第22話 エルレラ大陸、港町アルトゥロ。

 その後も釣りをしたり、楽しく船の旅を楽しむ。


 ああ途中で、海賊とやらが来たが、瞬殺をしたよ。

 きちんと、アジトまで連れて行ってもらい。一網打尽。


 定期船の船長さんから、良い休憩場所が出来たと喜んで貰った。


 海図に乗っていない小さな島。

 雑だが、港が造られていた。

 元は火山だったようで、水も湧いていた。


 船の後ろに、海賊船を係留して引っ張っていく。

 むろん海賊を満載。

 もう一つには、助けた人たち。

 そして財宝。


 それを引き連れ、エルレラ大陸、港町アルトゥロへ到着をした。


 定期便なのに、岸壁には兵が押し寄せ、異常な雰囲気。

 近場で漁でもしていた人が、見た目で海賊船だと分かって通報した様だ。

 定期便を捕まえ、人質交渉でもしに来たと、判断をしたのだろうか?


 あわてて船長が、船縁に赴き説明をする。


「乗り合わせた冒険者の尽力により、海賊を捕らえました」

「冒険者だと? まあいい。上陸を許可する」


 偉そうにふんぞり返っているのは、衛兵隊長ジャニス=アハーン。犬系獣人。

 体毛の薄い半獣人タイプ。

 背中や腕、足などには毛が生えている。

 犬種や、交配具合で毛の量が変化をする。


 終始偉そうな態度で、引き渡しを求めギルドで少しもめる。

「海の上だろうが、何処だろうが、無法者を退治するのは国民の義務だろうが」

「ギルドでは、領主様との約定やくじょうがあります。捕らえた分報償を払っていただきます」

 そんな感じ。


 やっと引き連れて帰ったが、彼女ジャニス=アハーンはその途中、州兵に囲まれる。


 そう、貴族に多いのは純血種である、全身に毛が残っているタイプ。


 むろん毛の多少に関わらず、服は着ている。

 そして、毛の多さと口吻こうふん。マズルとも言われる、口の部分も長さが比例をしている。


 つまり毛が少ないほど、人種に近くなる。

 そして手先。つまり指の長さも比例するため、道具を使ったり造ったりするのは、毛の薄い方が重宝される。


 そのため、歴史の中で支配層と、被支配層で別れてしまっている。


 そして捕らえた、海賊達の引き渡しを州兵に求められると、衛兵隊長ジャニスは引き渡すことになる。

 州兵の隊長は、男爵家の三男。

 結構毛が多い。


「ふん。混ざり物が」

 そんな捨て台詞を残し去って行く。


 そして、港に来た海賊を捕らえたと、適当なことを言って報告をする。

 むろんギルドの報告が来るため、すぐにバレるのだが、領主である領主ランドン=メルヴィンはあろうことか、ギルドの報告を握り潰す。


 ギルドは、働くものの互助会的な側面が強い。

 そのため、下賎の組織だと考えている。


 今回捕らえた人数が多く、もし討伐料を支払うなら結構な金額となる。

 たまたま、自領に来だけで、その金を払うのは勿体ない。



 そして財宝は、捕まっていた人たちに分けたりして、すでに消えていた。

 そう、盗賊の捕縛などをしなおして、ジャニスがギルドへ来たときには、すべて話が終わっていた。


 大部分の被害者は身一つだったのだもの。解放されて良かったねとは行かないだろう。ものすごく速やかに処理が行われた。


 そして、アシュアスはセントリア大陸側、トヨースのギルドからの手紙を渡す。


「はい。皆さん銀…… その若さですごいですね。では継続をして銀級での登録となります。こちらが、エルレラ大陸での登録証になります」

 貰ったのは、鎖で繋がった金属タグだった。


「このタグ、銀製ですので、なくすと再発行に銀貨三枚が必要です。取り扱いには、お気を付けください」

 向こうでは、札だったのだが、鎖の方が便利かな?

 ただこの鎖、ただの鉄で結構細い。

 別の何かに、換えた方が良さそうだ。

 特に、リーポスはすぐに落としそうだし。


「すみません。安くて安全な宿は、ありませんか?」

「そしたら、ギルドから出て右に曲がり、すぐの角をもう一度右に曲がれば通りに出ます。その先に行っちゃうと物騒なので、手前側の宿がいくつかあって、安いところのなら、矢場荘とか粒零荘。美味しい料理のところなら、稲葉荘という所があります」


「ありがとうございました」

 そうは言ったが、実際に行ってみると、話し以上にやばそうだった。

 この裏通り自体が活気がなく、昔使っていた波止場からの通りだったようだ。


「大きな波止場を造って、旧の通りが廃れたんだな」


 そうだね、といいながら見ると、その古い波止場のそばに小綺麗な建物がある。

「周りは廃屋っぽいけれど、あそこの店だけ綺麗だね」

「何だろう。美味しそうな匂いがする」


 そう言って、リーポスが走り出す。

 そして、腕を振り上げたとき、早くもキラキラしたものが飛んで行く。

 そう銀級のタグ。

 鎖が脆すぎ。


 拾い上げて見ると、鎖が切れている。

「革紐か何かで作り直そう」

「そうだね」

 リーポスは落としたことにも気が付かず、店の前でクルクル回っている。


 そして踊っているリーポスじゃないが、何かが焦げたような芳醇な匂い。

「これはすごい。匂いだけでよだれが出る」

 珍しく、クノープが匂いに釣られた。


 店の脇で焼かれていた何か。

 炭火で木の串に刺したものを焼いていた。

 三角形のもので、紐のようなものがくっ付いている。

「触手?」

 

「なに、あんたら?」

 ぶっきらぼうな、感じで出てきた女の子は、耳がついているから獣人だろうが、ほぼ人の姿。


「荘って書いていないけれど、宿泊って書いてあるから、泊まれるの?」

 そう言った瞬間、若そうな彼女は顔つきが変わる。


「おおおお。おかあさーん。宿泊だってぇー」

「怪しそうな奴らじゃないだろうねぇ」

 そう言いながら、出てきた女の人は、獣耳がない。

 人のようだ。

 俺たちを見ると……


「へい。へいへーい。いらっしゃい。へいへいへい。お泊まり? いっ、喜んでぇ。五名様? そうぅですか。くーうぅ。良いねぇ。お気が変わらないうちに、ささ。どうぞぉー」

 いきなり、眉間に寄っていた皺がなくなり、満面の笑み。

 そして、態度が豹変をした。


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