13針目「予測不可能な行動」

目が覚めて時間を確認します。


「5時ですか...」


ベッドから出ると、リビングに向かいます。


「今日も..仕事ですか...」


昨日、お母さんが作ってくれた料理の残りが入ったタッパーを見ながら、無意識に声が出でしまい、ハッと自分の唇に触れますが特に変化はありません。私はなんだったんだろうと思いながら、ゆっくりとした足取りで自分の部屋に戻ります。

少し無力感というか...何か、心に冷たい風が吹くような感覚に襲われながら。


「あっ...」


しばらくして、いつも登校してる時間になるまで勉強をしていたら、無意識に昨日の勉強会の時、風さんとやった所の復習をしていました。


(ここ、結構前に覚えてたはずなんですが..)


そう思って首を傾げますが、やはりなんでここの復習をしていたのかがよく分かりませんでした。


「まぁ..いいですか」


私はそう呟いて、その書いていた場所のページを破り、簡単なテスト用紙のように書き加えると他のページを開き勉強を続けました。


学校について、1人で勉強をしていると風さんが教室に入ってきます。

私はそちらを見て「風さん、おはようございます」と挨拶しました。


「お...え?と...と..」


「?」


何故か変な反応をしている風さんを見て私は首を傾げます。


「どうしました?」


「と!時ちゃんが自分から挨拶してくれたぁ!!」


風さんが勢いよく駆け寄って抱きしめました。


「ふ、風さん?!」


私は最初はびっくりして振りほどこうとしましたが、何故か...胸が少しつづ暖かくなるような、昔から部屋に飾っていたぬいぐるみを抱きしめた時の感覚がやってきました。


「...」


私がその感覚に浸っていると恥ずかしそうに風さんが話し始めました。


「時ちゃん..///わ、私が悪かったから..//強く抱きしめないで..//」


「え?あっ!ご、ごめんなさい!」


私は慌てて抱きしめていた手を離して、謝ります。


「いやいや、抱きしめてた私も悪いし...」


私と風さんの間に気まずい雰囲気が流れます。

ほんの数秒だったはずですが、何十分間もそうしてると感じました。

その雰囲気を断ち切るためになにか無いかなと思っていると、とある物を思い出して慌てて机の引き出しから朝書き直した紙を取り出して、風さんに差し出します。


「昨日、2人で勉強したところを覚えてるかどうかのテストとして作りましたので、今日の間にやっておいてください、放課後私の家で採点しますので」


私がそう言うと、風さんはそれを受け取って嬉しかったのか笑顔でありがとうと感謝をした後、自分の席に準備をするために戻っていきました。

私はそれを見て今さっきまでやっていた勉強に意識を戻そうとしましたが、とある事に気づきました。


(あれ、もしかして...いまさっき....自分から誘いました!?)


自分がした事に驚くと同時に顔が見られないように、机にうつ伏せになります。


(は、初めて..//さ、誘えた..//)


嬉しさと恥ずかさが混ざりながらも心を落ち着かせると、私はゆっくりと顔を上げて確かに優しく微笑むのでした。


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時計の針と羅針盤 永寝 風川 @kurabure

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