12針目「笑顔」

帰り道、私は風さんと共に歩いて帰ってます。


「時ちゃんって、本当にコーヒー牛乳好きだよね〜」


私の顔を見ながら、風さんが話しかけてきました。


「普通かと」


私はそう言ってコーヒー牛乳を少し飲みます。


「だって、飲む時の顔がとても幸せそうだもん」


「そうですかね?」


私は少し首を傾げて思い返しますが、やはり、いつも通りの表情をしていたと思います。


(やっぱり無意識に変な顔してたんですかね?)


私がふとそう思った瞬間、風さんがこちらを見ている事に気づきました。


「珍しいね、そんなに考え事するなんて」


「私だって考えることはあります」


「へぇ〜以外だなぁ」


風さんはそう言って、私より前に少し進むとこちらに顔を向けました。


「時ちゃんって何か問題にぶつかっても、すぐ解決しそうだったもん」


「そうかもですね」


私はゆっくりとそう、返事をしました。

確かに自分でも、風さんの言う通りに問題にぶつかってもすぐ解決できるとは思います。

ですがそれは、ただ知識があれば対処出来る問題ぐらいだけだと思います。

人間関係などの急に出てくる、事故のような問題については、私は解ける気がしません。


「あっ...」


気がつくと、私が持っていたコーヒー牛乳が空になってしまいました。


「あげる!」


その様子を見ていた風さんは、私に自分の分のコーヒー牛乳をくれました。


「今日のお詫びって事で」


風さんはそう笑顔で言ってくれましたが、サラッともうひとつ持ってるのが見えました。


(そんなに飲ませるんですか...?)


私は何故かそんな事を考えてしまいながらも、少しやり返しをしようと風さんに近ずき耳元で「ありがとうございます」と言いました。


「....時ちゃんって、時々変な事してくるよね....」


私が風さんから少し離れると、急に風さんは前を向き早歩きで進み始めたので、私も少し慌てて早歩きで隣まで移動します。


「そうですか?」


「...分からないならいいや」


「?」


風さんは何か察したようにそう言うと、早歩きをやめ再び歩き始めました。

私も同じようなスピードで歩きつつ、コーヒー牛乳のパックにストローを刺した後少し飲みます。


「本当に好きなんだね」


「美味しいですもん」


その後少しづつ会話しながら歩いて家に帰りました。

私の前に着き私は風さんの方を見て聞きます。


「今日も勉強しますか?」


「お願いまーす!」


「わかりました」


私はどこか心の中で安心しながら、風さんを家の中に入れました。


「特に英語が分からないので教えてください、時ちゃん先生!」


私が少しおやつが入ったお皿を机のおくと、風さんがそんな事を言いました。


「わかりました。でも分かるところは自分でしてくださいよ?」


私は少し笑を零して了承します。

そしてしばらく勉強していましたが、風さんは意外と飲み込みが早く、私が教えるだけですぐに覚えました。


「飲み込み早いですね」


「そう?普通だと思うよ〜?」


彼女はそう言ってお皿の中にある、小さなチョコクッキーを手に取り少し齧りました。


「というか、集中力がない私のやる気を継続させてくれる、時ちゃんの方が私はすごいと思うんだけどねー」


その言葉に私は少々嬉しくなります。


「ありがとうございます」


こんな事を言ってくれる人はあまりにいないので、私は少し恥ずかしかったです。


そして、もう少し勉強した後、時間になったので風さんは帰ちゃいました。

....


(楽しかったな)


寝る直前になって、私は今日の事を思い返し笑顔になります。そして、少し考えちゃいます(私は風さんと友達になれるのか)

と....

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