第27話 fav sideA

(一旦A視点に戻ります)


入れ替わるように私のポストに収まったSの新しいお気に入りの名は、Yという。


私から見たYの印象は、おっとりした気立ての良いお嬢様だ。

周囲の人間から余すことなく愛情を注がれ、大切に育てられた人。

特に深い関わりのない私でさえ感じ取れる程に、彼女のもつ柔らかな雰囲気が何よりも雄弁に物語っている。


話すペースも動作もゆったりとしていて、人の醜い悪意に鈍感で、弾けるようによく笑う彼女。

純粋無垢とはこういう人間を表すのだろう。

私のような計算し尽くした偽物とは違う、本物。


安いダイヤこそ派手に輝く。

真の美しさは内面から醸し出されるものだ。

万人には理解されずとも、決して廃れない。

わかり易い美しさは脆く色褪せる。


もちろんYだって完璧ではない。

僻みではなく、欠点ならいくつも挙げられる。

ルーズな所、無神経な所、だらしない所、自分がない所…

でもどれも、同時に彼女の美徳でもある。

大らかで寛容、気さくで柔軟。

飾らずありのままで堂々と生きる彼女は美しい。

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