第23話 研修センター
火曜日の朝、朝食に食堂へ行くと、もう飛鳥馬さんが食事をしていた。
「おはようございます。昨日は結構飲んでたみたいですけど、二日酔いとか無いんですか?」
「おはよう。いやいや、あれくらいじゃ酔っぱらわないし、二日酔いなんか全然。」
ふーん、オレの父親は深酒すると翌日の朝は真っ青な顔で、もう一生酒は飲まん、とか言いながら仕事に出てたけど、酒豪な人たちってちがうんだな。
「飛鳥馬さん、下田君、おはようございます。」
柏木さんが食堂へ入ってきた。
「おはよう。」
「おはようございます。」
「昨日は飲みに全振りしちゃったんで、あまり食べなかったからお腹すいちゃってるんですよね。」
柏木さんはそう言うと、トーストをちぎってコーンスープに浸して食べ始めた。
うん、こっちも平然としてるね。チーム酒豪、恐るべし。
3人とも朝食を食べ終えて、オレと柏木さんが搾りたて牛乳、飛鳥馬さんがコーヒーを飲んでいると、橋田さんが食堂に入ってきた。
「おはようございます。今日も一日、よろしくお願いします。」
そのままオレ達のテーブルに座ると、大きな手帳というか、ノートを開いた。
「本日の予定を再確認させてください。本日は研修棟の電脳訓練室で、午前中が5班、午後も5班の訓練の予定です。昼食は司令部庁舎の食堂でお願いします。みなさんの席はわかるように用意しておきます。司令部庁舎は研修棟の隣になります。私は、午後の研修終了のころ、電脳訓練室にお迎えに伺います。」
「午前、午後ともに5班の訓練、昼食は司令部庁舎の食堂ですね、わかりました。みんなの準備がオーケーなら行きますか?」
飛鳥馬さんがオレと柏木さんを見た。
オレは牛乳の最後の一口分を飲んだ。
「はい、オレは大丈夫です。」
「わたしもオーケーです。」
「じゃ、今日も一日頑張りましょう。では、行きますか。」
橋田さんのジープで研修棟へ向かう。
研修棟の入り口には、白衣姿の男性が待っていた。
ジープを降りると、橋田さんが紹介してくれた。
「こちら、研修センター長の山崎です。 山崎センター長、ご存じだと思いますが、こちらが電脳研究所独立小隊の皆さんです。」
「おはようございます。研修センターの山崎です。今日からよろしくお願いします。早速ですが、電脳訓練室へご案内しますので、こちらへどうぞ。」
「では、私は、また夕方お迎えに参りますね、行ってらっしゃい。」
橋田さんのジープが走り去った。
電脳訓練室に入ると、お台場の研究所と同じ測定器具が並んでいた。
「今回のトレーニングですが、実践形式で、皆さんが普段されている訓練を見せて頂いて、それをコピーすることを考えてます。」
「わかりました。隊員の皆さんはすでに自衛官として体系的なトレーニングを受けているプロの皆さんですので、これから更なるスコアアップができるかは、正直、こうしたらこうなる的なものではなく、元々のセンスであったり、感覚であったりいう部分だと思ってますので、私たちの訓練を見て頂いて、感じ取って頂くのは有効だと思います。」
「はい。私ももちろん、今回のトレーニングでいきなり何かが変わる、ということはなく、これから徐々に隊員たちのスコアが上がっていくことを想定しています。」
なるほど、各基地の研修センター長でも、オレ達が、別世界線から現れた人間であるという情報は開示されていないんだな。
オレ達もトレーニングの結果、今のスコアレベルまであがったとはいえ、そもそも土台が違うので、この世界の人たちの場合、まずは、オレ達と同じ土台まであがる必要があって、そこに到達する方法はオレ達自身も知らないんだもんな。だって、朝起きたらいきなりここに居たってだけなんだから。
そういう意味では、結局、オレ達のトレーニングをコピーする位しか出来ることが無いってことなんだろうな。
みんな、このトレーニングを期待してるんだろうけど、オレ達はチートなだけだから、なんか後ろめたくなっちゃうな・・。
訓練室のドアがノックされ、隊員たちが入って来た。
「失礼します!レーダー1班、班長石川以下4名、特別トレーニング受講に参りました!」
「同じく、整備3班、班長塩川以下4名、特別トレーニング受講に参りました。」
「通信施設1班、班長高野以下4名、よろしくお願いします。」
「管理施設4班、班長香木原以下4名、よろしくお願いします!」
「衛生2班、京本以下4名、トレーニング受講、よろしくお願いします。」
「はい、全員揃いましたね。ホワイトボードに書いてある通りの席順で着席してください。まずは、自己紹介しましょう。私は研修センター長の山崎1尉です。そしてこちらが電脳研究所独立小隊の飛鳥馬3尉、柏木3尉、下田3尉です。諸君らは、独立小隊の実力に関して昨日のデモで分かってると思うので、早速実践トレーニングを始めましょうか。と言っても、特別なことをする訳ではなく、独立小隊の皆さんと一緒にトレーニングをして行きます。では、飛鳥馬3尉、よろしくお願いします。」
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます