第3話 影との対話

ハルが森をさらに深く進むにつれ、木々の間隔が広がり、光が地面に差し込むようになった。この光の一筋が、彼の心にも届いているようだった。そして、そこには新たな試練が彼を待っていた。


彼の前に現れたのは、自分自身の影だった。しかし、この影はただの影ではなく、ハルの内面の声を体現したものだ。影はハルに問いかける。


「本当に進みたいの?」


ハルは一瞬たじろぐが、立ち向かう決意を固めた。彼は影との対話を始める。


「進みたい。でも、怖いんだ。」


影は静かに答えた。「怖いのは当然だ。でも、君はもう一人じゃない。」


この会話を通じて、ハルは自身の過去と直面し始める。彼は発達障害による苦しみ、いじめられた日々、そして家族の病気という重荷を抱えていることを認めた。


「でも、どうすればいいんだ?」


影は答えた。「自分を受け入れることから始めよう。自分の弱さも、強さもね。」


ハルは深く考え込む。彼はこれまで自分の弱さを恐れ、それを隠そうとしていた。しかし、影との対話を通じて、自己受容の大切さを学び始める。


「自分を受け入れる…そうか、それが始まりなんだね。」


この瞬間から、ハルの心は少しずつ変化し始めた。彼は自分の影に感謝を伝え、再び旅を続ける決意を新たにした。


森を歩き続ける中で、ハルは自分自身についてより多くを理解するようになる。彼は自分の弱さを受け入れ、それを乗り越えようとする強さを見つけ始めていた。


そして、ハルは気づく。影との対話は、彼が自分自身と対話するための第一歩だったのだと。彼の心の中にはまだ多くの問いがあったが、今はそれらに向き合う勇気があった。


日が傾き始める中、ハルは森の中で小さな光を見つける。それは遠く、しかし確かに彼を呼んでいるようだった。ハルはその光に向かって歩き始めた。彼にはまだ進むべき道があったが、今は一つの大切な真実を手に入れていた。


自分自身を受け入れることの大切さ。それが彼の旅の中で見つけた、最初の光だった。

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