第20話 告白

当時の私は、世界は自分が思うよりずっと広く、学校はその中のちっぽけな水槽の1つでしかないことを知らなかった。

彼女の色に染められたかった。

認められたかった。求められたかった。身も心も独占したかった。愛した分愛されたかった。

否、やはり私の中に燻る激情にそんな綺麗な言葉は似つかわしくない。 


率直に言おう。


彼女をどうしようもなく愛していた。

誰からも愛され、才能や運に恵まれ、私がどんなに望んでも手に入らないものを全て持っているくせに、貪欲に高みを目指す彼女が恐ろしかった。

憧憬、羨望、嫉妬、劣等感。

彼女に惹かれる程に自分が弱くなる気がした。

自分が自分でなくなるようで、これ以上好きになるのが怖かった。

彼女が私のもとからいつか離れていくのではないかと思うと気が狂いそうだった。

繋ぎ留めるために特別な絆が欲しかった。

でも私が焦るほど、必死になるほどに彼女は私に幻滅していく気がした。

彼女の中では私は初めて出会った頃が絶頂期で、あとは坂道を転げ落ちるように下る一方だ。

彼女が私の興味を引こうと必死だった時は気にもならなかった。

それなのに、彼女が私に愛想を尽かす頃になってこんなにも欲しくなるとは思わなかった。

出会わなければ、孤独でも強くいられたのに。

だから私は逃げ出した。

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