第43話 スープカレー

 木曜日の朝が来た。朝食食べに食堂へ行くと、またしても柏木さんが朝食中だった。

「おはようございます。今日も早いですね。」

「おはよー。昨日ちゃんと食べなかったから、お腹すいちゃったんだよねー。」

「え?食べなかったって、昨日は〆に鮭いくら茶漬け食べたじゃないですか。」

「あ、あれは〆じゃないもん。部屋戻ってからNetfrog見ながら缶ビール飲んでたんだけど、ツマミ買っておかなかったから、食べるものなかったのよねー。」

「Netfrog、まそたんですか?」

「あ、アニメはまだ。わたし、毎日恋愛ドラマ補給しないと枯れちゃうのよ。」

「・・・」

「ちょっと、なんか言いなさいよ。無視はダメでしょ、無視は。」


そこへ飛鳥馬さんが入ってきた。

「おはよう。相変わらず朝から仲良しさんですね。」


「違います!」

「違います!」

お、シンクロしてしまった。ヤシマ作戦か?


「おはようございます。今日は和風で、イカの一夜干し、カニだし巻き卵、わかめ酢、納豆、玉ねぎの味噌汁、デザートはリンゴです。」

いつものスタッフが朝食を持ってきてくれた。


「うわぁ、こういうの好きなんだよね。」

と、飛鳥馬さん。


朝食を終えて、今朝はコーヒーではなく、お茶を飲んでいると、橋田さんが入ってきた。

「おはようございます。」


「おはよー橋田さん、結構飲んでたけど、大丈夫だった?」

柏木さんは、すっかり女子会仲間になったようだ。


「実はちょっと気持ち悪いんですよね、胃がむかむかしてます。皆さんは大丈夫なんですか、あれだけ飲んで。」

「たぶん、二人とも部屋戻ってから、一人二次会してたと思いますよ。」

「えぇ、まだ飲んだんですか! 私はもう限界でした。でも、楽しかったですね。あんな楽しい飲み会は初めてでした。あれなら毎晩でも飲みたくなる気持ちがわかります。」


「そうだよね、美味しいい楽しいし、良いことしかないよね、お酒って。」


飛鳥馬さん、それ美化しすぎ・・。


「では、いつも通り、予定を再確認させて下さい。今日も研修棟の電脳訓練室で、午前中が7班、午後は6班になります。昼食もいつも通り、司令部の食堂に席を用意しておきますね。」


「午前7班、午後6班。昼食は司令部食堂、了解しました。それでは行きますか。」


今朝からジープの助手席は飛鳥馬さんから女子会仲間になった柏木さんに席替えになったようで、二人でなにか楽しそうに話してる。


研修棟の電脳訓練室へ入ると今朝も山崎センター長がボタン連打測定器で連打のトレーニングをしていた。


予定通りに午前の研修を終えて司令部庁舎の食堂へ入る。相変わらずの喧騒だが、今日はエプロン姿の救いの神を待たずに、勝手知ったるで、いつもの観葉植物の陰の席へ座った。


いつものエプロン姿のスタッフが配膳カートを押してやって来た。

「お疲れ様でした。今日のランチは名物のチキンと野菜のスープカレーです。あとは、ラムチョップ、コールスローサラダ、わかめスープとデザートの牛乳プリンです。あと、皆さんにはメロンクッキーが付いてます。ごゆっくりどうぞ。」


「お、これが初日に橋田さんが一押ししてたスープカレーだね。」

「あ、確かにアスパラも入ってる。」


うん、確かにスパイシーで香ばしい匂いが食欲をそそるぞ。

「うまそうですね。」


まずは、スープカレーからでしょ。スプーンで鶏肉をつつくと、簡単に裂けたので、一口分だけスプーンに乗せて、スープと一緒にパクっと。おぉ、これは美味い、リンゴと蜂蜜が入ってるかは知らないけど、ヒデキも感激するだろう。

「うわ、チキンホロホロ。カレーは野菜の甘味とスパイスで絶妙ですね。確かにこれは美味いです!」


「ほんとねー。野菜の甘味が凄いねー。」

「この甘味があるから、かえってスパイスが際立つんだろうね。スイカの塩みたいな感じだね。」

柏木さんも飛鳥馬さんも絶賛だ。


そしてまた、単品だったら相当クセがあるはずの香辛料タップリでラムの味と香りが満点なラムチョップが、スパイシーなスープカレーとの相乗効果でまろやかにすら感じるぞ。この組み合わせ、神セットだな。


ランチ後は、昨日お土産屋を見てしまったので、特にすることもなく、植込みの脇に置いてあるベンチで3人でボーっとしていたら、ちょうど橋田さんが通りかかった。


「あ、橋田さん! お疲れ様ー。 今日のランチ、一押しだったスープカレーでしたね。すごい美味しかったですよ。」

「ですよね、野菜の甘味が凄いですよね。アスパラも気持ちいい位の歯ごたえで、私、カレーライスより、スープカレーの方が好きなんです。」

「ここの食事ってホントに美味しいから食べ過ぎちゃうよねー。なんか体重くなった気がするし、ちょっと身体動かさないといけないかな。」

「あ、私今夜はジムへ行く予定なんですけど、一緒に行きますか?」

「あ、いいな。わたしもジム使えるの?」

「誰でも大丈夫ですよっていうか、基地の中に入れる人なら誰でも使えますから。」

「じゃ、行く。連れてって。」

「ハイ、一緒に行きましょう。」

女子会チームは今夜の予定が決まったようだ。

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