第3話 鎧と宝箱のヒミツの関係
「いいかげんに観念して、わしを連れていってはどうじゃ?」
宝箱から鎧がぴょんと飛び出してきて、ラケルに話しかけてくる。
「そうは言いますけれどね、常識的に言ってありえないじゃないですか。こんな目立つ大きな宝箱抱えて移動なんてしてたら、『襲ってください』って言っているようなものですよ。実際、中に入っているのは呪われた鎧だけなのに」
「誰が呪われた鎧……って、おぬし、誰に向かってしゃべってる?」
「ミミックさんですが?」
「常識で考えいっ!宝箱が口を利くわけがなかろうがっ!」
……常識って何だろう?と改めて思うラケルだった。
「じゃあ、本当に、鎧さんがノロイさんで間違いないんですね?」
「うむ……いや、ちょっと待て」
「なんですか?」
「何やら、ちょっとおかしな単語が混じっていた気がしてな。もう一度言ってくれんか?」
「ノロイさんがヨロイさんなんですね?」
妙な沈黙があたりを支配した。
「……今のは聞かなかったことにしよう。改めて言っておくぞ。わしの名は『トロイ』。それで、さっきの質問に戻ろうか?」
「トロイさんがこのノロイなんですね?」
「いや、ちょっと待とうか。今度は『鎧』が別の言葉に聞こえたぞ。鎧、よ・ろ・い、YO・RO・I、ヨ・ロ・イ……もう一回行こうか?」
「この呪われた鎧がトロイさんなんですね?」
「……ストレートに来たな……うむ、いかにも、この鎧こそがわし、トロイの本体じゃ!」
「やっぱり呪われた鎧なんだ……」
「……うん、そっちを拾いそうな気がしたよ……」
トロイの声には心なしか元気がなかった。
「わかりました、こっちの鎧がトロイさんで、こっちの宝箱は……ミミックさん?」
「だーっ!勝手に人の持ち物に名前を付けるな!」
「だって、誰かの鎧も勝手にトロイって名前を名乗ってますし……」
「それもそうか……って頷かないよ?」
「そもそも頷けないでしょ?」
「鎧だからね……あーっ!もうああ言えばこう言うっ!」
「鎧でさえ口を開く……開く?ぐらいだから、人としては黙っているわけにはいかないかと」
「そういう話ではなかろう!」
「うん、確かにそういう話ではないね。……口がないのに、どうやって声だしてるの?分解して確かめてみて良い?」
「良いわけあるかーっ!」
……うん、そう言うと思った。
「じゃあ、このミミックさんとは行きずりの関係なの?」
「なんか……言い方に悪意を感じるのはわしの気のせいか?……これはわしの家のようなものじゃ」
……家?いや、普通、家を中から引きずって移動したりしないよね?あと、家ごと飛び跳ねたりとか?
「そうかー、僕とパーティ組むならミミックさんは連れていけないし、トロイさんとミミックさんを引き離すわけにもいかないよね?トロイさんのお家なんだから。じゃあ、せっかく縁はできたのに残念だけど……」
「問題ない、そいつはわしのアイテムボックスに入れておけば良いだけだ」
……はい?アイテムボックスにミミックさん入れるの?箱の中にまた箱……マトショーシカか!
しかも、トロイさんのアイテムボックスから出したミミックさんにまたトロイさんが入るの?もういっそトロイさんが自分のアイテムボックスに直接入れば良くない?
「わしは自分で言うのもなんだが、優秀な魔導士だからな。それぐらいの収納魔法なんてお手のものだ」
……いえ、そういうことではないのですけれど……。
「で、おぬし、話を進める気があるのか?」
「ないよ!」
だって、話進めたら、この鎧着なくちゃいけないよね。呪われたくないし。
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