第19話 デモンストレーション
昼食後、橋田さんとジープで今日のデモンストレーション会場である、講堂へ移動する。今日の演目は3つ。トップバッターはオレで最近C国が仕掛けてくる率が高い、テリトス。次が柏木さんが電車でYO、見どころはまるでデモ動画を見てるかのような、完璧なタイミングでの電車操作。そして最後はわれらがボスキャラ、飛鳥馬さんのエスエスコンバット9、これは流石元eスポーツ経験者ならではの凄技のオンパレードが見られると思う。
会場の講堂に入ると、舞台一面のLEDディスプレイのうち3分の2にゲーム画面が映され、残り3分の1にはプレイヤーシートが映されている。そして舞台の右下にスポットライトで照らされた特設のプレイヤーシートが設置されていた。
会場内は既にほぼ満席で、オレ達が会場入りすると大きな拍手で迎えてくれた。
「こりゃぁ派手だね・・」
ブツブツ言いながらも飛鳥馬さんがシートに座って調整を始めた。シートの調整だけではなく、ライトの位置にも指示を出してる。余計な光があると集中できないし、コントローラーで反射したりして目に入ったらプレイにも支障が出るので、折角ライトばっちりで綺麗に撮ろうとしてくれてるんだろうけど、設置されてた大半のライトが取り外されてしまった。
「よし、オッケー」
飛鳥馬さんがシートの登録ボタンを押して、準備完了。続いて柏木さんがシートに座って調整を始めた。ライト類の調整が終わってるので、調整は簡単に終わった。これで2人の準備は完了。最後は、最初の演者であるオレがシート調整を終えて、シートに座ったまま飛鳥馬さんに報告する。
「オレも準備オッケーです。」
「よし。じゃ、やりますか。御覧の通りの満席で、皆さんの期待値の高さがわかるよね。期待に応えてバッチリ決めましょうか、ね。 では、橋田さん、いつでも始めてください。」
「了解です。開演します。」
橋田さんが
「お待たせ致しました。これより、電脳研究所独立小隊による、ゲーミングデモンストレーションを行います。まずは、C国戦での頻度が高い、テリトスです。下田3尉、よろしくお願いします。」
テリトスが始まる。デモンストレーションなので、なるべく大技を使うようにプレイを進める。着地直前に回転させて横滑りで隙間を埋めると会場からどよめきが聞こえる。テリトスを右端から左に向かって立て続けに最速で落としつつ横一列をクリア、会場声が更に大きくなる。最後は回転させたまま落としているのに横一列をクリアするという実践では役に立たないネタを出したが、これはバカ受けしたようだった。
大きな盛り上がりのなか、デモンストレーション終了。
柏木さんへシートを交代する。
「続きまして、実践ではポイントに差が付きにくく、苦手意識がある人が多いと言われている電車でYOです。柏木3尉お願いします。」
大技がない地味なプレイになるゲームなので、会場もシンと静まったままだが、まるでデモ動画のような、完璧に運行したままの状態で3駅過ぎたあたりから、会場から、ほんとにプレイしてるのか?という声でザワザワしはじめてきた。ペナルティなし、全てのボーナスポイントを最高点でとりながら、遂に次が最終駅。こんなに地味なゲームなのに、会場は爆発寸前の熱気でムンムンしている。最終駅に定刻ピッタリ、停止位置ピッタリで止まってボーナスポイントが出た瞬間、会場全体が大きな歓声につつまれた。静寂から徐々にもりあがって、全員が最も盛り上がる瞬間が分かっているので、見事全員が一体となった歓声だった。
遂に大トリ、飛鳥馬さんがシートに座る。
「最後は定番のエスエスコンバット9です。飛鳥馬3尉、よろしくお願いします。」
流石、研究所のリーサルウェポン。敵編隊に真っすぐ突っ込んでいって、バレルロールしながら何事もなかったかのようにすれ違って、そのまま宙返りをしながら敵編隊を全機撃墜しつつ、失速して木の葉のように落下させた。海面すれすれでポップアップ、その勢いのまま次の敵編隊も全機瞬殺し、直ぐに急降下。ランディングギアを出したら地面を走れるほどの地面ギリギリで森の木々の間をすり抜けながら敵基地に向かっていく。基地に近づくと戦闘機の攻撃とは信じ難い、機銃の水平射撃だけで基地を壊滅させてしまった。会場は、シーンと静まり返っている。声も出ない、とはこのことなんだろう。飛鳥馬機は、燃え盛る基地を後ろにハイアングルで一気に超高高度まで登り、誰かに挨拶するかのように両翼を振ったあと、今度は一気に、ほぼ垂直に急降下。だが、雲を抜けたそこには敵空母の姿。直上から全ミサイル一斉発射して一撃で空母を撃沈。機体を引き上げると、今までの大騒ぎから一転して悠々と海上を飛行し始めた。
ここで会場は窓が割れる勢いの歓声で包まれた。
当然、実戦でこんな無駄な動きをする訳がないのだが、エンタメとしては最高だった、ってか、いつこんな実践で使えない技の練習してるんだろ?
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