第42話 高機動車推し?

  橋田さん的に相当ツボにはまったみたいで、まだ大笑いしてる。

「私、デートの待ち合わせでSPに囲まれて黒塗りから降りて来たら怖くなって帰りますよ。それも、後ろに高機動車って。いや、逆に高機動車乗りたいかな。」

あぁ、橋田さんも酔っぱらってきてるのか、めちゃめちゃだ。


「私ね、弟の結婚式に出席するんで外出したんだけど、場所が軽井沢の教会でさ、遠いから車だと時間かかるっていうことで移動用に陸自のヘリが用意されてたんだよね。私達には拒否権ないからしょうがないよね、ヘリで会場乗りつけたよ。そしたら新郎新婦の到着と間違われてさ、そりゃそうだよね、結婚式で派手に登場するのは新郎新婦だよね。でもヘリから降りてきたのはSPと私だよ。 当日の一番おいしいところ持ってったって、後から、弟からも弟の奥さんからも散々文句言われたよ。」


「それダメですよね。目立ちすぎ。あれ?ヘリ移動しちゃうと高機動車は無いんですね、ちょっと残念。」

橋田さんはあくまでも高機動車推しなんだな。


「いや、高機動車、現地に先乗りしてたんで、教会の駐車場に止まってたよ。」


「はぁ?軽井沢の教会の駐車場に高機動車?」

声が裏返った橋田さんの反応に全員大爆笑。


「いや、ほら、みんな笑ってるけど、これ笑い事じゃないのよねー。わたし、外出がこんなに大変って知らなかった時、横浜、伊勢佐木町に洋服買いに行くって外出申請したら、なかなか許可下りなくて、軽く総務を脅したのよね。気軽に外出も出来ないならこんな仕事辞めてやるって。まだ若かったよね、わたし。で、ようやく外出許可がおりて、出かけようと思ったら、下田くんと一緒よ、通用口に高機動車が止まってるんだもん。想像してみてよ、高機動車従えて伊勢佐木町で買い物できる? 馬車道に高機動車走ってたら、もうニュースものでしょ。で、イセザキモールの入り口に高機動車?そんな恥ずかしいことできないよね。で、外出キャンセルして、それ以降、外出してないもん。」


なるほど、みんながあまり外出しないわけだ。


「柏木さんに同情しますけど、でも、私、横浜行ったことないですけど、昔の刑事ドラマの、あぶないポリスみたいな感じで山下公園とか、レンガ倉庫とかを高機動車が爆走する姿は見たかったです。」


絶対に橋田さんは高機動車推しだな。その前にあぶないポリスは、レパードの覆面パトカーは爆走してたけど、高機動車は出てきてないと思うけど、でも確かにどこかで高機動車が爆走しているのを見たような・・、あ、あれだ。

「アニメの『ゲート、 自衛隊 彼の地にて、斯く戦った』で高機動車大活躍してましたよね、あれ見ると、高機動車、めっちゃかっこいいですよね。」


「そうそう。ゲート、懐かしのファントムIIや、名機C1輸送機も出てくるし、空自でも大人気なんですよ。特にC1は国産機なのに、輸送機だからドラマとかアニメとかでもあまり活躍の機会が無いですよね。」

「たしか、C1って、『ひそね&まそたん』でも出てきましたね。」

「そうそう!フトモモ、かわいいですよねー。」


「橋田さんって、うちのヲタク代表の下田くんと張り合えるなんて、かなりアニメ見てるんだね。」と、柏木さん。

「いえ、そうでもないんですけど、やっぱり空自関連は見ちゃいますね。」

「なるほどねー。その、ゲートとひそね&まそたんって何処で見られるの?わたしも見てみたい。」

「今見られるかわからないですけど、私はNetfrogで見たと思います。」

「そーか、わたし、Netfrogは恋愛ドラマ専門だったから、アニメも見てみよう。」


「私はね、ゲートは見たよ。でも、まそたんってのは見てないから、見てみよう。C1がかわいいってのが気になるよね。」

飛鳥馬さんも相当なヲタクだと思ってたけど、見てないアニメがあるんだな。


あれ?そういえば、高機動車で流されちゃってるけど、この話って・・。

「高機動車でかなり脱線しましたけど、結局柏木さんの初デートってどうだったんですか?」


「あ、そうね。どこまで話したか思い出せないけど、大学生になって、少女のような夢をあきらめた後に、サークルの先輩と水族館に行ったのが初めてかな。自分で先に言っちゃうけど、この話、さんざん引っ張ったのに、ド定番の水族館なのよねー、いやー、デートなんて場所じゃななくて、相手次第ってことよ。あはは。」


なんなんだ、このオチの無い話し・・。


この後は、お酒が弱いと言ってたはずの橋田さんが3杯目の生ビールを飲み干すまで、くだらない話で盛り上がり続けた。


「しつれいしまーす。そろそろラストオーダーですけど、〆はどうされますか? おすすめは鮭いくら茶漬けですが、どうでしょう?」

店長のおすすめは本当にピンポイントでツボを突いてくるよな。


「じゃ、鮭いくら茶漬けと、ラスト一杯、『大虎一代』お願いします。」

「わたしもお茶漬けと、最後、生ビールお代わりで!」

「私もお茶漬け、あとウーロン茶下さい。今日は飲みすぎちゃった。」

お、橋田さんが我に返ったようだね。オレも鮭いくら茶漬け食べようっと。

「オレもお茶漬けとウーロン茶下さい。」


「ハイ、よろこんでー。」

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