宮沢賢治の家族

 清六は縁側で本を読んでいた。

 「にっちゃん、なじょした?らずもねく顔が赤いども、それに息さ上がってるし。何かあった?」

あっと清六は言ってニヤニヤした。

 「あの綺麗な人と何かあったなぁ。」

 「何もない。」

賢治は頭を掻いて俯いた。

 「今日は山本さんには実家さ、泊まってもらう、清六、案内してくれ。」

 「にっちゃんのところに泊まればいいのに。」

 「馬鹿いうな。」

賢治はまたソワソワした。

 清六さんは始終ニコニコしていた。

 「兄さんがあんなに焦っているのは久しぶりに見ました。」

そう言うと清六さんは家の奥へかけて行ってしまった。

 賢治の両親は夏子をとても歓迎してくれた。そして、夏子が未婚であると知るともう始終ニコニコしていた。

 「まさか、賢治にこんな美人の女性の知り合いがいたとは、やつも隅におけないですな。」

政次郎が言った。

 「いえ、わたしは賢治さんよりも15も歳上ですし、むしろ、政次郎さんの方に近いというか。」夏子は俯いた。

二人ともとても驚いて

「えっ驚いた。てっきり、賢治と同じくらいかと。すみませんでした。」

それからの話は花巻のことばかりになった。大正時代、この歳まで独身でいる女性はあまり良くは映らないだろう。夏子は笑顔で政次郎さんの話を聞いた。

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