第25話 偶像②

高1に進級してAと同じクラスになった。

同じ学年とはいえ、クラスが違えば顔を合わせることはほとんどない。

1年ぶりの邂逅。彼女は相変わらず他を寄せ付けない雰囲気を纏っている。


彼女の澄ました顔を見ていると、胸の奥が不穏に騒ぐ。  

この感情はなんだろう。 


最初はコンプレックスや苦手意識によるものかとも考えた。

彼女と私はあまりに違いすぎる。

常に完璧で周りを圧倒する彼女に正直、気圧される自分もいる。

でもこれは劣等感ではない。


端正な顔を歪めさせたい。

感情を剥き出しにさせたい。

鉄仮面の下に隠している表情や心を引き摺り出したい。

怒り、悲しみ、戸惑う彼女の色を見たい。


率直で乱暴な衝動。 

これは発作的な興味?

それとも知的関心だろうか。

蟻の穴に水を流し込んで喜ぶ子供と同じ、

純粋で残酷で、天使のようなイノセンス。


得体のしれない感情の正体を確かめなくてはならない。

だから私は"実験"を始めた。

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