星屑集めのお祭り
鈴音
星屑
満点の青空の下、吹き抜ける風と一緒に走っていく。
今日は一年に一度のお祭りの日。空から降ってくる星屑を、みんなで拾い集めて、きらきら輝く宝石にしたり、普段使う便利な道具に加工するのだ。
今私が手に持っているのは、まっしろで柔らかい作りたての布。これに、たっぷりの陽の光を纏わせてあげると、空から降ってくる星屑も優しく捕まえることができるのだ。
お昼は、私たち子供が総出でこの白布を手に走って、屑取り布を作る。お祭りの後は、私たちの思い思いの服になる。
「走れ、走れ もうすぐ来るぞ すぐ来るぞ! 星屑が落ちて、やってくる! 今年もお祭りやってきた たくさんごちそう 食べる日だ!」
私のすぐあとを走る子たちが、楽しげに囃子唄を唄う。去年は、あそこに私もいた。
こうやって走って屑取り布を作るのは、今年で最後。そして、今年からは星屑を受け止めて、私も大人になる。
はたはたと風にたなびく白布を、より強く握りしめて、夜が来るまで私は足が動かなくなるほど、走り続けた。
――そして夜。美味しいご飯を食べて、たくさん遊んで満足した他の子たちが寝静まったころ、大人は屑取り布を持って集まった。
人数分に切り取られた屑取り布は、昼に集めた陽の光で淡く、ぱちぱちと光っていた。
「――――」
長の低くてよく響く声で説明を聞きながら、私は空を見上げた。
実は、まだ一度も見たことの無い夜の空。暗いけど、黒くない。ずっとどこまでも広がる群青の空。
ばさっと屑取り布を広げたその時、空の端がきらりと光った。
「来るぞ、来るぞ 星の欠片が 空からころりと 転げてくるぞ!」
大人たちは、子供が起きないよう抑えた声で囃子唄を唄い、布を大きく掲げる。不思議なことに、屑取り布は支えなくてもピンと張って立ってくれるのだ。
星屑は、最初は白く。だんだん赤く。そして最後はまた白くなってやってくる。私は布を少し前に出すようにして、星屑を受け止めた。
ぽすん、ぽすん、ぼすん!
大小様々な星屑が布を叩いてくる。でも、その衝撃はまったく伝わらない。
じつは、本当は怖くて目をつぶっていたのだけど、そっと目を開けてみたら、そこには視界を埋め尽くすほどの星屑が、優しく群青の空を照らし、やってきていた。
今まで見たことの無い群青と、白と赤の壮大な空を、私は目に焼き付けながら、一人笑っていた。
あぁ、今年もやってきた。星屑が空から降ってきて、お祭りの日がやってきた!
星屑集めのお祭り 鈴音 @mesolem
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