新たな人生

 その日、夏子は図書館にいた。仕事で必要な資料があり、パソコンで検索して、資料のある場所に向かう途中、見慣れた場所に見たことのない題名の本があった。見慣れた場所、宮沢賢治の棚だ。「タイムトラベル」その本の名前だ。下を見ると宮沢賢治とあった。まさか、夏子は本を取って読んでみた。そこにはあの日のことが描かれていた。

 「不思議ですよね、それだけ完全に大人向けなんですよ。しかも生々しくて、本当に賢治の作品なのかと思います。」後ろから声がして振り向くと、白髪のご老人が立っていた。夏子はびっくりしていたが、イタズラっぽく微笑んで、「賢治も人間ですよ?」と言った。はははっと笑いながらその人は歩いて行った。

 夏子は本を棚に戻した。賢治にとってとても大切で幸せな思い出だったのだろう。夏子は涙が溢れてきた。嬉しかった。

 図書館の外はあの日、賢治と別れた日のように気持ちの良い青空が広がっていた。夏子は伸びをして。軽やかに歩いていった。まるで、夏子のこれからの人生を祝福してもらっている気が夏子はしていた。

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タイムトラベル @momocello

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