第3話 後輩

 俺に天使の後輩が出来た。

 名前は師走しわす アンズ。

 年は中学生くらい。

 異世界でとある少年の守護天使をしているそうだ。

 まだ悪魔祓いの経験がないため、俺が教えることになった。

「という訳で、俺は長月結弦だ。よろしく」

「よろしくお願いします! アンズのパートナーのリーです!」

「…………」

「ほら、アンズ、長月さんにご挨拶!」

「……よろしく」

 小さい声だった。人見知りかな。

「じゃあ、早速、悪魔退治に行くか!」

「はい、よろしくお願いします!」

「え~、本当に行くの~? 面倒臭い~」

「え?」

 何? こいつ今、面倒臭いとか言ったか?

「えっと、今回の悪魔は弱い奴だから、君でも簡単に倒せると思うぜ」

「倒すとか面倒臭い~」

「コラ、アンズ!」

「面倒臭くても仕事だからな。そんな難しいことじゃないから」

「そうですよ、アンズ。先輩に失礼のないようにしましょう」

「先輩とか面倒臭い~」

「まあ俺は、そんな厳しいことは言わないから大丈夫」

「終わったら、ふわふわとろけるパンケーキを食べさせてあげますから」

「う~ん。面倒臭いけど~、仕方ないけど~、やる~」

「よし、じゃあ行くか!」

「はい!」

「面倒臭い~」


「ここだ」

 森の中の洋館に舞い降りる。

「明らかに黒いオーラが漂ってますね」

「ああ、中に入るぞ」

「面倒臭い~」

 リーがアンズを引きずって連れて行く。いつものことのようだ。

 洋館の中は悪魔の気が満ちていた。

「奥の部屋にいるな」

「向かいましょう」

 ズルズルズル……。

 俺の思った通り、悪魔は奥の部屋に潜んでいた。

 小さく黒い体に小さな羽がついた典型的な悪魔がいた。

 俺を見て逃げようとするが、すぐに捕まえる。

「こうやって魔法陣の中に悪魔を閉じ込めて聖水をかける。簡単だろ?」

「ん~、捕まえるのが面倒臭い~」

「それくらい頑張ってくれよ。仮にも君、天使なんだからさ」

「好きで天使やってる訳じゃないし~。何か勝手に天使にされただけだし~」

「まあ天使にされた理由なんて、俺もそんなもんだ」

「…………」

「じゃあ、もう一匹、小さいのがいるから、それは君に任せようかな」

「リー、ふわふわとろけるパンケーキ、絶対ね」

「はい!」

 そう言うと、アンズは部屋から出て行き、隣の部屋の扉を開けた。

 もう一匹の悪魔を見つける。

「魔法陣」

 悪魔を捕らえる。

「聖水」

 聖水をバシャーと頭から浴びせる。

 悪魔が断末魔の声を響かせながら消えていく。

「よし、任務完了だ」

「頑張りましたね、アンズ」

「さっき言ってたパンケーキだっけ? 先輩がおごってやるよ」

「ふわふわとろとろの」

「分かった分かった」


 こうして俺に愉快な天使仲間が増えたのだった。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る