第5話 真実の愛と嘘
彼とは付き合うまで、寝なかった。
2回目のデート、彼は私の家にやってきた。
私の仕事終わりに私の家で待ち合わせをして、朝ショッピングモールに出掛ける予定を立てた。
再び、一緒にベッドで寝たが、腕枕をしてくれるだけで何もしてこなかった。
こんなに真っ直ぐな人に会ったことがなかった私は、その中身に惚れてしまった。
次に会う約束はしなかった。
翌週末、彼は電話で、
「春桜さんは、告白されるなら直接言われたいですか?電話がいいですか?」
と聞いてきた。
その分かりやすさに笑ってしまったが、
「想いが伝わればどちらでもいいかな」
「そっか」
「うん」
「春桜さん、僕と付き合ってくれませんか?」
もちろん、オッケーだったが、
やはり病気や借金のことが頭をよぎり、
1週間待ってもらうことにした。
傷つけたくなかった。
1週間後、私は休みだったので、
1人で先輩のやっているバーに飲みに出かけた。
「翔さん、私告白されたんですよ!
この私が!信じられます?」
「え、それ夢じゃない?飲み過ぎは良くないよ」
「でも迷ってるんですよね」
「お前のことが好きなんて物好き、世界中探してもそいつくらいしかいないんじゃない?」
「どーしよっかなー」
2時間ほど飲んで、気分がふわふわしてきたので、帰って彼に返事をしようと連絡をした。
>1時間後電話できますか?
>できますよ
>じゃあ22時ごろ電話します
>はい、待ってます
酒の力を借りて、全て打ち明けてしまいたかったのだ。
「もしもし、遅くにごめんなさい。時間大丈夫ですかあ?」
「大丈夫だよ、あれ、もしかしてお酒飲んでる?」
「ちょっとだけ。この前の返事、しようとおもって」
「ほんと!?フラれる覚悟は出来てるから、いつでもどうぞ」
「いや、こちらこそよろしくお願いしますって言おうかと思ってたんだけど」
私に彼氏が出来た。
真っ直ぐで、面白くて、優しい彼氏。
薬を飲んでいても、日常的に過呼吸も起こしてしまうので、病気のことはその時に打ち明けた。
彼は、優しかった。
「そっか、でも大丈夫だよ。春桜さんはおれが、絶対に幸せにするから」
こんな臭いセリフ、本当に言う人が居るんだと思った。嬉しくて涙が出た。
休みの日には、2人で出掛けて、
お泊まりも何度もした。
付き合ってから2度目のお泊まりで、やっとひとつになることが出来た。
また嬉しくて涙が出た。
好きな人と寝るのは、こんなに幸せなことなのかと、25歳で初めて知った。
幼い頃から、母に甘えることもできず、彼氏が出来ても、本当に分かり合えることもできなかった私に、彼は愛を教えてくれた。
体調も大分良くなっていたが、夜になると過呼吸になってしまうことがあった。
彼は、嫌な顔ひとつせず宥めてくれた。
私が寝るまで、頭を撫でてくれた。
「はるちゃんは、いい子だね。よくがんばってるよ。大丈夫だよ。そばにいるからね」
いつまでもそばにいたいと思った。
交際してから、5ヶ月。
私は職場のトラブルに巻き込まれて、体調を崩してしまった。
仕事に行けなくなってしまった。
そんな時も彼は、
「はるちゃん、無理しなくていいからね。今はゆっくり体休めて。」
と優しく頭を撫でてくれた。
私は、彼に甘えて5年続けた仕事を辞めてしまった。
借金はあと90万残っていた。
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