第3話 ランクテスト
「登録はこれで終了です。後は、代表者とチーム名を決めてください。皆さんでチームを組みますよね」
「そうか。チーム名」
「そう言っても、浮かばないね」
「代表者はアシュアスよね。この旅そのものが、奇跡の実を探しに行くという目標だし」
「良いんじゃ無いか?」
僕以外から、オッケーが出た。
「それで良いの?」
「いいだろ。俺達はお供だよ」
クノープがそう言うと、皆がうんうんと頷く。
「あとは、チーム名」
「なあ、父さん達のチームって何だったっけ?」
クノープが、そう言えばと思い出したように聞いてくる。
「ええとね、『破天の狂炎』だった気がする」
何とか思い出す。
「狂宴なら、シルティアさんがリーダーだったの?」
フィアが、えっそれじゃあという感じで、ぶっ込んでくる。
「なんでよ。それに、狂宴じゃなく炎なら、サローヴァさんじゃないの?」
リーポスが言い返すが、みんなが首をひねる。
「ええー。サローヴァさんなら、狂炎じゃなく漆黒の炎とか、もっとねちっこく足下から焼かれるような気がしない?」
「する。実際焼かれたことがある」
皆が思い出したようだ。
昔、勝手に果物を取って追いかけられ、あっという間に炎に囲まれたあの日。
「ええと、皆さんの親御さん。チーム名は『破天の狂宴』リーダーは鉄壁の盾使いバスタさんです。まだ登録をされていますから使えませんし、昇級制限が掛かって銀級から上に上がれません。実力がありますが、護衛依頼で、貴族を半殺しにしています」
「半殺し? 無茶苦茶だけど、あんまり変なことはしないと思うけれど」
つい反論というか、言い返してしまった。
「そうですね。貴族が、シルティアさんを妾にしてやる。喜べとかほざいたから殴った。そう報告書が付いています。反省無用とも」
「ああ。やりそう。シルティアさんて、特別だもんね扱いが」
「そうなの?」
リーポスだけが、きょとんとしている。
「それはそれとして、どうされます。希望の探求者とか、奇跡の翼とか。親御さんを習って、深淵の求道者とか破滅の軍団、蒼天の剣とか堕天の軍団とか?」
「いや、ティナさん。どうしたって、教会から異端者扱いで、追いかけられそうな名前が混ざっていますよね」
「そうですか?」
また、こてんと首をかしげる。それを見て、こちら側の女子陣。瞬間的に目が冷たく光る。
「もう、奇跡の探索者で良いじゃ無い。奇跡の実を探しに行くんでしょ」
「それは、そうだけど」
「では、『奇跡の探索者』さん。ランクテストを行います」
「えっ」
「もう決まりました。夕方になると混むので。お相手は銀級のチーム。漆黒の兵団がやりたそうなので、訓練場へお願いします」
漆黒の兵団て、一体? そう思ったら、さっき伸びていた人たちだった。
「銀級になれば、いっぱしの冒険者といえます。その下には、黄銅、銅、青銅、鉄が初心者ランクで、未成年は準構成員です。強さだけなら、銅までいきなり上がれます。それ以上は、実績を見せていただきます。そして、ギルドが身分保証を行い、他の町で活動をするなら黄銅級が必要です。護衛の資格も黄銅級です。国外に出られるのは、銀級以上です。むろん出て、向こうで登録をするのは問題ありません。只、一からとなります。彼らに勝てば文句なしで銅級です。頑張ってください」
一気に説明をされる。
すごい目で睨んでいるのは、コークって言う男とイリオという男。
そんな頃。
クレッグは自室で悩んでいた。
手紙に書かれているのは、『娘は、リーポス。十五歳になったよ。私の娘と仲間達。世話を頼む。』それだけ。裏返したり透かしたり、縦に読んだが文字列は1行。
丁度、護衛を彼らが引き受け、村へ行った年。
計算をすれば、合わないことはない。
その頃、恋人では無かったが、覚えはある。
酔った勢いで、お姉様と言いつつすがり付き…… 幾度か……
「だぁー。畜生」
ふらふらと、訓練場へ向かう。
ちょうど、試験をしているのだろう。
両チームが向かい合っていた。
漆黒の兵団。
チーム代表イリオと、コークが前衛で剣士。
ピエダは女であり、魔法師。
レヒーナは弓を扱う女性。
ロッホが男で盾使い。
同じく、あいつらも、アシュアスが剣を持っている。
シルティアの娘リーポスも剣。母親の面影がある。
弓使いのフィアと魔法師のアミル。
クノープが、槍と盾を使うようだ。
戦いは静かに始まり、先手としてピエダが、アシュアス達の足下に炎をばら撒く。
炎が舞い上がり、同時に土煙も舞い上がる。
そして。
「はあっ?」
今の一瞬で、奴らは距離を詰めて、男二人をぶん投げ、ピエダとレヒーナは腕を取られて、地面に這いつくばらされた。
アシュアスというガキは、とっさに剣の柄頭を抑え、ひねり込んで背後からすくい上げた。コークは後頭部から地面だ。ぶつかる寸前に止めたようだが、殺し方を知ってやがる。
盾は、当たる寸前にクノープが面を変え。一気にすくい上げた。
そして、剣士のはずだが、リーポスの拳が腹にめり込み、イリオが空中に五十センチは持ち上がった。
「あれ、死んでないよな」
クレッグはついぼやいてしまう。
「ええと。やめぇぇ。勝者『奇跡の探索者』です」
剣士なのに、手の方が早い。姉さんと同じじゃないか。
ははっ。思わず笑いが出る。
あの縮地のような、前に転んでいくような、間合いの詰め方。
速度を見ると、全員が、身体強化が出来るという事。
「もしかして、こいつら。ガキの頃から鍛えられたのか。あの化け物達に」
『おら寝るなクレッグ、ビッグになるんだろ』
そう言って、笑っていた奴ら。阿呆なことをして、上には上がれなかったが、強さだけなら、王国でも上位。
そんなことを、ぼやきながら見ていると、リーポスがにへっと笑ってくる。
軽く手を上げ、その場を後にする。
「それじゃあ。銅級です。昇級試験を受けるなら、申し込みをしますけど」
当然だが、返事は一つ。
「受けます」
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