強引な朝陽のアプローチ

   ” 渉じゃなくて俺にしなよ ”


先日、朝陽が咲月に言った言葉だ。

そして、その言葉のあと、朝陽は咲月にキスをした。



(あー…、どうしよう…)

咲月は、ベットで仰向きになって天井を見ていた。

(…渉じゃなくて、朝陽…?そんな都合のいい話…。てか、キス!やば…)

咲月は手で顔を覆った。


正直、咲月はあのバーベキューの時から渉に対しての気持ちが離れていっていた。

それが、渉の態度がそうさせたのか、朝陽の

せいなのかはわからなかった。

(…渉と別れてすぐ朝陽と付き合うとか…そんな…都合のいい事したくない…)

咲月は人生で一番深い溜息をついた。



一方、朝陽はあれから積極的に咲月に迫っていった。

朝陽は他の家族に見られないようなタイミングで咲月の前に現れ、そしてキスをするようになった。


「咲月」

「…何?」

「こっち来て」

「……」

咲月は朝陽に呼ばれ、仕方なく朝陽がいる洗面所に行った。

「何で来たの?」

「え?朝陽が、呼んだから…」

朝陽は咲月の肩を抱いてキスをした。

「こうなるって知ってるくせに」

「知らないっ」

咲月は洗面所から出ようとした。

「知らないなら知っておいて」

今度はきつく抱きしめられた。

「朝陽…。見られるから…」

「ん」

「朝陽!」

咲月は朝陽を突き飛ばすと急いで洗面所から

飛び出していった。


(もう…!やめてほしい…)


それからも朝陽は咲月に迫り、咲月はそのたび身を引くような動作はするが、強気な朝陽には意味がなかった。

だが、咲月もハッキリとは拒否をした事はなかった。

そしてキスをしたあとは必ず困った顔をした。

朝陽は、咲月の気持ちを探るようにその表情を見ていた。



夜、咲月の部屋の扉をノックする音がした。

咲月はそれが、朝陽だとわかった。

咲月は、ゆっくりとドアを開け、気まずそうな顔で朝陽を見た。

「これ、ありがとう。返すの忘れてたから」

朝陽はハサミを差し出した。

「あ…、うん」

「荷造りまだしなきゃだから、また借りるかもだけど」

「…うん」

「じゃ、おやすみ」

「え…」

今日はまだキスをされていなかったので、咲月は、思わず声を上げてしまった。

朝陽は、半分後ろを向いた体をまた元に戻した。

「咲月…。キスしてほしいの?」

咲月は下を向いて首を振った。

「咲月、ちゃんとこっち見て」

咲月が顔を上げると朝陽は咲月の部屋に押し入るようにしてキスをした。

朝陽は唇をゆっくり話すと咲月の目をじっと見た。

「咲月…、もっとしていい?」

「ダメっ」

「なんで?」

朝陽は咲月の肩を軽く掴んだ。

「なんでって…」

「渉の事なんてもう好きじゃないでしょ?」

「それは…」

「俺の事の方が、もう好きでしょ?」

「……」

咲月は黙って朝陽を押した。

「部屋から出て…」

「ごめん…。わかった…」

朝陽は抵抗することもなく咲月の部屋から出た。

咲月は、ベットにもぐり込み朝陽にキスをされた唇を触った。

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