第23話 真影②

1人の時間はいつも机に向かうか本を読むかしている私を級友たちは遠巻きにして遠慮がちに様子を伺っていた。妨げられるのは彼女だけだった。


文系のくせに活字が苦手で、漫画も読めない人だった。

流石に漫画くらい読めるでしょうと呆れ顔で言うと、コマ割りが複雑でどこから読めばいいかわからないと真顔で返されて思わず吹き出した。

彼女はイメージと違って古風な面があるのだと知った。


読むつもりはさらさらないくせに、いつも読書中の私の机に腰掛けたり正面にしゃがみこんで目を合わせてきたりして、何を読んでいるのか知りたがった。

教えても読まないんでしょう、とすまし顔で言うとやってみないとわからないでしょうと返してきた。

普段と違う声音に思わず顔を上げると、少し目を見開き口を尖らせて恨みがましい視線を送っている彼女がいた。


自分で理解している弱みを他人に指摘されると

むきになる所がかわいいと思った。

彼女は決めつけられることを嫌った。

無理だと言われると余計に挑戦せずにはいられない性質だった。

一心に光を受け育つ向日葵のような貪欲さが眩しかった。

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