バーベキュー

今日は、渉の家でバーベキューをする日だったので、渉の友達と咲月の友達が集まってそれぞれ肉や野菜を焼いて楽しんでいた。

渉の家の庭がありえないほど大きくて、バーベキューコンロもが3つもあって、咲月は少しひるんでいた。


「なんでアイツよんだの?」

渉が咲月にコソコソと話した。

「…ごめん。私、友達少ないから…」

「少なくてもいいのに…」

「気まずいし」

「アイツがいる方が気まずいよ。1人だけ高校生でさ」

「…外面いいから大丈夫じゃない?」

「俺には悪いけどな」

「そうね…」

「もう、いいや…」

「ごめん」


咲月は朝陽をバーベキューに誘ったのが正解だったのか、わからなくなった。

そう思いながら、咲月から一番遠いコンロのグループの中にいる朝陽を見た。



朝陽は渉の友人達と座って話をしていた。

「えー、高校生なんですか?」

「うん。咲月…、あの子ね。あの子の家に住まわせてもらってて」

朝陽は咲月を指さした。

咲月がそれに気が付き朝陽は咲月に手を振った。

「えー。そうなんですか?」

「うん。あ、敬語使わないでいいよ」

朝陽がニッコリ笑った。

朝陽はイケメンではないが、笑うと目が細くなって可愛らしかった。

しかも、今日は髪をしっかりセットして、服もお洒落にきめていた。

中2の子から見ると、朝陽はかっこいい大人といった印象だった。


「肉焼けた?」

朝陽はせっせと肉を焼いている女子に話しかけた。

「うん」

「食べたい」

「いいよ」

朝陽は肉が入った紙皿を受け取った。

「名前。何ていうの?」

「浅井結花です」

「結花?」

「うん」

結花は下の名前を呼ばれて照れた。

「ねー。結花ちゃんが肉焼いてくれたよー」

朝陽は、他の子に声をかけた。

何人かが朝陽と結花の周りに集まってきた。

「もう、肉食べれます?」

「ははっ。敬語じゃなくていいって。俺、来月からニューヨーカーで、敬語がない世界に行くから、何も気にしないよ」

「ニューヨーク行くの?すごい」

「すごくないよ。親の転勤について行くだけだから」

朝陽は肉をヒョイッと食べた。

「皆、渉くんの友達?」

「そうだね。だいたい…。あっちにいるのが、咲月ちゃんの友達かな」

咲月の友達は隅のほうで、話していた。

「へぇ。一緒に食べないの?」

「さぁ。本当は、うちのクラスだけでやるって話だったのが、渉が彼女連れて来たいっていうから。彼女1人だけ違うクラスになっちゃうから、急遽、咲月ちゃんの友達もって話になって」

「なるほどね」

「俺らも、混乱してるんだよ」

「ふ~ん。俺、咲月の友達と話してこよ」

朝陽は席をたった。

「朝陽くん行くなら、俺も行こ〜」

「私も〜」

朝陽に何人かは懐いてくれていた。

「結花ちゃんも行こ」

「うん」 

朝陽が声をかけると結花は嬉しそうに笑った。



何人かで咲月の友達の方へ行き、朝陽が取り持つ形で皆、和気あいあいと話せる雰囲気になった。

そして率先して話しかけていたのが結花だった。

朝陽は、結花が面倒見がいいであろう事を予想していたので、本当にそうあって安心した。



朝陽は中学生の輪から抜けて、咲月の方へ来た。

渉はそれを察知して、咲月から離れていった。

「ごめんね。俺が来たから渉がどっか行っちゃったよね」

朝陽が言った。

「謝るのはこっちだよ。渉も、あんなにあからさまな態度取らなくていいのにね」

朝陽は前に渉と会った時に、渉に対してあからさまに嫌な態度をとったので、咲月に賛同する資格はないと思った。

「朝陽、あっちで、めちゃくちゃ喋ってたね」

「うん。高校生ってだけで、チヤホヤしてくれるからね」

「言い方〜」

咲月はフフッと笑った。

「咲月何も食べてないでしょ?俺、肉、焼いてあげるよ」

「いいの?勝手に」

咲月はクスクス笑った。

「あー、渉、怒るかな?」

「怒るだろうね」

「…いいの?」

朝陽は、不思議そうに咲月を見た。

「…いいよ」

「そっか。じゃ、大きいお肉もらっちゃお」

「あははっ。うん」



「肉」

朝陽は焼いた肉を咲月にあげた。

「ありがとう」

「俺も食べよ」

2人だけで、肉をモグモグ食べていた。

「朝陽、今日、おしゃれだね」

「咲月のためにお洒落した」

「え…」

咲月はドキッとした。

「恥ずかしい思いさせたくないからね」

「別にいいのに。でも、ありがとう」

「かっこいい?」

朝陽はニヤッとした。

「うん…」

咲月は、素直に答えた。



「咲月!こっち来て!」

渉が遠くから咲月を呼んだ。

咲月はチラッと朝陽を見てから、渉の方へ行った。

「いつまで喋ってるの?」

「…ごめん」

「…俺の友達とも喋ってよ」

「うん…」

2人は気まずい空気になった。

「あのっ。俺帰るから。お邪魔しました」

朝陽が渉を含め皆に声をかけた。

「朝陽くん帰っちゃうのー?」

さっき朝陽と喋っていた、男子が声をかけた。

「うん。今日はありがとうね」

「もうちょっといればいいのに」

結花が言った。

「ありがとう。皆、元気でね」

「朝陽くんも」

「うん。じゃ」

「バイバイ」


朝陽が自分の友達も取り込んでいるようで、渉は腹立たしかった。

咲月はその横顔を見て、胸がざわざわした。

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