第3章 イマーゴ大陸

第29話 弱った原因

 アミルがつい反応をする。


 アミルも成長が遅く、最近まで生えていなかったから、気にしていたようだ。

 生えてきたときには、喜んで見せてきた。


「うん? なにがじゃ」

「まあいい。そんなモノを見せろと言っていない。世界樹の事です。何かが出来るかもしれない」

「そうか、そうだな。霊木様の為に、今は何でも試すのも必要か…… よし、共に来い。特別に招待をしよう」


 少しおかしなこの女性、精霊種の巫女だったようだ。

 彼女が就任してから、たまたまなのか木の調子が急に悪くなり、集落の皆から突き上げられていた。

「私のせいではないのに……」

 先代から習った儀式を粛々と務めていた。それなのに効果はなく。まるで、悪しきものでも、取り憑いているのではないかと思う始末。


 エンシェントドラゴンが現れたとき。助けだと、これは何かの運命だと感じて、見に来た。

 当然、焦ってることは見せないが、頭は綺麗に回っておらず。とんちんかんなことをする。


 他種族に、肌を見せてしまうくらいには……


 ドラゴンの背に乗り、海を渡る。


 しばらく飛ぶと、光り輝く木が見えてきた。

 その上部は雲を突き抜けさらに続くが、実体があるようではなく、そう高濃度のエネルギーが、柱になったような、木の形をしているだけの気がする。


 近付くにつれ、その大きさはとんでもなく、ドラゴンさえもかわいく思える。


 やがてその麓へと、到着をする。


 ドラゴンは敬われているようで、人々は集まり礼を取っているのだろう。胸に手をあて、頭を下げていた。


 それは良いが、巫女が降り、俺達が降りるといきなり警戒態勢になる。


「貴様ら何者?」

「まあ待て、エンシェントドラゴン様が連れてきた者達じゃ。名乗って貰おうか。私は集落の長、エルランド=ボリス=ヴィンセント=ブロムダールと申すもの。そなた達は?」


 そう聞かれて、どこから説明すれば良いのか悩んでしまうが、名前だけでも伝えることにした。

「ヒト族で、アシュアス。弟の病気を治すために旅をしている。世界樹。霊木様が調子が悪いと聞き、何か出来ないかとやって来た」

「同じく、ヒト族リーポス」

「同じくフィア」

「アミルです」

「クノープだ」


 それを聞いて、長はハンという、馬鹿にした感じで薄ら笑いを浮かべる。

「ヒト族に何が出来る。何の力も感じんでは無いか」

 そう言ったとき、ドラゴンから言葉が降ってくる。


「長とやら。この者達の力を感じんと言うなら修練が足りぬな。こやつらは抑えているだけだ。おい見せてやれ」

 ドラゴンにそう言われて、解放をする。


 あーうん。初めての体験だったのかな?


 慌てふためき、腰が抜けて、集まっていた人たちが色々な物を漏らした。


 一人巫女だけは、反応がおかしい。

「力が入らない、駄目。出ちゃう見ないで」

 と言いながら見せてくる。


「コイツ、見せたがりなのか?」


 そして、まあ。

「見苦しいところをお見せした。そなたら本当にヒト族か?」

「そのはずですが」

 アシュアスが答えると、長は考える。


 たまに、迷い込む者達がいる。

 あれは、劣等種でヒトでは無かったのかもしれない。


 どう考えても、この者達と同じ種族だとは思えない。

 特に、目の前のアシュアスと言う少年。

 昔お会いした、精霊王に似た感じがする。


 うむむと、考え始める。



 そして……

「とりあえず、状態を教えて貰っても良いかな?」

「えーとねえ。こう、見ての通り全体に力が無いでしょう? 光も弱いし本当はもっと光っているの」


 そう言われても、元が分からないと比較が出来ないな。

 だけどまあ、力の流れを見てみることにする。


 そっと木の幹に触れて、流れを見る。


 その時、背後では盛大に精霊種が驚いていた。

 そうそう、精霊種とか守人とか言われているが、種族名はエルフと言うらしい。

 耳の長さで力が違い、寿命にも差があるとか。


 全体的にほっそりしている。


 そして自然と共生するためか、最低限の服。

 透けるような薄いドレスを着ている。

 男も女も。


 だがその生地は、森にいるシルクドワームという、特定の木にくっ付いている虫から採っているようで薄くて丈夫。



 そのワームに紛れ、糸の取れないワームがいて、そいつが木を食い荒らすと怒っていた。

 それは後で聞いた話。


 力の流れを見ていると、根の周囲に幾つも妙な反応がある。

「何かが居るぞ」


 魔法を、エネルギーの流れに沿って流し、攻撃をしてみる。


 木が大きくて、なんとなく大したことが無さそうだが、百以上もいる。


 地面の下で、爆発が起き、地面が揺れる。


「あっ、やばい」

 根が傷ついた。

 あわてて修復をかける。

 普通の植物とは違って、イメージで意外と修復が出来る。


 そうしていると、そのくっ付いていた何かが、地上に向かって、這い上がってくる。


「何か来る。皆さがって」


 震動がするので、あわてて皆が下がり始める。


 だが、巨大な根元から這い上がったそれは、地中から地面へコロンと出ると、いきなり形が変わり、芋虫だったのに、鎌のような手が生える。

 そして、木の幹を一気に這い上がり始める。


 当然見ているだけではなく、攻撃を開始する。


 だが見えているのは、自分たちのいる所。

 幹自体が直径で数キロあり、とてもじゃないが、手が回らない。


「頼む。退治を手伝ってくれ」

「おっ。わかった」

 エルフさん達が、弓を持って走って行く。


 モンスターは、シカーダラーバと言うらしい。

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