第28話 fav sideY

私とSは通学友達だ。


お互いのんびりした性格だから、なんとなく同じくらいのダイヤの電車に乗っている。

自然と仲良くなって、いつの間にか一緒に通うようになった。

クラスは同じになったことはないけれど、教室に着くまで私達はいつも一緒だ。


高1の頃、Sが時々Aの話をするようになった。

正直ちょっと意外だった。

AはSとは正反対のタイプだし、2人が並んでいる絵面は想像もつかない。共通の話題があるとは思えないし、最初はSが一人で空回っているのではないかと心配になったくらいだ。


そんなのは杞憂だった。

日に日にSの中でAの存在が大きくなるのを感じた。たまにAを交えて3人で帰ったりもした。

3人でいるといつになくSがはしゃいでいて、AもSといる時は普段と全然雰囲気が違っていた。


頬を上気させて一生懸命話すSの横顔をかわいいと思った。言ったら怒るから、教えないけれど。

いつもより柔らかい雰囲気のAがSを見る目に温度が宿っている気がした。気のせいかもしれないけれど。


だけど私は知っている。

気のせいではないことを。


ある秋の日、線路沿いの道をAが道路側で間にSを挟み線路側が私のように3人で並んで歩いていた。

Sが何やら饒舌に話していて、私がたまに相槌を打ち、Aは微笑みながら話に耳を傾けていたのを覚えている。

ちょうど電車が隣を横切って会話が途切れた時、ふと目をやるとSがAと指を絡めていた。

Aは少し驚いて目を見開いて、それから恥ずかしそうに伏し目がちになって目を逸らした。

それまで思い詰めた顔をしていたSはAに拒まれなくてホッとしているように見えた。


電車が通過しても、駅につくまでAはSの手を振りほどかなかった。

どちらからともなく手を放したけれど、その後は緊張からか2人の態度があまりに不自然なので笑ってしまった。

Sは私が何故笑ったのかわからず困惑していたが、Aの方は事態を悟ったらしく気まずい表情を浮かべていた。


動機がなんにせよ、AがSに良い影響をもたらしているのは確かだ。

彼女はAと関わるようになってから忘れ物も減ったし試験の点数も確実に上がっている。

友人として喜ばしいことだと思う。


同時に一抹の不安を感じていた。


SとAの関係は一種の依存に近い。

今は互いに新鮮だから、水の中で酸素を必要とするように互いを求めている。

二人の絆はあまりにも不安定で危うい。

関係が壊れた時、2人は自分を保てるだろうか。

Sには私がいる。だがAは、Sを失って今まで通りに戻れるだろうか。

『幸福の王子』の燕ように、海を渡ることも冬を越すこともできなくなってはしまわないか。

一度知ってしまった温もりは離れがたいものだ。

幸せな時がずっと続けばいいけれど、いつかは終わりがやって来る。


もうすぐ冬がくる。

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