさなポールがたて並ぶ場にぎんいろの人影。


少女は口をぽかんと少しあけ、見慣れない……キラキラギラギラな昼の陽光に輝くその衣装を見ていたら、不意に横から何かぞわりとする感覚をかんじた、



イヤな空気を圧してくるものにパッと目を向けてみると大きな丸いものが宙を浮いている。


浮いているだけではなく短い尾っぽをヒラヒラとなびかせ泳いでいる、ソレがたしかにおおきくなり近づいて────



トツゼン破裂、真横からトツゼン光った桜色につながり一瞬で爆発した。



「おおっとあぶない! おーい見惚れてる場合じゃないよ」


「……!?」



今、たしかに目の前にきていたお玉杓子のようなものが視界に破裂した。破裂して散らばる焼けこげたスクラップがグラウンドを点々と汚している、わかる。


あまりにもあっという間のことだったので今更おどろいた尻餅はつけなく、少女はぼーっとその場にフリーズするように立ち尽くした。


「だからそんなにぼーっと立ってると……君は?」


「さ、真田ふれい…」


そのお姉さんは棘のある感じの声色ではない、問いかけられたから少女は自然と名前を答えていた。


「…フルネーム? ひょっとして魔法ソード少女では……ない?(データゾーンに稀にそんなことがあるときいたことがある……背は170ぐらい? 高校生かな? 武器を携帯している様子はなし、カッチューにしては地味目のごく普通の少女の普段着……ひょっとするのかな?)」


「魔法…ちょーちょちょーちょ?」


銀色のドレスに銀色のサークレット、栗色の髪、オリジナルの洒落たシルバーカッチューを身に纏ったそれは巨大魔法ソード少女組織マリティーに属する魔法ソード少女、レベルMS3のマリティーシルブ。


ウエストポーチを肩に引っ掛けた私服姿の真田ふれいは凛と立ち顎に手をやるギンギラに理解が追いつかない。



通い慣れた公園の辺りの遊具がすこし変わっているのにも気付かないほどに──



さかいデータゾーン8、だいけい公園にて。


ただの民間人とただの魔法ソード少女は出会ってしまった。









「くっやられる!?」


マリティーの魔法ソード少女は各々ストローの同時多発発生したデータゾーンへと戦力を分散し割り振られていた。



金ピカカエルのストローとカラフルお玉杓子の大群、どこかで見たような死の瞬間に、


立ち向かうがしくじり敵わないもの、


残存DSシールド値はゼロ、つまりシールドブレイク状態。民間人並みの防御力に落ちた……


魔法ソード少女は飛び跳ね迫るカエルの伸びる右ストレートに、トドメの瞬間をむかえ、汗吹く全身が急速に冷えていく────



死の瞬間に立ち会うものは、自分にあつらえられたようなデジャヴするシチュエーションに切先をたらふく食らわせたまりょくで笑わせた。



『バブルポップ!!!』



空から降り注ぐのは青い雨、


アメではなくアワ。



天から押し寄せた泡泡は群れに接触するや否や破裂しぶくぶくとカラフルに膨れ上がる。


そして勢いよく舞い降りた水剣は、憎き金色を斜めに斬り裂いた。




水色のまりょくは爆発し、カラフルな敵色と混ざり合い爆発花火を背に、


ラムネ色のパーカージャケットに心地良い強風を受けた。



「フンっ、こんなに早くリベンジできるなんてね」


「あ、ありがとう……(なんて威力の魔法……)」


「はっはーーははははは大丈夫、私クソつよいから!」


「つ、つよ……じぶ」


「それとは別にまりょく貸しなさい。あんたの、ぜんぶ」


「えぇ!?」


「何よ? 文句あんの…?」


「な、ないですはい……お手柔らかに……」


語気を強めなくても、いっぽうてきな交渉はすぐさま成立。

ニッと笑いながら水色髪の魔法ソード少女は傷付いた魔法ソード少女とガッシリ手を繋いだ。


助けられた魔法ソード少女はストローよりも怖いのは同じ生業をする魔法ソード少女だとこの日改めて味わわされたようだ。





魔法ソード少女が他の魔法ソード少女に自らの窮地を助けてもらった際のお礼は


❶金銭


❷まりょく


❸武器


などと暗黙のルールで決まっている。

金銭の場合最低でも20万円辺り、捨てる命ひとつに比べれば安いものである。


ちなみにブランは忘れていたのかあの時のマリティーポップに何も要求はしていなかった。



まりょくを貸してもらうのにも金銭を要求することもある。

なのでまりょく量が高いものはそれを生業とする場合もある。戦闘能力がそれ程高くないであろうまりょく補給部隊のようなものも当然存在している。


今回マリティーポップは金銭よりもまりょくをふんだくる選択をしたようだ。威力の高い代名詞であり得意技【バブルポップ】のまりょく消費量は少なくはないのである。

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