第21話 rendez-vous
初めて世界に彼女を捉えた時、恐れるに足らないと思った。侮っていた。
いつからか私を見る彼女の眼は不思議な光を宿して、捕食者に狙われる草食動物になったような気がして居心地が悪かった。
どんなに避けても彼女は諦めなかった。
露骨に不機嫌な態度をとると、余計屈伏させたい衝動に駆り立てられるのか嬉しそうにしていた。
とうとう私が根負けした時は満足気だった。
私から新しい表情を引き出すと目を細めて幸せそうに笑っていた。
大切にしてくれたし、温かい気持ちをくれた。
"いい子"を演じないのは初めてだった。
わざと遠くから他の人に聞こえるように何度も私の名前を呼ぶ声はくすぐったくて心地よかった。
私の戸惑いを隠せない様子に喜んで一層強く腕を引かれるのは照れ臭くて嬉しかった。
全部初めてだった。
まっさらなキャンバスに一つ一つ色を重ねるように、知らなかった自分を見つけた。
彼女を通して見る世界は美しくて案外悪くなかった。
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