宮沢賢治との出会い
大学1年生、大学に入って初めての夏、その日はとても暑い日だった。夏子はこんな日になんで大学なんか行かなきゃいけないんだと思った。昨日帰りに行っとけば、夏子はとても後悔していた。
大学の図書館の前に着く頃には、夏子は汗だくだった。自動ドアが開くとクーラーが効いていた。天国に来たと思った。
一般教養の授業である本を探さなければならなかった。夏子は文庫本コーナーの詩集の場所に行ってみた。
「あった。」
夏子は青い背表紙の文庫本を手に取った。
「宮沢賢治詩集」
夏子はパラパラと本をめくった。めくりながら教授の言ったことを思い出した。
「最初の序を一度読んでみてください。」
夏子はページを数ページめくり、序を読んでみた。
衝撃だった。今から百年も前にこんな感覚を持っている人がいたなんて。自分という存在を一つの電燈に例えていた。それは夏子が日々感じていた自己の不確実性をうまく表現していた。点滅の様子に自分の意識の本質を見た気がした。また、そのあとの歴史についての記述。今の科学から観ても、これだけ詩的でわかりやすい説明はないだろうと思えた。宮沢賢治は未来が見えていたんだ。夏子はそう思った。
夏子は図書館の閲覧席に座って、詩集を読んだ。気がつくと、外は真っ暗だった。
その日は熱帯夜だったが、夏子は帰り道、もう暑さなんてどこかへ行ってしまっていた。
夏子は駅前の書店で宮沢賢治詩集を買った。図書館で借りればいいなんて思った自分を呪った。
その日から、夏子は宮沢賢治の作品を読みあさり、宮沢賢治関連の本を読みこんだ。すっかり宮沢賢治の虜になってしまった。中でも宮沢賢治の詩集とポラーノ広場は本当に好きで、本はカバンの中にいつも入れていた。宮沢賢治の作品には様々な青が出てくる。宮沢賢治は共感覚の持ち主だったことを知り、宮沢賢治の感じていた色が青だったのだろうと結論付けたが、本当は宮沢賢治に聞きたかった。宮沢賢治のことを知れば知るほど、この人に一度でいいから会ってみたいという衝動に駆られた。
しかし、そんな夏子を変えてしまう出来事が起きた。
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