第24話 偶像①

(※読者の皆様へ:主人公である"私"のイニシャルはAです)


Aを知ったのは中3の2学期の始業式だった。

夏休みの自由研究や読書感想文の表彰で壇上に上がる彼女を見た。

そういえば以前も校内の何かのコンテストで受賞者に名を連ねていた気がする。大体毎回同じ顔ぶれだし特に興味もないからはっきりとは覚えてないが。

私に言わせれば、夏休みの宿題は最初の2週間で済ませるものであり出来にこだわる必要はない。時間をかけずに成果を出せる人もいるが、そうでないなら貴重な長期休みを犠牲にするのは馬鹿らしい。そんなものに躍起になるのは相当な暇人か変わり者かだ。


当然のように慣れた様子で賞状を受け取り涼しい顔で列に戻るAを見ながら、彼女の名前を頭の中で反芻した。

肩の線で切り揃えられた髪に細縁の眼鏡、校則通り膝下まで裾を下ろしたスカート。いかにも"模範生"といった出で立ちだ。

この子だったのか。ようやく顔と名前が一致した。


自分で言うのも変だが、人を見る目には自信がある。

第一印象では大人しそうな子だと思った。

でも、それだけじゃない。

皆も、本人すらも意識してないだろうが彼女の仕草や表情には自信が漲っている。

存在するだけで周りの空気がピンと引き締まる。纏う雰囲気は重厚で高貴、十代半ばの少女のそれとは思えない。

前評判を抜きにしても彼女から感じる確固たる意志、圧倒的な自信とそれを裏付けする努力が彼女の優秀さを証明していた。


傲慢ではなく、彼女は自分が特別であることを理解している。そして決して現状に甘んじない。

同じ年に生まれて同じ学校に通っているのに、

日々何かと闘っているみたいだ。

その理由も望む景色もまだ理解できないけれど、素直に彼女を応援したいと思った。


_____頑張れ、**さん。


心の中で呟いて、静かに教室のドアを閉める。


2人の運命が再び交差するのはまだ少し先の事。

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